マニック・ディフェンスの理由

12/Ⅵ.(水)2013 少し雨、蒸し暑い
懸案の「タッチの南ちゃん」の記事を是が非でも5月中に書き上げたのも、その後のマニック・ディフェンスも、
その理由は、心理の徳田さんが5月いっぱいで6月1日から、お休みに入ってしまうからでした。
徳田さんは、カワクリ・オープニングからのスタッフで約6年半の間、僕の右腕のように働いて、
支えてくれていました。
週に3回は一緒にお昼を食べ、週に4日はケースについて語り合った仲です。
ある意味、家族以上に近かった存在です。
そんな彼女がいなくなるのは、僕にとっては痛手で、そりゃ、オイル時計のまとめ買いくらいしますぜ、旦那。
さて、徳田さんの送別会は、5月25日に自由が丘の韓国料理屋さんで行いました。
徳田さんの代りに、新しく心理が4人、入りました。
その新・心理スタッフからは、サプライズで綺麗な、真っ白い花束が贈られました。↓。


徳田さん以外で、オープニングからいるのは、僕とナースの塚田さんだけです。
その塚田さんが気を利かせて、こっそり花束を用意しておいてくれ、「僕から」ということで、これもサプライズプレゼント。
これが、それ。↓。心理の花束が、白だから、まるで、紅白歌合戦のようです。
まだ5月なのに、蛍の光な気分でした。


徳田さんの良さの1番目は、精神分析をベースとした臨床的な基礎技術がしっかりとしていたことです。
勉強熱心で休みの日には、研究会に参加したり、積極的にスーパービジョンを受けていました。
給料と休日の大部分をそれらに費やすストイックな姿勢は、おそらく臨床心理士としての誇りがそうさせたのでしょうね。
徳田さんの良さの2番目は、共感する能力が高いところです。
精神科の教科書には、精神療法の基本は、「傾聴・共感・支持」と書かれています。
しかし、これは疑問です。「共感」って技法や技術なのでしょうか?
どんなにすぐれた専門家でも、他人の気持ちなんて、そうやすやすと判らないでしょう。
もし、判るという人がいるなら、それは判った気になってるだけではないのかしら。
色々な考え方はあるでしょう。
でも、僕は「共感」とは、話を聞いていて、生じるものだと思うのです。
技術というより現象に近いのではないでしょうか。
もし、技術の部分があるとするなら、それは共感が生じるように工夫して話を聞くことではないかしら。
相手の気持ちに調律を合わせるような技術。
これは丁度、赤ちゃんが泣いてる時、「おっぱいが欲しい」のか「オムツを替えて欲しい」のか
「抱っこして欲しい」のかをお母さんが読み取る能力に似てるのではないかしら。
徳田さんの良さの3番目は、臨床に望む、責任感と覚悟でした。
徳田さんは、まるでサリンジャーの小説のライ麦畑の捕まえ役のようでした。
危ない時の患者さんをしっかりと捕まえて離しませんでした。
徳田さんがよその治療機関に送る診療情報提供書に目を通したことがあります。
丁寧な言葉選びでエレガントな文章でしたが、中味は、「果たし状」みたいでした。
要約すると、うちはこれだけのことをやったんだから、この人を診るんなら、そこんとこヨロシク、
と相手の覚悟を問うようでした。
その見立ての正確さと治療の流れの理解に、普通の人はちょっとビビるだろうな、と僕は読んでそう思いました。
でも、それはこちらが威張ってるのではなくて、すべては患者さんのためになるから、良いことなのだと思いました。
以上は、臨床心理士としての徳田さんの資質の長所の列挙でした。
以下は、徳田さんの人柄の良さについて書きます。
我々の仕事は人の心を対象にするものなので、自身のパーソナリティーも治療の道具の一部になります。
勿論、人と人だから、相性もありますけどね。万人に受ける治療者などいないですからね。
それを踏まえて、徳田さんの人柄の治療的なところは、僕が思うに、多分、これまでの人生で優等生で来た人ではなさげなところです。
それは、人間は放っておくと駄目になる生き物で、弱々しく情けなくダラシナイことを実感として判っているふしがあるのです。
「優秀な人」は、ここが欠落しているので、あまり良い治療者になら(れ)ないことが多い気がします。
徳田さんの人柄で治療的だなと思う2番目は、好奇心の強いところです。
僕らが話をしていて、「それ、何だっけ?」となると必ず調べて教えてくれます。それが、どんなにくだらないことでも。
僕は、今思うと、徳田さんのそういうところに甘えていたのかもしれません。
自分の面白いと思うマンガやDVDを貸して、話題を共有させていたのですから。
「涼宮ハルヒ」のラノベ全巻とか、「けいおん」のマンガ全巻とか、「かんなぎ」のマンガ全巻とか、
「おやすみプンプン」とか。
「おやすみプンプン」に至っては、徳田さん、途中から、自分で買っていました。
「ひぐらしのなく頃に」のDVDや「化物語」のブルーレイも観てくれました。
僕が中高生の頃は、友人達とレコードの貸しっこをしたり、お互いの好きな芸能人のイベントに付き合いあったりしたものです。
僕は友人を山口百恵の映画に付き合わせ、石野真子や近田春夫&ハルヲフォンのコンサートに連れて行きました。
代りに、エアロスミスや榊原郁恵のコンサートからジャパン・ボウルというアメリカン・フットボールの試合にも付き合いました。
それが、段々と大人になると、そういう関係が希薄になって行き、寂しくなって行きます。
僕は、ゴルフとかしないから、気がつけば、のけものみたいになってたりします。
それを徳田さんに、マンガやアニメを押し貸しして、埋め合わせていたみたいです。
そう言えば、立川談志の落語にも、連れって行ったっけ。
でも、徳田さんにとって、それは良かったと思います。
生きた立川談志を見た事があるって、いつかどこかで誰かに自慢できる時が、きっと、あるから。
そうそう、徳田さんの人柄の治療的な効用について話していたんでしたね。
そうなると、何はともあれ、後にも先にも、それは、明るさ、ですね。
徳田さんがいると、それだけでその場が明るく感じました。
徳田さんは第1火曜日だけ、変則的にお休みでした。
徳田さんのいない火曜日は、午前中でも放課後のようでした。
よく徳田さんは、相談室に、お花を飾っていましたが、僕は、何故か、ひまわりの黄色いお花の印象しか有りません。
徳田さんは、お別れにシシリア・レモンとフレッシュ・バジルのルーム・ミストをくれました。
意味は、「情熱と誠実」だそうです。
多分、徳田さんから見た僕の診療のポリシーが、「情熱と誠実」だと思ってくれたのでしょう。
そんな話はしたことないけれど。
徳田さんは、自分がやめた後の、僕への仕事の負担増を心配していました。
だから、もし、僕が疲れ果ててしまって、萎えそうになった時は、この香りで乗り切って、
というメッセージなのでしょう。↓。


今日はまだ6月12日だけど、スプレー、早くも使いまくりだよ。
診察室、レモン風味の香りで充満。
徳田さんは、クリニックのオープンの時は、まだ、臨床心理士の資格を取ったばかりの駆け出しの新人でした。
カワクリの歴史は、徳田さんの臨床心理士としての成長とパラレルでした。
そんな徳田さんに贈りたいのは、♪あなたがもしもどこかの遠くへ行きうせても、今までしてくれたことを忘れずにいたいよ、
もどかしさも貴方にゃ程よくいいね♪、と歌った黒人霊歌か何かの一節です。
徳田さんは、毎年、6月が嫌いでしたね。今年の6月は、あまり6月らしくないけれど、それでも、やっぱり嫌いですか?、6月。
僕はマニック・ディフェンスを効かせて張り切り、そして新たな心理の皆もオーバーワーク気味に、頑張ってくれています。
なんとかなります。
まぁ、最後に、とってつけた様になるけれど、徳田さん、約6年半、ありがとう、お疲れサマー。サンキュー、達者でな。
BGM. LAZY 「Hello Hello Hello」


4 Replies to “マニック・ディフェンスの理由”

  1. お目に掛かったことはありませんでしたが、オープニングから右腕のような存在だったのでしたら、先生も寂しくなりますね。
    家族以上のお付き合いだったなら、尚更です。
    また、時々、遊びに来てもらったらいいんじゃないかな。
    先生も、しばらくはつらいと思いますが、なんとか乗り切ってください。
    お花、本当にきれいです。こういう時のお花は、特に美しく心に沁みるものですね。
    お別れは、つらく寂しいものですね。

    1. 花の香りさん
      僕は花束というと、悪役外人レスラーがタイガーマスクに投げつけるシーンばかりを連想してしまうので、幼少時期に何を見て育つかは大事ですね。
      ところで、花の香りさん、コメントの連続記録、更新ですね!

  2. 文章の中で徳田さんは6月からお休みとありますが、辞められるんですか?
    私も多分直接話した事はないけど見かけた事は何度かありました。
    最近随分スタッフの方の入れ替わりが多かったですね、先生大丈夫ですか?
    大丈夫じゃないかもしれませんが、皆(患者さん)の為に乗り切ってくださいね。
    なので息抜きの時間はたっぷり遊んで下さい。
    ストレスはあまり溜め込むといけませんから。
    0か100かではなく中間の考え・行動もありですよ。

    1. Sinさん
      徳田さんは、お休み、ですね。
      確かにスタッフの入れ替わりは大変でしたが、今は、良いスタッフで固められたので良かったです。

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