予告ブログ⑥~「爬虫類を飼うこと」

5/ⅩⅠ.(木)2015 亡き母の誕生日
この予告ブログをした頃だから、もう1年以上前のことだ。
爬虫類に詳しい、Kさん、から池袋のサンシャイン60で「大爬虫類展」をやると聞いた。
爬虫類の展示即売もするらしい。
それがうっかり家族にバレてしまった。
家族は口々に、
「行っても良いけれど、何も買ってきちゃダメよ」
「誰も世話する人が家にいないんだからね」
「飼っても、可哀想なのは、その爬虫類なんだからね」
「本当に好きならやめてあげて」
「むしろ、爬虫類展には、行かない方が良いんじゃないか」
「見たら絶対、欲しくなるものね」
「欲しくなったら、絶対、買ってきちゃうものね」
「やっぱり、爬虫類展には行かない方が良い!」
と寄ってたかって、多勢に無勢だ。
民主主義に乗っ取って、仕方なく、僕は爬虫類展に行くのをやめた。
代わりに、オオトカゲのフィギュアを買って、診察室に置いた。↓。

受付スタッフは朝に診察室のお掃除をしてくれるのだが、知っていても毎朝ドキリとする、と不評であった。
今回は特別に診察机の上に置いてお披露目。↓。

患者さんからも、「あれ、恐い。隠して」と言われ、それであちこちに移動しているうちに、首のあたりに亀裂が入り、
首の中から下のスポンジ生地がモコモコと出て来て、まるで、憐れなジラースの最後、みたいになってしまった。
ジラースとは、ウルトラマンに出てくる怪獣で、ビジュアルは同じ円谷プロのゴジラに襟巻をした怪獣だ。↓。

おそらく、ジラースはウルトラ怪獣史上、最弱の部類だ。
怪獣博士が、ジラースを作り湖の中で静かに暮らしていたのに、旅行者に発見され、ウルトラマンに怪獣という理由だけで、
何も悪いことをしていないのに退治された。
その時のウルトラマンの極悪非道ぶりは、筆舌に耐えがたく、ジラースをもてあそぶように、からかいながら、たとえば、
ジラースの襟巻を引きちぎり、その襟巻をマントのようにヒラヒラさせて、ジラースは頭から突進することしか出来ない。
ウルトラマンはそれを闘牛士気取りで、サッと身をかわして、おどけて、イジめるのである。
そしてお決まりのスペシゥム光線でやっつけて、ラストは口から血を吹いたジラースの断末魔の表情がクローズアップされ、
ブクブクと湖に沈んで行き、おしまい。
以前、ナースの塚田さんに見せたら、「これはひどい!ジラースが可哀想すぎる!」と怒っていた。
彼女は弱気を助け強気をくじく、正義感が強いからね。
憐れなジラースをマリア様の慈愛の光とともに。↓。

下が、ウルトラマンにやられた、ジラース、のような痛々しさのオオトカゲ。↓。

やはりフィギュアと言えど飼育は難しいのか。
僕は東京都が指定している半透明のビニール袋にお花を添えて、祈りを捧げて、オオトカゲのフィギュアを弔った。↓。

その昔、僕は子供の頃、カメレオン、や、グリーン・イグアナ、なども飼ったことがある。
しかし、当時はヒーターなどの装置もなく、エサもハエを叩いて、半殺しにして与えたりしていた。
これはなかなか難しく、技が必要で、爬虫類たちは動かないと食べないから、気絶だけさせて、全殺し、ではダメで。
その頃の僕は野生児のようで、学校帰りに、トカゲやカエルやイモリやヤマカガシを捕まえてきては、家の庭に放した。
僕の野望はうちの庭で爬虫類と両生類を繁殖させ彼らの楽園を作ることだった。
僕の家の街灯には夜になるとヤモリが群がるのを、理科の教師に自慢したら、「欲しい」と夜に家にやって来た。
<ご自由にどうぞ>、と僕が言うと、教師は「どうやって捕まえるの?」と尋ねた。
僕は、街灯を揺すって、ヤモリの目を回し、ふるい落とし、数匹のヤモリを教師に渡した。
すると、翌日から、学校の狭い廊下で理科教師とかち合うと、向こうが道を空け、「どうぞ」、と言った。
僕は、こんなことで人生の形勢とかが変わるものなんだと実感したものだった。
僕の家族は僕以外は皆、爬虫類(や両生類)が嫌いで、父は池で鯉を飼っていたが、「鯉が食べられてしまう」と怒った。
僕は、<アカハライモリがキンカブトを食べる訳ないじゃないか。バッカじゃなかろうか>とトニー谷みたいに言い放った。
滅多に僕を怒らない母も、目の前で大量のトカゲやカエルを庭に放つ僕の姿をみて、怒っていたな。
僕は、そんな両親をみて、<怒ったって何も変わらないのにな>、と思ったものでした。
その年の川原家の流行語大賞は、「母さん、怒ったって何も変わらないよ」でした。(うそです)。
家族は大変恐怖しましたが、しかし、母の声にびっくりしたのか、ヘビやトカゲはうちの庭からいなくなってしまって、
僕はとてもガッカリした。
あるいは、野鳥に食べられてしまったのかもしれない。女と鳥類は凶暴だな。
おじさんとおばさんの役割とは何か。
唐突だがそんなことを考えてみた。
それは、僕はこう思う。
親が禁止していて、子供が自分の経済力では買えない物をプレゼントする係りだ。
僕のおじさんの住んでいた溝の口の辺りに大きなペットショップがあり、そこにワニが売っていた。
僕は何かの記念日か何でもない日のお祝いに、おじさんにせがんでワニをゲットした。
ワニを池に放とうかとも思ったが、イモリで怒る父だ。ワニを泳がせたら卒倒してしまうかもしれない。
仕方ないから市営プールにワニを連れて行き、一緒に泳いだ。
すると、すぐに係りの者が飛んできて、厳重注意を受け、僕は出禁になった。
なので、僕はそれ以来、夏休みにプールに行くという選択肢が消えた。
だから僕がいまだに泳げないのは、市営プールの警備員のせいだ。
な~んて、そんなことを言ってはいけませんね。
なんでも、他人のせいにするのは、僕の悪い癖で、それは政治や文明や教育や世代のせいだと思う。
両親には僕とワニを厳重に管理する責任があった。
父は庭の隅に、小さなプールを作り、そこで僕らは近所の子供達も呼んで一緒に遊んだ。
子供達はすぐにワニに懐いていた。
ワニの餌は生きたドジョウや、肉を紐で縛り、動かして獲物のようにして食べさせた。
飼育は大変だったが、それなりに面白かった。
しかし、当時は知識も機械も乏しかったから、越冬するのが困難だった。
寒い冬が来ると水温を保てず、ワニは死んでしまった。
ワニが死んだ日のこと。
僕はワニを供養のために、食べる、と言って母を困らせた。
母は、ワニの料理をしたことがない、などと言い訳をして、父は寄生虫がいるからと説得した。
しかし、そんな理性的な理由は僕の衝動にブレーキを掛けるのには不十分だった。
結局、母は鶏のササミか何かを買ってきて、それをワニの形に切り抜いて、フライにした。
その日の晩ご飯のおかずは、「ワニのフライ」だった。
当時は公害の問題で、魚の値段が釣り上がっているという時事ネタを「サザエさん」の4コママンガでやっていて、
サザエとフネが「子供達が魚が好きだから困るわね」と言い、苦肉の策、鶏のササミを魚の形にしてフライにする、
という同じシーンがあった。
その4コマのオチは、カツオがワカメに「大人も苦労してるんだね」とこそりと言い、「協力しよう」と。
カツオが「あっ、魚の骨が刺さった」と口に指を突っ込み骨を取るマネをして、ワカメも「私も」と同じポーズをとり、
サザエとフネが青ざめるというものだった。
僕はそのマンガを見た直後だったから、仕方ない、黙って、「ワニのフライ」を食べた。
淡白で味も素っ気もなかった。
<ワニの肉は言われた通り、本当だ、うまくないね。もう、これからはいいや>
母は安堵の表情を浮かべ、そうして、我が家の食卓に「ワニのフライ」が登場することは、2度となかった。
この「予告ブログ」が、亡き母の誕生日に書けて良かったと思う。
BGM. エルトン・ジョン「クロコダイル・ロック」


10 Replies to “予告ブログ⑥~「爬虫類を飼うこと」”

  1. 先生、おはようございます。
    「爬虫類を飼うこと」というタイトルから、ここまで凄い内容は予想出来ませんでした。
    私の知っている人で、爬虫類、両生類を何匹も飼っている能楽師(笛方)がいます。練馬区在住。ギリシャリクガメ、トカゲ、イグアナとか飼っているとのことですが、さすがにワニの話は聞いたことないです。
    そして、11月、ですね。
    私は、かつては、9月に弱かったけれど、今は現実のあれこれの方が上回って、9月も平気になりました。

    1. トモトモさん、こんばんは。
      そのご友人、うらやましいです。
      僕も一時期、本気で、カワクリの待合室でリクガメを放し飼いにしようかと思いついたものでした。
      そして、11月です。
      確かに現実のあれこれが上回って、11月のせいだけにも出来そうもないです。
      頑張ります!
      ではまた~

  2. 先生、おはようございます。
    私はその能楽師さん(笛奏者。ジャズ系の音楽活動もしています。)のファンで、一時ファンサイトを運営していましたが、他に気持ちが移って今はサイトは閉鎖しました。彼のお父さんが亡くなった次の日が(演歌歌手のバックで出演)紅白のリハで、当然のごとく舞台優先。数年後にお母さんが亡くなった数日後、渋谷のライヴハウスで淡々と「母に捧げます」と新しい自作曲を吹いてました。
    現実のあれこれ(内容はわかりませんし、私が知る必要もないと思われますが)、お体壊れない程度に頑張って下さいませ。

    1. トモトモさん、こんにちは。
      爬虫類好きのご友人、見事なプロ根性ですね。
      なぜか、堺正章のお父さんが舞台の上で死んだというエピソードを思い出しました。
      心配してくれてありがとうね。
      まさかの日中、コメント返信でした。
      ではまた~

  3. ストロング金剛デス。
    エルトンジョンというと嫌な思い出があります。13歳頃ラジオでオリビアニュートンジョンの「そよ風の誘惑」を聴きレコードを買いに行きました。ラジオで1回聴いただけなので歌手名がうる覚えで、なんとかジョンで探しました。そして見つけたのは、気持悪い小肥りのおかしなメガネかけた歌手でした。こんな気持悪いヤツが歌ってるのか〜とえらく失望しました。それがエルトンジョンでした。その後間違えに気付き、オリビアがえらく美人で何度もお世話になりました。いや〜お恥ずかしい話しです。それではオマタ〜

    1. ストロング金剛さん、こんばんは。
      オリビア・ニュートンジョンは美人でしたね。声も綺麗だったし。素敵でしたね。
      ただ、僕も似た様な思い出があります。
      どうしても、「オリビア」と言うと「オリバー君」を想起してしまって、台無しでした。
      オリバー・ニュートンジョンですよ、使い物にならないでしょ?
      や~青春ですね。では股~

  4. 家族の方は嫌いなんですね、爬虫類。
    かわいいのに。
    子供のころ飼ってたんですね、ワニ、すごいっす!
    それはある意味伝説っつす!
    ワニよ永遠なれ!

    1. sinさん、こんばんは。
      アニメの天才バカボンでも、バカボンがワニを飼う回がありましたね。
      確か、最後は、ワニが保健所に連れて行かれちゃうんですよ、悲しい…。
      ワニよ、永遠なれ!です。

  5. お母様はセンスがいいですね。
    10年以上前ですが、新橋でワニの天ぷらを食べました。
    鶏肉のようでした。
    酔っぱらっていたので、とり天を「ワニの天ぷら」として出されても
    気づかなかったでしょう。あれは本当にワニだったのか…。
    それにしても、
    >なんでも、他人のせいにするのは、僕の悪い癖で、
    と認めつつ、その舌の根が乾かぬうちに
    >それは政治や文明や教育や世代のせいだと思う。
    とはお見事です。

    1. か、さん、こんばんは。
      お褒めに与り光栄です。
      リハビリ中の身としては何よりの薬です。
      ところで、「ワニの天ぷら」を食べたことがあるのですか!?
      本物だったらスゴイですね。
      僕は浪人時代に、茅ヶ崎に出来た回転寿司屋のおやじから「平目のえんがわ」として出してる商品の正体を教えてもらいビックリしました。
      それは、「山芋」だそうで、「本物を出してたら、赤字だよ」って告白されて、大人になるのが嫌になりました。
      この返信コメントを書いてて、思ったのですが、「か、さん」って、「母さん」と発音が似てますね。
      母のセンスも誉めてくれてありがとう。いい親孝行になりました。
      ではまたみてね~

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