謹賀新年、これでいいのだ

先日、アニメ「おそ松さん」の「ニートの生きざま展」に行ってきました。

 

現在アニメは3期が絶賛放送中、1期2期と色々な形で注目を集めてきた作品ですが、ニート展ではアニメ放送当初から現在にいたるまでの原画や、舞台化した際の小道具などが展示されています(残念ながら、原画は撮影禁止です)。

この展示のタイトルが初めに発表された時、ファンの間では「ニートの生き様って何()」と、そのネーミングに各地で笑いが起こったものです。ニートに生き様も何もあるか、といったニュアンスでしたが、これがアニメおそ松さんと、それを取り巻くファンたちのいい空気感だと思っています。

 

アニメの1期のオープニングでは、「一生全力モラトリアム」というフレーズが出てきます。まさしくおそ松さんに出て来る六つ子は全員がニート、いかに働かず、楽をして実家に居続けるかに、常に全力です。あとは全てが適当。このままでいいのかな、なんて誰かが言ったって、働くわけでもなく、何をするわけでもなく、やばいよね~と言ってまたいつものニート生活に戻っていきます。まさにモラトリアム、自分と向き合うことなくだらだらと怠惰な日常が続きます。

 

しかし、ここに救いがあるのだろうなと思います。

生きるために働き、人間関係を構築し、悩み苦しみ、後悔し、逃げられない現実に向き合わざるを得ない日々に晒される。好きなことを仕事にし、趣味があり、不自由のない生活をしていても、葛藤や虚しさを覚える。彼らと同じニートであっても、その現状に焦ったり負い目を感じたり、時に自己嫌悪になる。人生を面白おかしく謳歌している人もどこかにいるかもしれないけれど、やはり、生きるとは過酷なことだと思います。

そういうあらゆる苦しみを、まるでどうとでもなると言わんばかりに、六つ子は悩まず苦しまず、適当に、やりたいようにやる。フィクションと言ってしまえばそれまでだけれど、それでも、画面越しにここまで適当に生きる人間を見ていると、必要以上に肩に力を入れている自分に気付きます。

 

ニートに生き様なんてあるのかと笑い合ったファンたちは、そんな六つ子の生き方を「現実はそんなもんじゃない」と笑いながら、自分たちのできないことをやってのける彼らに心を委ね、できない人生を託します。

 

ニート展では、まさにこれまでの彼らの生き様を堪能できる場でした。何もしない彼らの日々にも、ドラマがあり、歴史があり、感動があります。どんな生き方でも、必死にならなくても、世間からなんと言われようと適当でも、生きているだけで十分である。広い展示場の中で表情をコロコロと変え騒ぐ六つ子の姿は、そんな自由さを見事に見せつけてくれました。それは、自分のできない人生を振り返るようでもあり、彼らに預けた時間を手元に広げるような、感慨深い体験でした。

23時間かけて展示場を周り、好きな話や笑った話を散々思い返し、名残惜しくともやっぱり現実の日常に戻らざるを得ません。お前らはいいよなと言いながら、時に恨み、人生の一部を託しながら、これからもニートな六つ子を愛おしく思っていくのだと思います。

 

おそ松さんを観て、少しでも心が自由になれる人が増えてくれたら嬉しいなと思っています。自由になれずとも、これよりは頑張って生きてると、きっと思えると思います。

とおまつきみ 


6 Replies to “謹賀新年、これでいいのだ”

  1. 昔、カウンセラーの先生に「君はいつまでも、モラトリアム人間でいたいわけさ」と言われたことがあります。いい気持ちがしなかったですね。「俺の現状を知りもしないくせに」という感じで。
    当時の私は、アルバイトでない仕事をしていて、その仕事と大学通学の折り合いを、どうつければいいかで悩んでいましたから、その人の無神経なモノ言いに腹を立てたわけです。
    ああだこうだで、3番目の精神科医が最低だったこともあり、ダウン。やむおえず、大学は中退、仕事も退職。半分自由業みたいな仕事だったので、退職したiまま。
    そのあとで、パニック発作を起こして、家で療養して、考えた末に、「第二の人生を考えよう」と思い、今に至ります。
    その後は・・・・まあ、ニートみたいなもんかな。
    人それぞれの人生があって、やいのやいの言うのは、おかしいのに、無断で、心に踏み込んでくる人の多いこと、多いこと。
    こうなったら、老人ニートを目指します(笑)4分の1は冗談ですが。

    1. papaさん、こんばんは、川原です。

      この記事は覆面ライターの記事なので代わりに返信します。
      人に歴史ありですね。個人個人の人生は皆、大河ドラマみたいですね。麒麟は来ない!
      ではまた~

  2. 先生、こんばんは。先ほどは対応ありがとうございました。痛い検査を受けに行く直前に先生の声が聞けて良かったです!無事検査出来ました。
    紅白のベビメタは、出番以外にも、紅組が勝った瞬間のSU-METALの喜ぶ姿、フィナーレで松田聖子の左右にSU、MOA二人が映っている姿など、楽しいシーンがありましたね。

    3期『おそ松さん』のオープニング曲の♪がんばりーたーくないー♪だーらだーらーしてたいー♪が好きで、心の中でよく歌っています。(現在、在宅勤務)

    覆面ライターさん、お疲れ様です!
    何か文章に違和感があったのですが、新年だからかなぁ…と思っていました。
    最後の「とおまつきみ」の謎はまだわかりません。

    皆様、今年も宜しくお願いします。

    1. トモトモさん、こんにちは。

      紅白歌合戦とは、年末に男女に分かれて歌で勝負を決する、で、この本来の趣旨を最も理解してたのが、スーメタルだったという訳ですね。
      最近の女子は推しの六つ子を「養いたい」と言います。僕も60を前にして新たな目標が出来ました。女子に養われたい。年始にまさかの「ヒモ宣言」です。

      さて「覆面ライター・とおまつきみ」は謎に包まれていますね。発明王・トーマス・エジソンの孫娘か?近松門左衛門のライバルか?映画監督・新海誠が「きみの名は。」を作るという話はありません。ヒントはスタッフ誰かのアナグラムです。ではまた~

  3. 川原先生こんばんは。

    やっと、解けました。

    (ネタバレのため、以下、閲覧注意)

    心理の松井みことさんの記事でいかがでしょうか?
    昨晩は徳田さんと鵜飼さんで1時間ほど考えたけれどとけず、明日カワクリに行く前にはどうしても解きたくてがんばりました。お陰様で寝不足です。

    私は、松井さんの下のお名前が分からず、余ったアルファベットから、色々名前を組み合わせてみて、それっぽくなったのが“みこと” でした。

    でも、解いた後に検索してみたら、ブログでフルネーム紹介されてましたね。答え合わせになって面白かったです。今回のタイトル「これでいいのだ」も過去ブログの、文章と照らし合わせるとヒントになってたのですね。(後から気付きました笑)

    私には、この記事のカテゴリ分類が1番のヒントになりました〜。

    新年から楽しい仕掛けをありがとうございました。そして、この記事とても好きなんです。もし答えが合ってたら、松井さんにお伝え下さい。

    1. いずみさん、こんにちは。

      いずみさんは当初、他の人のために「非公開」にしたんですよね。
      でも、面白いコメントなので、こちらの編集で「閲覧注意」にしてアップしました。
      見事な推理でしたね。「なごみ探偵おそ松」より優秀です!
      おそ松さん第3期は年明けも安定してますね、よく人が死ぬ(笑)ではまたね~

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