スランプ

25/Ⅳ.(水)2012 晴れ、暖かい
そもそもの始まりは、「巷では院長はブログをやるものらしい」と聞いたからで、
<しまった、そうだったのか?>とお調子者みたいに始めたのがきっかけだった。
通常の院長ブログは、医療の啓蒙的な普及や、診療のインフォメーションだったり、
世間を賑している現象を精神医学的な角度から解説するものが好まれる姿のようだが、
僕は自分の好きなことや見て来たものをつらつらと書いている。
すなわち、自ずと僕自身のパーソナリティーをさらしてるようなものだ。
知り合いからは、「よく、あそこまで自己開示できるね」、と感心されたり、驚かれたり、
リスペクトされたり、畏れられたりする。
反応は様々だけれど、底辺に流れている共通した認識は、呆れている、という感情みたいだ。
それでも、物を書くというのは、僕にとっては自分の心身の健康に良いらしく、
毎回、自分の趣味に皆さんを付き合せているのも気がひけるので、穏やかな季節におだてられ、
ちょっとした出来心で「桜」の写真を撮影して、手抜きした記事を3回くらい連続で載せたりしました。
そうしたら、案外、その反響が良くて、コメントも普段の3倍くらいあって、ビックリしました。
冗談で徳田さんに、
<渾身の力を込めて書いた「格闘技」とか「落語」の記事より、「桜」の写真の方が上、って書く気なくすな>と、
言ったら、言葉というのは力があるんですね、言霊とは良く言ったもので、本当に何も書けなくなってしまったのです。
書きたいと思ってた記事は幾つもあるんだけれど、
たとえば「しょこたんバスツアー」とか「北山修と杉田二郎のコンサート」とか「志らくの落語独演会」とか、
「書きたい~want」内容がいつのまにか「書かねばならない~must」とか「書くべきこと~should」になっていて、
宿題みたいで、途端にペンが進まなくなってしまったのです。
ブログ開始以来、初のスランプです。
じゃ、なんで、今書いているのかというと、
「でしたら、そのまま書けないということを、ブログに書いたらいいんじゃないですか?」と徳田さんに言われたからで。
<なるほど、そうしよう>と思って。
言いなりみたいで、シャクだけど。
今はまた時期も悪くて、やらなきゃいけないことが沢山あって、
たとえば「新しいナゾナゾを作る」とか「ホームページ用のカウンセリングの新しいお知らせを作る」とか
「薬のアンケート調査」とか「クリニックでかける新たなBGMの選曲」とか。
昔、試験直前にマンガを読んでる奴がいて、<お前、そんなんでいいの?>と聞いたら、
そいつは「何もやることがないんだよ」と笑顔で答えるのだけれど、
よく聞いたら、そいつは何も勉強をしていなくて、「何から手をつけていいのかわからない」ことを、
「何もすることがない」こと、と錯覚していたのだった。
<とりあえずここだけは出るから丸暗記しときな>と教えてやったことがあったけれど、今の僕はそいつの心境に近いかも。
悪いことに、そういう時は色んな方面にも波及して、気候も悪いでしょ、疲れるし、スタッフの入れ替わりも激しくて、疲れるし、
テレビや新聞は嫌なニュースしか流さないから、疲れるし、
そういえば「疲れる」って言葉と「憑かれる」って言葉は語源が一緒だから、「疲れた~」って言わない方がいいよ、「憑かれるから」。
そういう時は、「くたびれた~」って言った方がいいよ、と大昔、オカルト研の女子に教わったことがある。
それにしても世間の大人はどうかしてるな。
特に40代、50代が酷いな。
まだ若い子の方がちゃんとしてるよ。
40代、50代ってオレの世代だ。
イヤだな、あんな奴らと一緒にくくられるの。
世の中の「普通」の基準とか、社会のシステムとかルールや決め事が馬鹿げてることが多すぎるよ。
若い子はいいな、「人間嫌い」とか「大人不信」とか言えるから。
僕がそんなことを言ったら、良くて「同属嫌悪」、そもそもそれらを作ったのも僕らの世代の責任だから、
結局は「自己否定」とか「自己嫌悪」にしか行き着かない。
あっ、でも、悪くても、しっぺ返しか。
オカルト研じゃないけれど、僕はスランプの時にいつもお守りのように「ある人形」と一緒に寝る。
それは、いつからか家にいて、誰が家に持ち帰ったのかは家族の誰も心当りがなかった。
きっと、プレゼントかどこかのお土産で買って来たのだろうが、その行為自体を当人が忘れてしまっていたにちがいない。
この人形は、僕が物心がついた頃には家にはいなくて、僕が中学生の時には記憶にあるから、
多分、小学校の頃に家に来たのだろう。
昔の家族も今の家族も、(構成員は別なのだけれど)、皆、こぞってこの人形を不気味がる。
だから必然的に人形は僕の部屋に飾られている。もう3~40年になるのか。↓。

残念ながら、この人形に何か特別な力がある訳ではなくて、ただ、僕の中学受験のための塾通いの頃から中学合格、その後の僕の生活をずっと見てきて知ってる存在なのだ。
僕がマンガを読んでいる時も、投函しそびれたラブレターを書いていた時も、ホルンの練習をしていた時も、
深夜ラジオを聴いていた時も、友達が遊びに来て馬鹿騒ぎしてる事も、
親に隠れてウイスキーをこっそり飲んだことも、憬れのアイドルのピンナップも、
好きなプロレスラーのポスターも、僕のお気に入りの歌手とレコードも、
整髪料で髪型に異常にこだわって鏡の前に立っていた姿も、それから、僕の喪服姿も何度か見て知っている。
僕の歴代の彼女も、友人も、一回きりの人も僕の部屋に遊びに来たことのある人は皆会っている。
今も、僕の部屋に来れば会えます。
昨日、僕は人形を枕元に座らせて、久し振りに一緒に寝た。最近、スランプだからね。
そうしたら、奥さんが株で大儲けしたので熟年離婚しよう、と言い出した夢を見た。
(ちなみに、奥さんは株はしない)。
目が醒めて僕は人形に、
<まさかとは思うけど、確かにお前は女だし、母親が死んだ今、お前が一番、オレとの付き合いが長い女だけど、
だからって、嫉妬して変な夢を見させたんじゃないよな?>と問い詰めた。
いい年して人形と話すってのもおかしな話だが、半覚醒の僕は結構マジで、
<頼むぜ、お前くらいは、そういうのなしにしてよ>と懇願するように、寝返りをうつ体勢で話しかけると、
ベッドの振動で人形はわずかにコクリとうなづいたように動いて見えた。

BGM. RCサクセション「君が僕を知ってる」


桜、おわる  ~相談室より~

先生の桜特集に便乗して、相談室から春の花便りです。
 
 
撮りためてたので、ちょっと古いものですが…
春をイメージして、チューリップ。♪あか、しろ、きいろ

アネモネ。色合いがかわいく気に入っています。

フリージア。良い香りも一緒にお届けしたいくらいです。
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桜、散る?

11/Ⅳ.(水)2012 雨、夕方から強い雨
天気予報は夜から強い雨になると言っていましたが、その通りになりましたね。この雨で桜も散ってしまうんでしょうね。
先日の桜の写真が予想外に反響があったので、今朝、東工大で「今年、最期の桜」を写したので、それを披露しますね。
ですから、今回のブログ記事には、何の主張もありませんので、どうかそこはひとつ。
まずは、桜にさわる気持ちで、通路の階段から撮りました。↓。

これは、綺麗なピンク色ですが、品種が違うのかしら?。それとも、桜じゃないのかしら?↓。

今朝は、まるで神様がお通りになる前触れみたいに風が強くって、構内は桜吹雪になっていました。↓。

逆側から撮影すると、こうです。↓。

外の雨足はいよいよ速くなってきました。これで今年の桜は散ってしまうのでしょう。来年はお花見をしようかな。
鳩除けに、テントとか張って、テントの中から見れば、「とは」が来ても「すらか」が来ようと「びんと」だって安全だ。
さすがに「うょちだ」は来ないだろうし。
下は、今週のお花、「バラ」。↓。配色は似てるけど、桜とは風情が全然、異なりますね。

明日から受付にまた新しいメンバーが入ります。新人紹介は、またの機会に、まとめてしますので、よろしくどうぞ。
僕は今日はキックボクシングの練習に行こうと思っていたのですが、雨が強いのでやめにします。明日が晴れなら行こうかな。


こども用心棒

6/Ⅳ.(金)2012 はれ
僕は、毎朝、東工大の構内を突っ切ってクリニックに来るのだけれど、今朝の桜の開花状況は以下のようでした。↓。

皆様方におかれましては、今週末など、お花見をされるのかしら?。我が家には、お花見の習慣はありません。
その最大の理由は、僕が鳥類が嫌いだからで、奴らは人間がビニールシートとかひいて何かを食べていると寄って来る習性があるでしょう?。僕はそれが恐ろしく、おちおち座って居られないので、お花見はしないのです。
昔、僕以上に鳥類を嫌う女の子がいて、その娘は特に『鳩』が嫌いで、自分の口から『はと』という単語が出るのさえもイヤで、『鳩』のことを『とは』って呼んでいました。「コワい!電線に『とは』がいる!」なんて突然に言われても、何を言っているんだか、最初は意味がわかりませんでした。
そう言えば、以前、徳田さんに聞いた話で、親戚の男の子(幼稚園くらい)はたとえば休日とかに家族で公園でお弁当を食べていたとして、そこに鳩が現れてお母さんのご飯を狙ったりすると、お母さんとお母さんの食料を守るために、寄って来る鳩を蹴散らして、追い払ってくれるのだそうだ。大人も、「ほら、〇×ちゃん、鳩が来たよ!お母さんを守ってあげて!」とか言うのだろう。彼の勇姿が目に浮かぶ。何とも頼もしく、微笑ましい光景ではないか。
僕も、そんな用心棒がいるのなら、お花見に行ってもいいかな。ビニールシートの周囲に『こども用心棒』を配置して、鳩が忍び寄って来ようとも、撃退してくれる。それなら僕はシートの真ん中にあぐらをかいて花見酒をしよう。つまみは卵焼きとタコ足みたいな赤いウインナーとかまぼこ、それに佃煮が少々あればいい。こんな処で、僕は呑むのだ。↓。

『こども用心棒』募集しようかな。何人くらい必要かな?。鳩はすばしっこいからな、7人は欲しいな。『7人のこども用心棒』。
なんだか黒澤明の映画のオマージュ(パロディ?)みたいだ。
BGM. 石川ひとみ「ハート通信」


さくら

4/Ⅳ.(水)2012 はれ
昨日は風が強かったですね。咲き始めた桜も、まだセーフのようです。下が、東工大の桜。↓。

今日は、東工大の入学式だったようで、朝、正門の前で写真を撮る人をたくさん見かけました。
こないだの土曜日は、カワクリの第1回目の歓迎会。これまでは飲み会をやっても、僕以外のメンバーはあまりお酒を呑まない人達なので、新しい人達には期待です。
僕は「魔法少女まどか☆マギカ」の‘キュゥべえ’のTシャツを着ていて、それを見た徳田さんは、「それはひょっとして、‘契約日’と(魔法少女との)‘契約’をひっかけたのですか?さすがですね」と言っていたが、気付く方もさすがだと思うよ。
下は、大岡山北口商店街の旗。今っぽく、桜色になっています。↓。

5月には、第2回目の歓迎会を予定しています。
BGM. 中川翔子「桜色」


同門会

先日、出身大学の精神科医局の集まり、「同門会」に出席した。
そこで聞いたのだが、今は僕らの頃とは医学部教育のシステムが随分と違っているようだ。
大学の5年生で臨床実習をする前に全80大学共通のテストにパスしないとベッド・サイドに出られないらしい。
国家試験を2回受けるようなものだ、恐ろしい。
覚えなきゃいけない知識を教科書の重さに換算すると、我々の頃を1㌔とすると、今は2㌧だって、恐ろしい。
医師国家試験はすべての科から出題され、それに合格すると医師免許を取得でき、何科にでもなれるのだが、
僕は、精神科医になろうと思って医学部に進んだので、精神科以外の勉強をするのが苦痛だった。
6年生の時、どこの医局に行くか?。皆、悩む。当時は第3希望までを大学に提出したのだが、
僕は第1希望しか書かなかった。2・3は空欄。
意外と、そういう人は珍しくて、皆、一応、第3希望まで書いていた。
それを基に、医局から志望動機などを聞かれる面談をする日があって、精神科には僕を含め3名が挨拶に行った。
その時の、面談の担当が、A助教授だった。A先生の手元には我々3名の資料があった。
A先生は開口一番、僕に向かって、「君、すごく成績悪いよ。挨拶なんかいいから、もう帰って勉強しなさい。
試験に受かったら、喜んで君を精神科に迎え入れるから、君だけ帰りなさい」と本当に、その場で、僕だけ帰された。
A助教授は、クリントンが大統領になった年に教授になって、「俺とクリントンは同い年だ」とわけのわからない自慢をしていた。
僕の所属する班と、A先生は別のグループだったが、僕は勉強のためにA先生の診察の陪席を頼んだら、快諾してくれた。
だから、僕の臨床スタイルはA先生の影響によるところも多い。
A先生は、昔、船医をしていたり、小説も書いたりするユニークな人物で、風来坊みたいだがシャイで面倒見が良かった。
背が高くて、見た目にもナイス・ガイだった。そんなA先生が亡くなって、今年が6回忌になるそうだ。
毎年、同時期に開業した繋がりの4人の「同門」の医者で新年会をするのが恒例にある。
A先生の命日が、1月なので、成り行きで、A先生の行きつけだった寿司屋で会をやることが、定例化している。
僕以外の3人はA先生とこの店に来たことがあり、温度差はあるにせよ、皆、しみじみとする。
僕だけ思い入れがない。
先日、一人でフラリとその寿司屋に寄ってみた。
店主は僕の顔を覚えてくれていて、
「毎度どうも、お客さんもA先生のお弟子さん?A先生とはいっぱい想い出がありましてね。
A先生はご自分の本にもこの店のことを書いてくれていてね。まぁ、あそこに書いてあるのは半分は冗談なんですけどね」
と言って、おじさんはお店の人に「おーい、本を見せてあげて」と声をかけ、A先生が匿名で執筆した小説を手渡してくれた。
僕がパラパラと本をめくっていると、おじさんは冷蔵庫からコントレックスの大きなボトルを出して僕の方に向けて、
「私が血圧が高いって言ったらA先生がこの水を勧めてくれたんですよ。とにかく水を飲むといいよと教えてくれてね」。
「お通夜にも告別式にも行きましたよ。急性心筋梗塞ですって?びっくりしましたよ。
だって2日前にお店に来てたんですから。いつものように呑んで、冗談言ってたから」。
A先生のお通夜の会場のBGMは、エルヴィス・プレスリーだったな。
「その日は日曜日で丁度相撲をやっていて、私が横綱が勝ちますよと言ったら、
A先生は<俺は逆だと思うね>と言って、
じゃ賭けようかと言うことになって、トロを2巻賭けたんですよ。そしたら私が負けちゃってね。
A先生に、今日はお腹いっぱいだろうから次おみえになった時、トロ2巻お出ししますよと約束したんですよ。
そしたらその2日後に亡くなっちゃって」。
「ウチではもっぱら趣味の話をしてましたよ。仕事の話をされてもわからないしね(笑)。
海が好きでしたね。あと1人でチビチビやるのが好きでしたよ。
ウチで呑むのが一番幸せだって言ってくれましたよ。
あの頃の先生は忙しかったでしょう?
学会とか北海道の方へ牛の脳を取りに行ったりしてね。
忙し過ぎたんでしょうね。
A先生、ご自分では水をお飲みにならなかったのかな?。
ほら、医者の不養生と言うでしょう?
私はトロ2巻借りっぱなしですよ。返しようがないんですよ」と店主は嘆いた。
さすがの僕でも、<じゃ、代りに食べてあげましょうか?>とは言えない雰囲気だった。
A先生だけでなく、僕が入局した時の医局長も、オーベンだったK先生も、1個上の先輩のT先生も、
皆、早く死んじゃったな。
寿司屋の店主が言う通り、本当に、医者の不養生だ。
そこで僕は2週かけて、人間ドッグを受けまして、結果は「何も問題なし」。
同門会の皆さん、長生きしましょうね。
BGM. エルヴィス・プレスリー「好きにならずにいられない」