台湾紀行~③フカヒレ

5/Ⅰ.(水)2011 夜
フカヒレを食べに行こう。このお店。

タクシーを拾って店の前でおろしてもらう寸法が、運転手がよく知らなくてとんでもない所でおりてしまった。途方に暮れていたら、犬を散歩させている女の人が親切に教えてくれてなんとか辿り着く。ありがとう。
これが、フカヒレ。↓。

他に、アワビとロブスターも食べる。上等な紹興酒ものみ、しあわせ。明日が、最終日。
BGM. 松本伊代「チャイニーズ・キッス」


台湾紀行~②観音さま

5/Ⅰ.(水)2011 第2日
龍山寺に行く。龍山寺はご本尊さまとして観音さまをお祭りしているが、他にも「航海の神様」「受験の神様」「三国志の武将」「財運招来」「悪霊退散」「勝負必勝」「商人の神様」などの諸神も併せてお祭りしている。
このお寺は、清時代の乾隆3年(1738年)に着工し、同年5年(1740年)落成したもので270余年の歴史がある。
現在の伽藍は、民国42年(1953年)に再建修復されたもので、反り返った屋根の上から今にも飛び立つのではないかと思わせる鮮やかな瑠璃色の瓦の龍や鳳凰は、以前にも増して豪華絢爛となり、中国の伽藍建築を代表するものだ。↓。






さすが龍山寺だけに龍がたくさんいる。お寺の中の池にも龍がいて、ドラゴン・ボールを握っていた。↓。


龍山寺のご本尊は観音さまであるが、観音さまといえば、僕の実家の割と近くに大船という駅があり、その駅の近くの山の上に立派な大きな真っ白な観音さまが建っている。
小学校の時、休日に横浜や東京のデパートへ向かう時や、中学の登校時に左手にみえる観音さまはやさしく微笑んで見守ってくれているようにみえたが、帰りの暗がりの山の中にライトアップされる観音さまは何故かそら恐ろしくみえ、小学校の時も中学の下校時も大船駅に近付くとなるべく右側をみないように顔をそむけるクセがついた。無意識の罪悪感が反映されていたのかもしれない。
そんな僕はドリフターズ世代であるが、少し背伸びをしてクレージーキャッツを面白がっていた。クレージーといえば植木等の無責任男を連想される方も多いだろうが、実はこの植木等は根は真面目で、自身は本格的な歌手になることを夢見ていたという。
だから、青島幸男作詞の「スーダラ節」の♪スイスイスーダラ・ラッタ、スダラタ・スイスイスーイ♪という歌が来た時には、真剣に「この歌を歌うべきか?」と悩んだらしい。悩んだあげく植木等は父親に相談したという。
植木等の父親は浄土真宗の和尚さんだったが、変わった人で、戦時中に若者に「戦争に行くな!」と説教するようなアブナイ人だったらしい。
そんな植木等の父親はスーダラ節の歌詞をみて、「この青島君というのは、素晴らしい!わかっちゃいるけどやめられない、というのは親鸞の教えだ!」といったような趣旨のことを言い、悩める我が子の背中を押した。吹っ切れた植木等はまるで振り子が逆に振り切れたように、日本一、C調で、無責任なスーダラ男へと変貌したのである。

あの底抜けの明るさで高度経済成長期の日本人の心を救済したのである。これこそ、まさに悟りの境地ではなかろうか。
そんな話を、植木等が自分の父親について書いた「夢をくいつづけた男」という本で知り、僕は親鸞に興味を持って調べてみた。
僧侶の女犯妻帯を初めて認め自分も公然と実行したのは親鸞だった。親鸞がこの女犯問題についての確信を掴んだのは、京都の六角堂に籠った時の夢によってだった。夢に観音さまが現われてこう言った。
「仏教者が前世の宿業によってたとえ女犯するようなことがあっても、私=観音が女となって犯されてやろう。そうすれば、肉体は女でも実体は私=観音とすりかわっているのだから、けがれにはならない。こうして、一生の間、身をきれいにしてやり、死の際は導いて極楽に再生させてやろう」。
なるほど、というわけで、親鸞は女犯の解禁実行を悟るのであった。
クレージーキャッツ経由で、このエピソードを知ったとき、親鸞の観音さまと大船の観音さまが頭の中で二重映しになって、何とも言葉で表現できない、合点がいったのである。20才前後のことだ。
僕は小さい頃から、何か人生の転機がある時に、必ず聖母マリア様の像か観音さまが崩れ落ちる夢をみる。だからと言って決して悪夢ではなく、僕はその状況を、「あぁ、崩れたな」と冷静にみていて、むしろしっかりしているのである。そんな夢を何度もみる。
第二次世界大戦終戦直前の民国34年(1945年)に米軍の空襲で龍山寺本殿が焼夷弾の直撃を受け、石柱までもが全壊するひどい惨状であったが、このような状況のなかで、本像の本尊、観音菩薩像だけは、無傷のまま端然と連座に端座され安泰だったという。
そのため当時、空襲があると付近の住民は観音さまの膝下は絶対安全だと信じ、多数の人々が避難してきたが、激しい空襲の中、不思議なことに避難者には全く死傷者がなかったという。
そのあらかたな霊験は今日でも人々の間で語り伝えられ、ご加護を讃えておるそうだ。


BGM. 近田春夫とハルヲフォン「COME ON,LET’S GO」


台湾紀行~①ヘソQ

4/Ⅰ.(火)2011 初日
休みを利用して台湾に来た。日本と台湾の時差は1時間、飛行機で3時間くらいで着いてしまう。
気候は日本より少し暖かいが、何故か、建物の中は寒い。韓国に行った時は、日本を夜に出て、夜中にホテルにチェックインするという強行軍だったから、それと較べ、今回は午前に出て昼過ぎに着いたから楽だ。下が、宿泊先のホテル。↓。

ホテルに荷物を置き、「川堂」という店に行く。ここでは、おヘソに3種類くらいのもぐさをつめて90分くらいお灸をする。精養に良いとの評判で、志村けんも来たことがあるようだ。お店の名前の「川堂」の「川」は四川を意味し、「堂」は四川に伝わる武術の女侠流派の名に由来するそうだ。

中国の医療では、「けいらく」という気の流れがあって、それが時刻とともに流れる場所が移るらしい。その一覧をメモにしてきた。↓。

術者の人に、「たとえば‘ひつじ’と‘小腸’は関係あるのか?」と尋ねてみた。すると、‘未’は時刻を表すものだから違う、という。
「それはそうだが、たとえば別の科学的な研究で、‘ひつじ’の‘小腸’は働きが優れている、などという因果関係が偶然に一致したりするものはないのか?」と聞いてみるも、中国では‘未’は動物の羊を表すものではない、という。
それは解る。それはそうだが、‘象徴’という考え方もあるではないか。(小腸のシャレではなく)。‘おばあちゃんの知恵袋’風に、たとえばある文化圏では‘小腸’の病気の時に‘ひつじ’肉を食べるとよいとされている、とか、ドラゴンを退治する時はとにかく沢山食べさせて胃に負担をかけろ、などという風習や言い伝えがあったら面白いと思うのだが、「中国ではちがう」とケンモホロロだ。
「伝統」や「文化」のもつ、「誇り」と「閉鎖性」を痛感する。まぁ、よく考えれば、こっちの言ってることがメチャクチャなので、向こうも困ったものだろう。「外交」はむつかしい。
さて、急に頭を使ったらお腹が減ったので、ショーロンポーを食べに行く。

ここは人気のお店で、4階だてで1番上にはVIPルームみたいのもあるらしい。ヘソ灸の人が言うには、待つときには2時間位待たされるらしい。我々は、スムーズに入れた。店員は、結構、日本語が通じて、日本語メニューもあった。
これが、ショーロンポー。とてもおいしかったです。↓。エビシューマイも、ジューシーでおいしい。

女給のスカートの裾が微妙に短いのが、気になり出すと気になるので、そこだけ注意が必要かも。
BGM. 相本久美子「チャイナタウンでよろめいて」


モチュー

1~3/Ⅰ.(土~月)2011 うさぎ年
今年は、喪中のため、お正月らしいことはせず、年末年始の特番をみてダラダラと過ごす。
正月のよいところは、おおっぴらに昼間から酒を呑めるところ。お正月と言えば、子供の頃は、よく百人一首をしたっけ。
2日、動画サイトで五味のUFCの試合を観る。結果は、一本負け。
五味は「今のUFCは特徴とかキャラクターだけでは勝てなくて、研究されて、マニュアルのようなものが出来上がってしまった。オレは、もう一回、そういうのを壊してやりたいな」と意気込んでいたのに…。
五味の戦う相手は、UFC自体だったり、教科書的なファイト・スタイルを是とする風潮だったりするのだ。浅草キッドの玉ちゃんが、五味をみてると矢吹丈(あしたのジョー)を思い出す、と言っていたが、同感だ。
2011年、五味隆典の戦いに注目したい。
BGM. チューリップ「夢中さ君に」


決。

31/ⅩⅡ.(金)2010 さいたまスーパー・アリーナ
今年2010年は、アントニオ猪木のデビュー50周年の年だった。
僕は小さい頃から猪木の大ファンであったが、最近は別の意味で猪木から目が離せない。
だから、猪木の主宰するIGFというプロレス団体のCS放送があると、なるべく観るようにしている。
たとえば、こんな感じだ。
猪木の50周年を祝う大会で、リング上にマグロが一本運ばれてきた。
これは、事前に猪木が「マグロが食いたい!」と言ったから、というサプライズ・プレゼントだそうだ。
プロレス大会で、である。
猪木は、日本刀でマグロをさばいた後、大きな半紙に毛筆で字を書いた。
その際も、猪木は「オヤジの遺言でね、『恥をかいても、字を書くな』って言われてね」とブツブツ言いながら、
「皆んで、手をソナごう」(原文まま)と書いた。
そして、猪木は「マグロだけに、みんなで手をつなごう」と音読した。
会場のアチコチから、「‘ツ’が‘ソ’になってるよ」「‘点’が1つ足りないよ」とポツリポツリと声が上がって、
やっと猪木は気が付いて、振り向いて「あっ、点が1つ足りないか」と言い、まだ筆を持ってるのだから書き足せばいいのに、
「まぁ、いいや」と筆を置いた。
これが、猪木から目を離せない理由である。
今年の日本は外交問題が色々と取りざたされたが、なぜか不思議と猪木は中国や北朝鮮からVIP待遇をうけている。
猪木の50周年のイベントにも、中国から少林寺拳法の達人3人がお祝いに駆けつけ、リング上で演舞を披露した。
猪木は、ニュートラル・コーナーにたたずんで、真剣な表情でそれを見入っていた。
少林寺の達人3人は、見事な型や奥義をタップリと惜しげもなくサービスし、終えると猪木に深く一礼をした。
それに対し、猪木はマイクを握り、「ありがとう」と言ったまではいいが、
すぐさま、「サァ、降りて下さい」とまるで「シッ」と大型犬を追い払うような仕草をして、言い放ったのである。
3人の達人は言われるままに花道を下がり、リング上に残った猪木はその余韻にふけるでもなく、
猪木は自分で作った「道」という詩をようようと朗読し、「1・2・3、ダーッ!」でしめた。
見ていて、外交問題になるんじゃないか、とヒヤヒヤした。
これが、猪木から目を離せない理由。
そんな猪木が、2010年大晦日、「Dynamite!!」のエグゼクティブ・プロデューサーに就任した。
大晦日の格闘技イベントは今年が10年目の恒例となったが、今や格闘技人気は下火、テレビ局としては視聴率稼ぎの為に、
猪木を祭り上げた格好だ。
下は、さいたまスーパー・アリーナの入り口に設置された「闘魂神社」。↓。

「猪木ショー・タイム」は、オープニングと休憩時間の2回行われた。
休憩時間に現れた猪木は、60人のサンバ隊を引き連れ、「紅白をぶっとばせ!」と白のスーツに赤いマフラーで入場し、‘
借金王・安田’や‘亀田3兄弟’とのショート・コント(?)を繰り広げて、結構、面白かった。
安田は「なんで俺を(Dynamite!!)に出してくれないんだ?!」と乱入し、
「ここをぶっ飛ばすぞ!!」とおもちゃのダイナマイトの束に百円ライターで着火しようとすると場内に爆音が響き渡り、
猪木はリング上に倒れ、当人の安田はリング外で失神。
猪木はすぐに立ち上がるも、安田は担架で運ばれて行くというオチ。
続いては、歌舞伎調のBGMが場内にかかると、般若の面をつけた3人の男が登場する。
猪木はエグゼクティブ・プロデューサー就任会見で「当日は海老蔵を呼ぶ」と公言し、
TBSも「できるだけ努力します!」と‘時の人’海老蔵招聘をアピールしていた。
東京スポーツは連日、「大晦日に、海老蔵?」と騒ぎ立てたが、まぁ、誰も本当に来るとは思っていない。
お約束通り、猪木は「お前ら、まさか、海老蔵か?」と笑い、面を取ったら亀田3兄弟が応援に駆けつけたという演出だった。
猪木は、世間がさんざん亀田家をバッシングした時もマスメディアを通じて亀田家を擁護する発言をし続けていたから、
亀田3兄弟にしてみれば、鶴の恩返しならぬ、亀の恩返しと言ったところだろう。
猪木は、「ありがとう。あとはそっちで、ゆっくりみて下さい」と早々と亀田3兄弟をリングから降ろし、
リングに一人残った猪木は
「親の遺言で、恥を書いても字を書くな、歌がどんなに上手くなっても紅白には出るな、と言われている」と
わけのわからないことを口走り、いつのまにやらリング上にはサックス奏者がマイク・スタンドの横に立っていて、
猪木は自作の詩「道」に変てこな節をつけて即興風に歌い出す。
テナー・サックスが必死で、それに伴奏をつけていく。
猪木は途中で、「間違えた。やり直し!」と一から歌い直した。
♪迷わず行けよ~行けばわかるさ~♪と、まるでディナーショーのように陶酔して熱唱し、最後は「1・2・3、ダーッ!」でしめた。
下が、休憩時間の猪木登場シーン。↓。後ろに写っているのが、60人のサンバ隊。

今年2010年の総合格闘技(以下、MMA)を振り返ってみると、悔しい思い出ばかりだ。
UFCやストライク・フォースといったアメリカの団体が‘メジャー’で、日本はその‘2軍’のような立場に追いやられた。
そんな無念を払拭すべく、4月、‘我らが’青木真也がアメリカへ上陸し全米侵略する算段が、
迎え撃つストライク・フォース王者ギルバート・メレンデスにまさかの敗北…。
翌月、5月、その汚名を返上すべく、桜井マッハ速人がストライク・フォース王者のニック・ディアスに
ケージ・リングで挑むも玉砕…。
そんな中、青木真也は日本人ライバルの川尻達也を神業とも言える足関節技で破り、
後は大晦日Dynamite!!でメレンデスに雪辱戦というシナリオだった。
ところが、当のメレンデスがストライク・フォースと契約でもめたため、来日が不能となった…。
青木真也と我々は、この日の為にモチベーションを上げ、体を作ってきた訳であるが、土壇場で肩透かし、
怒りのやり場もない…。
代替カードが検討されるが、そもそもDynamite!!はお祭り色が強い格闘技大会であるため、
組まれたカードがK-1 MAX日本王者・コスプレで有名の長島☆自演乙☆雄一郎となった。
主催者は「テレビ向け」というが、意味のないマッチ・メークに思えた。
ルールもK-1とMMAでは大きく異なり交じりようがないのだが、
強引に、K-1ルールとMMAルールを1ラウンドづつ行うという‘特別ルール’が敷かれることとなった。
一体、誰が喜ぶのだろう?と思った。
それでも、青木真也はモチベーションを高めるためか、場を盛り上げるためか、
あるいは怒りの矛先をこの試合に向けたのか、
カード発表の記者会見で「5体満足ではリングからは降ろさない」と挑発した。
これは、まんざらプロレス的な煽りではなく、前年、青木真也はSRCの王者・広田の腕を折った‘前科’がある。 
去年のDynamite!!と言えば魔裟斗の感動的な引退試合が印象的だが、
その直前の試合で青木は意地でギブ・アップしない相手の右腕を折ったあとに、舌を出し「ファッキン’」ポーズをとり、
これが地上波でお茶の間に流れたから、青木は各方面からさんざん叩かれた。
対戦相手の長島☆自演乙☆雄一郎は、「アニメ布教」と言いコスプレをまとって一見変な奴に見えるが、
ベースは日本拳法で、ファイトスタイルは紳士的でジャッジにも一切文句をつけないクリーンなファイターである。
長島は、青木の実力はリスペクトするが人間性はどうかと思う、と発言した。
正式なルールは、1R3分K-1ルール、2R5分MMAルールに決まった。
長島は謙虚に、自分はMMAでは‘白帯’なので寝技になったら負けてしまう、1Rで倒すしかない、と最初の3分に全てをかけると決意表明した。
一方の青木は、自分はムエタイ(タイに伝わる伝統的なキック・ボクシング)の練習もしているから打撃の対応にも自信がある、
それより僕が打ち合ってあいつが倒せなかったらK-1の立場ってどうなるんですかねぇ~?、
と相手をまったくリスペクトせず「あいつ」呼ばわりし、憎らしげに笑って挑発した。
選手入場。
長島☆自演乙は、「ミルキィホームズ」の曲をバックに多数のコスプレ娘と「ミルキィホームズ」の実際の声優さんに囲まれて踊りながら入場。
一方の青木はおなじみの「バカサバイバー」をBGMに、今成や北岡というMMAの実力者をしたがえヘルメットをかぶって入場。
Tシャツのデザインも片仮名で「ヘルメット」と書いてあり、背中には「安全第一」とバックプリントされている。
パンチや打ち合いには付き合わない、という意思表示か?。

上の写真、左の短髪が青木で右の赤毛が長島☆自演乙。
1RのK-1ルールにすべてをかける長島。
青木の作戦は3分間逃げて、2RのMMAルールに持ち込めば、後は赤子の手をひねるようなものだ。
いずれにしろ、1Rが決め手だ。
いよいよ、ゴング!。
さすが青木!。
普通に戦略的に逃げても、K-1ファンはズルいと言うだろうに、それを見越してか、青木流のファン・サービスか、
プロレス技のドロップ・キックや普段はみせない浴びせ蹴りなどを繰り出し「確信犯的」な「掛け逃げ」の連続で時間を稼ぎ、
あげくにはロープを掴んでのドロップ・キックと、「K-1のリング」自体を侮辱するような戦いぶり。
いつもは冷静なTV解説の魔裟斗も、「あれは反則だろ!」「あんなんなら始めからキック・ルールをのむな!」
とマイクロフォン越しに怒りをあらわにした。
長島は困惑した表情こそ浮かべながら、レフェリーに一切文句も言わず、自分の出来るベストの戦いをし続けた。
重いパンチが空を切る。
一発、当たればKOだろうが、当然ながら青木は打ち合わない。
「安全第一」だから。
解説の魔裟斗が「逃げ回る相手を倒すのは本当に難しいんです」と悔しげに語ると、まるでそれが聞こえたかのように青木は、
「オイッチ・二・サン・シ…」みたいなドリフのコントのような、ランニング・ポーズであからさまに逃げ回った。
解説の魔裟斗は「…」、もう1人の解説者・須藤元気は「青木君の空気の読めなさ、最高だなぁ~」とワルノリ気味にはしゃいだ。
魔裟斗「…」。
1Rが終わった。
場内が、「よーし!」と大きな歓声と異様なムードに包まれた。
そもそもDynamite!!は総合格闘技のイベントである。
K-1と総合格闘技のファン層は微妙に違う。
去年のDynamite!!でのK-1・魔裟斗の引退試合がメイン、というのがむしろ例外なのだ。
この時点で、どちらが勝つか?などと思って観てた人はまずいないだろう。
焦点は、青木がどんなエグい極め方をするのか?
2年続けて対戦相手の骨を折るのか?
長島☆自演乙はどこまで耐える覚悟があるのか?といったところだろう。
スカパーの解説席・「世界のTK」こと高坂剛が、「自分としては青木選手に打ち合ってもらいたいですね」と発言した裏には、
もはや2Rはワンサイド・ゲームだということを間接的(関節的?)に表現していた。
2Rのゴング!。
青木の独壇場…のはずが、青木が高速タックルに入った瞬間、ケンカ四つの体勢から長島がヒザを合わせた。
倒れる青木。
一瞬、呆然とする長島。
すぐ我に返り、倒れてる青木の側頭部にパンチを連打。
レフェリーが割って制止する。
青木、失神。
2R、4秒。勝者・長島!。
歓喜する長島☆自演乙陣営。
会場は、狂気のごとく大歓声、青木は人気もあるが不人気ランキングでもNO.1なのである。
解説席の魔裟斗も立ち上がって、「乙!乙!よくやった!」と絶叫し、
「1Rは、俺、ムカついてたからね」と普段のクールな魔裟斗とは思えない興奮ぶりに、
隣の谷川プロデューサーも「魔裟斗君のスタンディング・オベーション、初めてみました!」と、ご満悦。
もう1人の解説者・須藤元気も「天罰ですかね~?」と手の平を返したように、これまた大興奮。
青木真也は、勝っても負けても、みんなのカタルシスになる稀有な存在だ。
しかし、長島☆自演乙は、神がかっている。
あの青木にヒザを合わせてKOなんて、「計算」か「偶然」かなどはどちらでもよく、
この大舞台であの空気の中でよくあの仕事をやってのけた。
この試合の後には、石井慧・桜庭和志・マッハ・川尻が控え、さらには最激戦区と言われるフェザー級のタイトル・マッチも控えている。
それなのに、谷川プロデューサーが断言したように、この日のMVPをかっさらった。
同じナガシマでも、ミスター長嶋の天覧サヨナラ・ホームランのように、ここぞという場面に順番が回ってくるというのもヒーローになる必須条件だ。
そもそも、メレンデスがストライク・フォースときちんと契約していれば、この日のメインは青木vsメレンデスで決まりで、
たぶん長島☆自演乙の試合は組まれなかっただろう。
そんな彼は、コミケに行ってた可能性が高い。
なんというのだろう、舞台が整えられ、お膳立てしてもらった、という長島☆自演乙の強運を感じる。
青木のいやらしさに対して、正々堂々としていた試合態度もいい。入場のコスプレとのギャップもいい。
上に書いた様な解説陣のコメントも含め、後世まで語り継がれるだろう、すごい試合だった。
下が、勝利の雄叫びをあげる長島☆自演乙☆雄一郎。↓。

試合内容という点から言えば、この日のベスト・バウトは、所英男vs渡辺一久の一戦でないだろうか。
所は名勝負製造機で、そのグラウンド・テクニックは高く、大物外国人から大金星をあげる一方で、日本人にはめっぽう弱い。
外人には普段会わないが、日本人は街で会うかもしれないから怖くて力を発揮できない…というアングルで紹介されていた。
所はおよそ格闘家らしくなく、ひ弱でリング外ではキョドキョドしているところに来て、
対戦相手の渡辺一久というのが一見してチンピラ風な風貌でプロフィールも無法なボクサーあがり。
所がイジメられちゃう…という図式は、絵になる。
しかし実際は2人とも今年は結果を出せておらず、最激戦区であるフェザー級戦線の生き残りをかけた、
ある意味崖っぷち同士の真剣勝負でもあった。
この試合が名勝負になったのは、所の所たるゆえんでもあるが、渡辺一久の頑張りも大きい。
立ち技出身なのに、寝技のスペシャリスト・所によく対応し、意地を見せこらえ、
また試合中もふてぶてしいキャラクターを貫き通した。
ファンの目を1秒たりとも離させなかった、わかりやすく、飽きさせない名勝負だった。
個人的に一番感慨深かったのは、宮田和幸だ。
宮田はシドニー・オリンピック・レスリング日本代表という肩書きをひっさげてMMAデビューをはたしたが、
山本KIDとの対戦で試合開始わずか4秒で、KIDの飛びヒザ蹴りをくらってKO負け。
その際、顎を骨折し、何ヶ月も休養を余儀なくされた。
おまけにこのシーンは衝撃的だから、何度もVTRに使われるから、
「宮田=KIDの飛びヒザで負けた男」のイメージが刷り込まれてしまった。
元・オリンピック代表という輝かしい栄光が、逆に、落差となって本人には重くのしかかったのではあるまいか。
それでも宮田はコツコツと下部団体の試合からやり直した。
今年は大塚やリオン武といった強豪を下し、MMA6連勝という結果を残し、Dynamite!!出場の切符を手に入れた。
この試合に勝てば、タイトル・マッチの挑戦権も得るだろう重要な大一番だ。
その対戦相手は、宇野薫。
日本の軽量級MMAのパイオニアで、本場UFC参戦経験もある。
しかし、宇野も今年UFCで連敗し、日本に出戻りした格好だ。
そして、階級をフェザー級に落としての再出発。
お互いにとって試金石となる試合であり、お祭り気分のDynamite!!にあって他と明らかに温度差のあるマッチメークだった。
試合は巧者・宇野を終始宮田がコントロールして圧勝した。
中でもグラウンドで膠着状態になるとアマチュアレスリングで培った背筋力とブリッジで強引に引っこ抜くように相手を
後方に反り落とす、ジャーマン・スープレックス・ホールドの連発は圧巻だ。
いぶし銀的な実力はあるが比較的地味なファイト・スタイルの宮田にとっては、とても‘華’となる技だ。
MMAは「打・投・極」といって、打撃技と投げ技とグラウンドの攻防である。
しかし、現在のMMAはほとんど打撃とグラウンドのバランスで勝負がつく。
宮田には、以前、前田日明がセコンドについてくれてた時期があった。
前田日明は新日本プロレス時代、カール・ゴッチ直伝の七色のスープレックス・ホールドの使い手だった。
どうだろう、ここはひとつ、前田日明の教えを請いアマレス仕込みの投げ技をプロ使様の一撃必殺技に仕上げてもらっては~。
この日のオープニング、「猪木ショータイム」では、猪木が大きな筆を持って一つの字を書いた。その字は「決」。
MMAの試合を派手なスープレックスで決めるなんて、夢があるじゃないか。
BGM. 小室等、吉田拓郎、井上陽水、泉谷しげる「今日のわざ」


試験に出る(?)日沖発

30/ⅩⅡ.(木)2010 有明コロシアム
皆様、日沖発をご存知でしょうか?。ひおきはつ、と読みます。ひおき、が名字で、はつ、が名前。総合格闘家。総合格闘技(以下、MMA)に興味がない人も、名前だけでも知っておくとよいでしょう。
今日は、有明コロシアムで、日本一の格闘技イベント「戦極2010」が行われた。
何が「日本一」かというと、年末に朝の10時から始まって夜遅くまで、アマチュアからプロまで、空手・キック・女子格・MMAまで一気にやってしまおう~という意気込みが「日本一」である。一日がかりの興行なので、出入り自由のパスが配布された。これは、Eアイデアだ。下が、それ。↓。


有明コロシアムと最寄駅が同じの東京ビックサイトでは、同日、コミケが行われているためか、駅前でトレカを配っていた。
今年は、随分と女子の間で戦国武将が流行したようだが、僕がもらったのは「織田信長」。それが、これ。↓。♪人間わずか五十年、化転(けてん)のうちにくらぶれば、夢幻(ゆめまぼろし)の如くなり♪。


去年の12月30日は、「けいおん!」のライブを観に行った。
今年もあるかとケアして「戦極2010」のチケットはギリギリまでとらなかったが、「けいおん!」の方は来年2月になるそうだ。下が、去年のチケット。↓。


話を「戦極2010」に戻す。
この大会はスカパーで観るつもりだったが、皆が年末の予定を聞くから、「30日まで診察。30日はお茶の間観戦」と答えると、「早く終わらせて行くとよい」とすすめてくれたので、急遽、予定を変更、今日は昼休みをとらず9時ー17時までのノン・ストップ外来にして、観戦に行くことにした。
僕のお目当ては、メインの「マルロン・サンドロvs日沖発」のSRCフェザー級タイトルマッチ。明日の、もう1つの格闘技イベント『Dynamite!』がお祭り色が濃いのに対して、「戦極2010」は今年の総決算的なカードを持ってきた。
昨日時点で、スカパーの格闘技専門チャンネルにおける今年のベストバウトは、同じSRCの「三崎vsサンチアゴ」だった。確かにこれは、文句なし!。
しかし、なんと、この日のサンドロvs日沖は、それを上回った戦いとなったのだ!。
去年の大晦日の「DREAMとSRCの対抗戦」であの山本KIDを破った金原を、今年、秒殺したマルロン・サンドロにどう考えても死角は見当たらなかったが、一方の日沖発も天才である。胸躍らせる好カードだ。
予想に違わぬ名勝負、4Rまでお互いが持ち味を出し合い互角。
それでも、サンドロには一発で決める打撃があるから有利の中、最終5R、日沖発の関節技が炸裂する。
日沖の‘関節地獄’を最後までサンドロがあきらめずタップしないまま、時間切れ。判定の結果、3-0で日沖発の勝利。
判定決着と聞くとスッキリしない印象を持つかもしれないが、中味は最高であった。年間ベスト・バウトと言ってもいいのではないか?。地上波放送しないのが、もったいない内容だった。
しかし、SRCの5分5Rというルールは過酷だな。下は、勝者・日沖発を称えるブアカーオ。↓。


これが、日沖発。↓。名前を覚えておくと、いつかどこかで自慢が出来ます!。

BGM. 田原俊彦「キミに決定!」