F.へ~加藤和彦物語を観た。

15/Ⅸ.(日)2013 天気雨
台風18号が来るとの予報も、家を出たのが午後3時過ぎ、空は天気雨だった。
雨が降ってるのに、空は晴れている。サザンの歌にそんなのなかったっけ?
本日は、渋谷公会堂で16時から、「加藤和彦物語」だ。
正確には、きたやまおさむ「アカデミック・シアター、加藤和彦物語」だ。
実質的には、北山修とアルフィーの坂崎が、ゲストと一緒にフォークルの歴史を振り返る企画だ。
これは、今年の3月にもあり、その時は、友人のF.を誘って一緒に行った。
今回もF.を誘ったが、3連休は家族旅行の予定らしく、「残念だが行けない」と残念そうだった。
だから、今回の記事はF.のために書こう。
北山修は、今、芸能活動を「きたやまおさむ」と平仮名表記にして、精神科医(精神分析)の北山修と区別している。
だけど、僕らの世代には、ピンと来ないよね。
だから、あえて、北山修と書いてくね。「きたやまおさむ」じゃ、感じが出ないものね。
渋谷の東急の地下の壁には、きゃりーぱみゅぱみゅの来年1月の横アリのライブの広告がデカデカとあった。
写メを撮ろうと思ったが、人通りが多くて、いつまで経っても、行き交う人の波が途絶えないのであきらめた。
シブコウに着くと、空はどんよりとしていた。死人が天国から舞い戻って来るのには相応しい色の空だった。
開演までの時間に、僕はグッズ売り場で、東京公演限定のフォークル・トレーナー(グレー)を買う。
「帰って来たヨッパライ」のレコード・ジャケットの絵柄だ。
この記事は、F.のために書くと書いていて思ったのだが、何か記念にお土産でも買っといてあげれば良かったね。
何も買ってないです。ごめんね、気が効かなくて。でも、フォークルのタオルをもらっても、ビミョーでしょう?
だから、買わなくて良かったです。
いよいよ、オープニング。白いジャケットで北山修が登場して大拍手、ついでギターを持って坂崎が登場してさらに大喝采。
観客席の年齢層は、3月の時とほぼ同じで、昔の人気番組「クイズ!年の差なんて」だったら、僕らはヤング・チームでしたよ。
前半は3月の時とほぼ同じで、舞台中央のスクリーンに京都の北山の実家と加藤の実家の地図が出て、結成秘話を披露。
前回同様に松山猛と「イムジン河」を。
フォークルはアマチュア時代に、シブコウの舞台に立ったことがあり、その時の映像が残っているのだ。
マイク真木などが出てたフォークのフェスティバルで、それを客席から見てたのが、小室等だったそうだ。
ここで、アマチュア時代のメンバーの平沼義男がゲストで登場。
その貴重な映像に、北山・坂崎・平沼が時を越えて、同時に歌を合わせて歌い会場は盛り上がる。
和幸バンドにゲストで石川鷹彦が参加。和幸は、加藤和彦と坂崎幸之助が組んだユニット名ね。
「あのすば」のイントロを弾いたのは加藤か石川かという論議になる。「あのすば」は、「あの素晴らしい愛をもう一度」の略ね。
生前、加藤和彦は「あれは自分が弾いた」と主張していたらしいが、実際のところは石川鷹彦らしい。
今回はゲストで小室等も登場して、小室と石川と言えば、初期の六文銭のメンバー同士だ。
小室等が鑑定士のように、「あの12弦の音は石川さんのだ!」と言って決着。
もう1人のゲストは、杉田二郎だった。
平沼が抜けて、プロデビューする際、北山は杉田を推したらしい。この3人なら、背の高さが揃うから。
でも、加藤が「はしだのりひこ」を強く推して、背の高さが凸凹トリオになるからって。結果、正解だった気がするね。
3月の時は、「はしだのりひこ」について、北山が「連絡をとろうと試みてるがとれない」と説明があったが、今回はなかった。
さて、ここまで読んで下さったF.以外の皆さんのために、何だか全然判らないと思うので、少し、説明をしますね。
加藤和彦の遺志は、追悼コンサートをやるな、だったそうだ。
だから、「加藤和彦物語」をやるまでに、3年かかったのだ。
それは、残された者達の気持ちが整理するまでにかかった時間なのだろう。
そして、その挙句、「加藤和彦物語」は、加藤和彦に腹を立たせる、というコンセプトで行われることになったのです。
たとえば、加藤和彦が残した音源に北山と坂崎が歌を乗っけて、フォークルとして、レコードにして、それを実際に演奏した。
確かに、加藤和彦がもっとも嫌がりそうなことだ。
歌のタイトルは、「手と手、手と手」。
曲の途中の演出で、加藤和彦の衣装が手をつなぐようにして、数々、宙から吊るされてステージに登場した。
加藤和彦らしいカラフルで上品なデザインの物ばかりだ。
坂崎のアイデアで、加藤和彦のこれらの衣装を一箇所にまとめようと、家族から買い取って、家族にお金を渡したそうだ。
しかし、果たして、これをどこに保管するか?
服は25~6着はあり、大事に保管してくれる博物館を探しているらしい。
もし、この記事を読んでる人で、ご実家が博物館をやっているという方は、事務局に連絡してみたらどうでしょう?
ラストは「イムジン河」。原曲の詞で松山と平沼が1番、小室等の作った詞が2番、パトリック(和幸バンド)がフランス語で3番。
最後に元歌(フォークルの詞)を4番として会場と大合唱。親切にスクリーンに詞が出ます。
実際、僕らはリアルタイムで、「イムジン河」を聴いた事がないし、永い事、放送禁止の曲だったから、詞を良く知らないんだ。
アンコールでは、ステージに全員集合して、「あのすば」を歌うことに。
これは、レコードでは、1番を加藤和彦、2番を北山修、3番を加藤と北山で歌っている。
しかし、今回は1番を坂崎が加藤の歌真似で~これが似てるのだ、立川談志が「物真似とは当人の了見を真似るのだ」と言っていたのを聞いたことがあるが、まさにそんな感じで~2番を小室等が、3番を北山修と杉田二郎が歌うことに。
北山修の歌うパートが普段と違うから、間違えないように、と坂崎が念を押す。その他の人はコーラス要員。
曲は坂崎の編曲でサンバ・バージョンで、追悼っぽくなく、湿っぽくなく、陽気に行くのだ。
折角だから原曲のイントロの12弦だけは残そう、と。
さっきも書いたが、この曲の編曲者で当時それを弾いた石川鷹彦もステージにいるし。
でも、実際に、イントロの12弦を弾くのは坂崎だ。
あの印象的なイントロの難易度は高く、当時それを弾いた石川鷹彦がステージにいるが、ここは石川でなく坂崎。
北山曰く、理由は「あの人(石川)も、もう歳だから」だって。
こう書くと坂崎がすごく若く感じるが、坂崎は1954年生まれで、今年59歳だ。なのに、ヤング・チーム。
すごいでしょう、この空間。僕なんかが、断トツ、ヤングなんだぜ。
しかし、坂崎の弾く12弦ギターの音色はレコードの「あのすば」にそっくりだ。すごいな、坂崎。
坂崎は何でも器用だ。
フォークルだけでなく、かぐや姫のコピーも完璧だし、拓郎に至っては「スターズ☆オン23」というシングルまで出している。
坂崎は初期のRCにも詳しくて、BS‐NHKの番組で共演した時にキヨシ本人が感心していたほどだ。
「あのすば」は、全員参加のサンバ・バージョンで、明るく歌われると、1人づつ感想を述べ、順に退場、北山と坂崎だけが残る。
加藤和彦の遺書を、北山修が読む。加藤和彦は、もう自分の音楽は必要とされていない、と感じていたような文だ。
北山と坂崎は、加藤和彦の死後、2人で歌を作った。
「人生という劇場」という題で、それは加藤和彦の生き様を歌ったつもりだ、と北山が紹介して、坂崎と2人で歌った。
舞台のスクリーンに加藤和彦の映像がスライドショーのように流れる。
「スモール・カフェ」や「和幸」や、懐かしの若かりし「フォークル」の動画も流れていた。
厳密に言えば、あれは「フォークル」ではなく「ザ・ズートルビー」名義の「水虫の唄」の映像だったと思うよ。
歌が終ると、北山が「最後に写真2枚をみていただきます」と言って、スクリーンに写真が映し出される。
それは、1967年のアマチュアの最後の日の写真で、2枚はショットが違う。
1枚目のは、加藤和彦が消えた日に、加藤のスタジオに残されていた写真だそうだ。
加藤和彦は死の準備を着々としていたらしく、加藤のスタジオからは機材も全部撤去され、もぬけの殻だったそうだ。
そんな中、ただ、1枚、この写真だけが、残されていたそうだ。この写真だけは、捨てれなかったみたいだ。
北山は、加藤和彦はこの日に戻りたかったんじゃないか、という解釈をした。
もう1枚は、同じ日のアンコールの時の写真。だから、衣装が違う。これは、北山の診療所の応接室に飾られているらしい。
何となく良い話で、これで終わりかなと思ったら、最後に大サービスが。
1968年にプロのフォークルのはじめての解散コンサートをやったのが、ここシブコウで、それにちなんでラストはマニアック。
北山が、「1番、加藤がやって欲しくない曲です。コウちゃん、やりますか~!」と掛け声、坂崎がギターを鳴らす。
それは、「フォークル節」だった!!
フォークルは、基本的に同じことを2回やらないグループだったようだ。
知らない人のために、フォークル節は「当世今様民謡大温習会(はれんちりさいたる)」というライブ版の最初に入っています。
「フォークル大百科事典」という、フォークルのベスト盤的なやつにも入っています。
でも、ライブ版はハレンチ口上の後に「フォークル節」が流れるから、その流れで聴くのがオススメです。
で、この日の「フォークル節」ですが、そのレコードを見事なまでに、忠実に再現していました。
「フォークル節」は歌謡漫談のようなものなのですが、アドリブや「間」や「呼吸」がレコードで聴いた通りのままでした。
あれは、すごく練習したんだろうなぁ。いい大人が2人して、あんなくだらないものを一生懸命、合わせてたと想像すると愉快だ。
大人も捨てたもんじゃないと思った。大人って、そんなんでも良いんだと思うと、気が楽になる。
歌い切ると、北山は「加藤和彦!悔しかったら帰って来い!」とマイクで叫んで、手を振って、坂崎と肩を組んで舞台を去った。
これが、僕が思い出せる範囲の「加藤和彦物語」の一部始終でした。F.どう?観たかったでしょ?
さて、ここで朗報です。緊急告知です。
2013年12月11日に「紀元貮阡年」のデラックス・エディションがリリースされます。
発売から45年だそうです。豪華付録満載のLPサイズボックス入りです。
アルバム「紀元貮阡年」&「ハレンチ」、シングル「イムジン河」、そしてフォークル・レア映像DVDのディスク4枚。
きっと、このレア映像にアマチュア時代のシブコウの演奏も入っているのだろう。お楽しみだ。
そしてオリジナルLPジャケット復刻(歌詞カードも)、ファンクラブ会報(全6号)完全復刻&全24pのブックレット。
さらに、「紀元貮阡年」発売告知ポスターと「フェアウェル・コンサート」告知ポスターも復刻して収納されるそうです。
「紀元貮阡年」のポスターは、メンバーサイン入りだそうです。これは、ラミネートじゃなく、額装しなきゃかな。
価格は、14980円だそうです。これに価値を見出さない人には、無駄に高く感じるのでしょうね。
価値観は多様化した世の中です。人それぞれです。
僕は今度の休み中にでも、予約してきます。
BGM. 加藤和彦 北山修「あの素晴しい愛をもう一度」


4 Replies to “F.へ~加藤和彦物語を観た。”

  1. F.さんのために書いたのに、コメントするのもどうかと考えたけれど。
    行かれなかったF.さんは情景を浮かべて、「行きたかったなぁ・・・」と思っておられると思います。
    「イムジン河」には深く感じるものがあり、仲間うちのカラオケではよく歌います。
    発売されるデラックス・エディションは楽しみですね。
    今からもうウキウキといったところでしょうか。
    きっと、F.さんも予約されるのではないかな。
    深い想いがおありなのだろうな、という文章で、いいレポでした。

    1. 花の香りさん
      永い事、放送禁止だった「イムジン河」を解禁させたのは、南こうせつなんですよ。
      NHKのフォークの番組で、司会が坂崎でゲストが南こうせつの回で、いきなり歌っちゃったんですよ。
      マジで、坂崎は慌ててましたよ。NHKも良く放送しましたね。
      同じ番組の別の回に、はしだのりひこがゲストで出た時に、坂崎が「イムジン河」をやりましょうと言ったら、はしだのりひこが「あれ、テレビでやっていいの?」と聞き返しました。
      そうしたら、坂崎が、「こうせつさんが解禁にしました」と笑って答えてましたから。
      南こうせつって、四畳半的な叙情的なイメージがありますが、実はパンクな男なんです。
      花の香りさん、連続記録更新中ですね!いつもコメントありがとうございます!

  2. 「イムジン河」にそんな裏話があったなんてびっくりです。(38へ~くらいです)
    しかも、「こうせつ」がパンクな男だったなんて…。
    誰も知らないと思いますので、知人たちにも教えてあげます。
    連続記録でしたか。
    いつもなんの気なしに書き込んでるだけなので恐縮です。
    そのうち、フェイドアウトしながらいなくなる場合もあるかもなので、
    それまではなんの気なしにコメしたいと思います。

    1. 花の香りさん
      探せば、僕はその映像を持ってるはずです。
      「こうせつ」の回と「はしだのりひこ」の回。
      それを編集して、連続して観ると面白そうですね。
      今度、時間のある時にやってみます。
      出来たら見せてあげましょう。

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