16/Ⅷ.(土)2014 今日から夏休み明け
「あなた、疲れてるわね」とSちゃんは言う。
Sちゃんによると、僕は「年齢不詳」だそうで、それは見た目のファッションや感性ではなく、声、なんだって。
僕の声は特徴的らしく、彼女曰くそれが「年齢不詳」にしてる原因らしい。
Sちゃんによると、最近の僕の声は「低い」らしい。「よほど疲れてるのね」と言う。
ま、確かに忙しいことは忙しいし、「殺害予告」のコメントは来るし、採用面接も控えているし。
しかし、いつから僕はこんなにSちゃんと話すようになったのだろう。
福岡の学会で困っていた時に、Sちゃんが福岡出身だということを思い出し、相談したのがきっかけと言えばきっかけだが。
彼女は、風俗方面で大活躍中だが、結構、義理堅くお盆やおばあちゃんの何回忌には福岡にとんぼ返りしている。
Sちゃんはもうすぐ誕生日で、東京の友人が祝ってくれるから、このお盆は福岡に戻ってすぐ帰ってくる強行軍だそうだ。
福岡の学会の時は、ガイド役に幼馴染を、ブッキングしてくれたし。
何かお礼に誕生日祝いでも、あげようかな。
しかし、僕は昔から、女子が喜ぶような贈り物をしたことがなく、そういうセンスはゼロに等しい。
一方、Sちゃんも超売れっ子だからたくさんプレゼントを貰うだろうし。
趣味じゃない美少女フィギュアとかを貰っても、始末に困るだろうし。
こうゆう時は、形に残らない物をあげると良いと、何かの時に徳田さんが教えてくれた。
しかし、食べ物も好き嫌いあるだろうし。
お米でもやるか。でも、重いか(重量的にね)。じゃ、お米券、にするか。金券は、重いか(気持ち的にね)。
そんなことを僕は悩んでいた。こんな言い方も不道徳だが、少し淡い恋心に似ていると思った。
前の病院で一緒だった心理のAちゃんはいつも困ると相談に乗ってくれるのだが、今回ばかりは、ノーコメントだった。
そりゃそうだ。コメントのしようもあるまい。それとも、呆れられたのかも。
こうなったら、直接、本人に聞くしかない。<何かプレゼントいる?>。
そうしたら、Sちゃんの冒頭の発言につながるのだ。「あなた、疲れてるわね」に。
しばらく、Sちゃんは考えて、何かを思いついて、「でも、やっぱり…」って言いよどんで。
僕が黙ってると、彼女は、「土曜日、仕事、何時まで?」と聞いてきた。
<まぁ、その日によるけど、9時から10時くらいかな>と僕が答える。
「お酒は呑めるの?」<平日は呑まないけどね>「キャバクラとか行く?」<行かない。寿司屋とか焼鳥>と僕。
「あぁ、値段の書いてない寿司屋っしょ?回るんじゃなくって」と、Sちゃん。
すると、Sちゃんは、「だったら、私の誕生会に一緒に来てよ。そこの呑み代、私の分と二人分、払ってくれれば」と提案。
僕が渋い顔をしていると、Sちゃんは、「あっ、無理なら、全然。気にしないで。断ってくれて良いから」と言う。
ここで回想シーン。
僕が大学の5年生の頃、仲の良い女の子がいた。病院実習で1年間一緒にローテーションしてたから仲良くなる。
それをきっかけに付き合うカップルもよくいる。結婚してるケースも珍しくない。
僕らはつきあってはいなかったが、(つきあう、の定義がわからなかったから)、けれど、はたから見てもお似合いだった。
それが、国家試験直前の6年になって、その子は、僕らの班の別の男子と交際した。
正直、それはちょっと意表をつかれた。クラスの皆もそう思ったと思う。でも、誰も口にしなかった。
変な空気だった。僕は告白もしてないのにフラれていて、つきあってもないのに捨てられていた。
皆、遠慮して、その周辺のことは、一切、僕の前では、禁句になった。
その気遣いが、傷口にまた塩を塗りこむみたいに、痛くてね。
そんな時、レレちゃんが、(今回の人材募集の会社も彼女が紹介してくれた)僕をホームパーティーに誘ってくれた。
レレちゃんは、広尾とか麻布とか、あまり僕が行かない方面に、自宅を持っていた。
彼女は、小・中・高と一環の名門お嬢さん学校の出身で、だからそういう友達が集まる会だった。
僕の記憶では、うちの大学からは僕しか呼ばれていなかった気がする。
外人とかもいて、留学生って言うんですか?、白人だった。
来てる人は皆、着てる服装から違ってて。上品でさ。で、優しいんだ、そういう人達って。
隅っこでオドオドしてる僕に声をかけてきてくれたりして。
あまりの場違い感に、途中から記憶喪失です。
1つだけ覚えてるのは、ハンサムな男の子が「今日のパーティーのために、肉を焼いてきた」って差し出したシーンで、
僕は、単純に、<男が料理するんだ?>ってビックリしたことと、その肉がメチャクチャ美味しかったことだ。
まだ、「ビストロ・スマップ」はおろか、SMAPさえ結成されてない時代にですよ。
レレちゃんは、傷心の僕を励ますためにホームパーティーに呼んでくれて、「手ぶらでくれば良い」と言ったから、
本当に手ぶらで行ったら後悔したっけ。
ここで回想シーン、終了。
で、話をSちゃんに戻すが、まさにその時のレレちゃんのホームパーティーの招待のされ方と酷似してるのだ。
僕は、Sちゃんに、<実は大学生の時にね~>と上に書いたような話を打ち明け、<だから気が進まない>、と遠慮した。
Sちゃんは、「全然、気にしないで。気を遣わなくて良い人達だから」とその日の参加人物や行く場所を教えてくれた。
その日は、神宮で花火大会があり、女の子達は全員浴衣で参加する。
皆、似たような事を考えるらしく、その日の着付けは、予約がいっぱいで、だから会が始まるのも遅くになるそうだ。
それで、さっき、僕の外来が終る時間を聞いた訳で、むしろ、それで丁度良いくらいだと言う。
Sちゃんの友達は歌舞伎町のキャバクラで働いている女の子らしい。
そのメンバーで、行きつけの歌舞伎町のホストクラブに行って、VIPルームでシャンパンをあけるんだって。
話を聞いてる最中に僕がドン引きしてるのが、伝わったらしく、「大丈夫、シャンパンはもう用意してくれてあるから」と言う。
それも大事だが、それ以外にも色んな問題があり過ぎて、何を質問していいかが判らない。
本当に勉強の出来ない子って、質問すら出来ない、ってのとどこか通じるな。
<俺ね、初対面の人だと対人恐怖になるんだよ。喋れないかも>に、「精神科医が何、言ってるの」と笑う。
さらに「そこは皆、プロだから、大丈夫。対人恐怖を克服しよう!」だって。とほほ。
<そもそもホストクラブって男が入れるの?>「ダメじゃない?でも、私と一緒なら入れるから。事前に待ち合わせね」。
<ドレスコードとかあるの?>「女の子は浴衣デーだけど、あなたはそのままで大丈夫。TシャツでOK」。
さすがに、いくらかかるの?、とは聞けなかった。バースデーパーティーにお金の話をするのは無粋だし。
そもそも、これはSちゃんが、僕が元気なさそうだから、誘ってくれた好意だし。
本当の内輪の会みたいだし。
やっぱ、レレちゃんのホームパーティー・パターンだよ。その水商売バージョン。
まぁ、現実問題、いくらお金がいるのか、カードを使って良いのか、プレゼントは別にいるのか、などが皆目見当つかない。
そこで蛇の道は蛇、昔、その方面に詳しかったFのクリニックに表敬訪問する。
僕がFのクリニックに着くと、もう診療は終っていて、受付の二人の女の子とFが待合室のソファに座って待っていた。
僕は女の子にアルタでお土産に買ったクロワッサン鯛焼きを一匹づつ差し入れて、早々と二人を追い帰し、Fに相談。
Fは「う~ん、多分、騙されてはないと思う。でも取り巻きが怖いな」と分析し、「俺なら行かないな」と結論づけた。
現金は持っておいた方がいいよ。クレジット・カードは使っちゃだめ。花くらい用意したら。
「かすみ草だけ、とか、はよしたほうが良いよ。普通にバラとかね」だって。
<俺、現金、持ってないんだけど、貸して>って言うと、「君、ATM知らないの?」って言われた。
<使ったことない。オタクの間では、ATMってアニメイト・タイトー・まんだらけ、だって知ってる?>の返しは、スルーされた。
まぁ、でも、ありがとう。何か参考になったよ。
しかし、Fだったら、行かないのかぁ。
それでも、俺は行くけどね。
我ながら勇気があると思う。
戦場で生き残るのは必ずしも勇敢な兵士ではない、という言葉が頭をかすめる。
そこで心配になって、ヨット部で一緒だった、よく女の子にモテてた巴くんにも相談してみた。
巴くんは、「えーっ、Fは行かないって?僕は行くなぁ、行かないと始まらないよね」と心強い発言。
さらに巴くんは突っ込んだアドヴァイスをくれる。
「プレゼントは外れる可能性もあるので、別の日に時間を作ってもらって、一緒に買いに行くかな」だって。
お金は、Fと同じ意見で、カードは持っていかないって。
「お金は状況をみながらだけど、脈なしでも会費、女の子の分、車代で10万くらいかなぁ。
ホストクラブの飲食まで入れたら20万くらい?それ以上は絶対出さない。
でも聞いた話では、どうにかしようとする時は、同伴から店内、アフターまでして金使うみたいだよ~。
金かかるよね~。頑張って下さい。結果、教えてね」だって、ちょっと勘違いしてるみたい。
別に「どうにかしよう」なんて思ってない訳だし。
Sちゃんは、僕に一定の距離をおいている。彼女は悩み事を僕には愚痴らない。僕に喋ると金銭が生じると思ってるのかな?
それとも俺の腕を信用してないのかな?(苦笑)
彼女は悩み事は、キャバクラやホストクラブで喋って発散するそうだ。
「一々始めから相手に説明しないといけないから自分の整理になるのよ」、と笑う。
なるほどね。でも、じゃ、カウンセリングって何だって素朴な疑問にぶつかる。
これは僕が心理を雇ってうちのクリニックでカウンセリングをしている経営者としての最大のテーマでもある。
それこそ、Sちゃんじゃないが、呑み屋でうさ晴らしする事との違いとは何だ。
これは、繰り返し考える命題だ。
勿論、「教科書的な答え」はある。
でも、教科書に本当のことが書いてある保証はないし、世の中は教科書通りにいかないことの方が多い、って教科書に書いてなかったっけ?
そういうことを、ちゃんと踏み込んで考えたことあるのかなぁ、皆?
教条主義的に理論武装におんぶに抱っこなのではないかなぁ?
ただそこに座って黙って話聴いていたら、傾聴して幾ら、なんて甘くないぞ。
それじゃ、スヌーピーのルーシーの風刺と同じレベルじゃん。↓。
我々の仕事は武器が少ない。だから己れのパーソナリティーさえ道具に使うしかない。
メタ的にそれを客観視する自分がいて、サリバンはそれを「関与しながらの観察」と言ったし、オブザービングエゴなんて用語もある。
だけど、みんな関与してるのかな?
観察しかしてないんじゃないか?
「何をもって観察というか?」という問題もある。
観察さえ出来てないカウンセリングもあるんじゃないか?
ちゃんと、見ろよ、目の前の患者を。
ちゃんと、聞けよ、患者の訴えを。
何、聞いてんだよ。顔の横に付いてる2つの器官は何をするためのものだ?
こういう表現をすると聴覚障害のある方に失礼だから、撤回するが、強調したいのはそういう差別的な事ではなくて、プロ意識だ。
ポリシーとかプライドと言っても良い。
アイデンティティーなんてのはさ、努力しなきゃ身に付かないんだよ。
アイデンティティーが向こうからやって来てくれる訳じゃないんだよ。どこまで黒船幻想だ。
だったら悩もうよ、せめて俺と同じレベルくらい。
なんて、風俗の女の子にとち狂ってる中年の男に言われたくないか?
それは違うな。
俺はまともじゃないけど、俺の言ってることはまともだもの。
問題は、俺がこんなまともな事を言わなきゃならない現実だ。
昔、爆笑王の異名をとった林家三平が、「皆さん、真面目に生きましょう」と言うようになったら世も末だ、と立川談志が言っていた。
なんか、いよいよそれに近付いて来たぞ。精神医学界、カウンセリング業界。
俺は知らねーぞ。
もっと発言力とか影響力とかがある人が言うべきだ。
言ってるのかもしれないけど届いてねぇよ!。聞こえねぇよ!。
嘘です。皆、真剣です。皆、一生懸命やっています。なんだかストレスたまって業界に八つ当たりしてるみたいだ。最低だ。
でも、それを自覚出来てる自分ってかわいい。素敵、うっとり。
なんてね。
ナルシストの方程式ってこんな感じだよね。太宰とかも、大雑把に言えば、そうでしょう。違ったらゴメン。
ナルシスティックの逆ってマゾキスティックだったりするんだよね。
マゾキスティックの対語はサディスティックじゃなくて、ナルシスティックだって偉い先生が学説を唱えてたな。
どう思います?
ちなみにSちゃんって、Sちゃんだけに、サド、だよ。職業柄のキャラ設定はね。
初対面で僕は彼女と一言二言交わして、「あなた、Mじゃないのね!?」と言われた。
確かに人間を「S」と「M」で分ける物差しが存在して通用するのは判る。
しかし、初対面の人に対して、「あなた、Mじゃないのね!?」という挨拶が成立する空間があることを僕は知らなかった。
結構、長く生きてきたつもりだが、まだまだ知らないことばかりだ。
でも、良く考えたら、Sちゃんの仕事は客を選ばないから偉いな。
どっかの地方では、「疲れる」ことを「えらい」と言うらしいな。
「疲れた~」の意味で、「えらいわ~」って使うらしい。
本来、立派という意味で用いられる「えらい」が「しんどい」って意味と同じ言葉で表現されるのは興味深い。
人を労う時って、「疲れたでしょう」と「よく頑張ったね」って二つの声掛けをしたくなる。
「えらいね」はひとつで両方をまかなえるから便利だね。
奉仕の精神は現代では医療の現場より風俗にあったりしてね。
難しい問題だ。取り敢えず、髪の毛をスイカ模様にしてみました。今日から仕事だし、夏だし。
「金くれ。」Tシャツはタイムリーでしょう?。↓。
後ろから見ると、こんな感じ。緑と黒が見分けづらいですかね。緑はスイカの皮で、黒はスイカの種ね。↓。
爪は、Sちゃんの誕生祝いをイメージしてケーキっぽく。デコレーション・ケーキじゃなく、カップ・ケーキですね。↓。
しかし、人はどうやったら、綺麗に生きれるのかな。次回、いよいよ、予告ブログ、「生きること死ぬこと」に続く。
BGM. RCサクセション「よそ者」
夏休みいろいろあったみたいですね。
今回の先生のブログにはロケンローを感じました。
SMのSはサービスのSだとみうらじゅんが言っていました。
M(マグロ)を気持ちよくさせるためのサービスだとか。言い得て妙です。
やられメカさん
さすが、みうらじゅん!
そして、それをフィードバックしてくれたのも、さすが、、やられメカさん、です!
39!ロッケンロール!
先生、おはようございます。
「えらい」という表現、うちの田舎で使いますよ。
はい、いまその田舎に来ていて、蝉の声で起こされました。
先生のスイカ模様の髪、1週間経つとどうなっているか楽しみに、来週の診察に行きます。
トモトモさん、今は~、おはようございます!、かな?
「えらい」はトモトモさんの田舎でしたか。
いま、トモトモさんは、田舎にいるのですね。
大人になると、「普通に」やってて当たり前だから、誉められることも少ないでしょう?
だから、誉めてあげますね。
「えらい」ね!!!!!!
スイカ頭のカラー素材は、「持ち」が悪いので、1週間後には、見る目もないでしょう。
そんなことより、こんなドン引きする記事にさえ、コメントを拾い上げてくれたことに感謝です。
結果、報告しますね。
皆さんが、予想した通り(?)無事でした。(笑)。
Sちゃんネタ面白い?ですね~。
先生の心の葛藤が客観的に見れた感じがします。
こんどその誕生日会のレポート是非してくださいね。
ここで書けないなら個人的にメール下さい!
とにかくお疲れの様ですから、何かでリフレッシュしてくださいね。
sinさん
Sちゃんネタは、引かれてますよ(笑)
sinさんが、そう言ってくれるなら、誕生日会のレポートします。
多くの反感を買おうともsinさんに送るつもりで仕上げますね(笑)
いつも、コメント、ありがとうございます!