11月はおとなしくしてよう(23)~ピコ太郎

27/ⅩⅠ.(日)2016  父と受付のソネさんと「けいおん」のゆいちゃんのトリプル・バースディー
タイマーズのCDが再販されて、それに学園祭のDVDの映像が付いていて、えらく評判が良い。
タイマーズのライブは1度、観たかったものだが、なにせ、ゲリラ・ライブしかしないからな。
今回のも、本来は「泉谷しげる」が出る順番で、タイマーズが登場したらしい。
見所は、主催者が、途中で、本気で、「皆さん、このままだと本当に中止になりますよ」と迫真だったところ。
本来、ライブというのはそういう熱量を持っているもののはずだが、近頃は、とんとご無沙汰だ。
こういう秘蔵の映像が蔵出しされるのは有り難い。
タイマーズのリード・ヴォーカル&ギターはゼリー、だが、これはあくまでも清志郎とは別人だと言い張っていた。
ちょうど、今風に言えば、ピコ太郎と古坂大魔王の関係性に似たシャレだ。
ご存知だとは思うが、古坂大魔王は元々は、底ぬけAIR-LINE、というお笑いコンビだった。
僕は、底ぬけAIR-LINE、は生で観たことがある。タイマーズはないのに。
底ぬけAIR-LINE、は、NHKの「第1回爆笑オンエアバトル チャンピオン大会」に出場した。
この番組は、観客が面白い思うとボールを入れて、その重さを笑いに換算して、優劣を決めるのだ。
優勝者は、DonDokoDon(ぐっさん、がいた)で、底ぬけAIR-LINE、はビリの方だった。
しかし、この番組の審査員は会場の客(=素人)なので、立川談志が審査員として立ち会っていた。
そして、最後に談志から審査員特別賞が与えられることになっていた。
番組の最後にのそりと出てきた談志は、司会者の「発表をどうぞ~!」というトーンをまったく無視した緩慢さで、
ステージ上を歩き、底ぬけAIR-LINE、の前で立ち止まると、「お前とお前」と二人を指差した。
ビックリしたのは、底ぬけAIR-LINE、だった。古坂は思わずガッツ・ポーズをしてこう叫んだ。
「やった~!事実上の優勝だ~!」
その数日後だ。僕が、底ぬけAIR-LINE、を観たのは。
その頃の談志は、国立演芸場で月1のペースで「談志ひとり会」をやっていた。癌が発見される前のこと。
前座が出て、その後、談志がたっぷりと2席やる。
その中入りに次回のチケットが売り出されるから、1席目が終ると、ダッシュで物販コーナーに走った。
そうやって、僕は毎月、通っていた。
この「談志ひとり会」というのはものすごい緊張感のある空気だった。
間違っても素人が一人で行っちゃいけない(笑)。
笑うところを間違えると、談志はおろか他のプロのファンからも睨まれそうだった。
だから前座も、ふるえあがるようにして落語をやっていて、そんな空気だから、ウケる訳がない。
志の輔が前座で出たこともあって、これだけは例外で、観客を沸かせていて、後から出てきた談志をして、
「贅沢な前座だ」と言わしめた。
そんな「談志ひとり会」の前座にいきなり、底ぬけAIR-LINE、が出てきた時には仰天した。
すぐに、オンエアバトルの「賞品」だとは思ったが、同時に、罰ゲームかとも思うほど、彼らには完全にアウェーだった。
談志のファンは、はなから笑うつもりはない。オンエアバトルも観てない人がほとんどだと思う。
底ぬけAIR-LINE、が披露したのは、当てブリショー、という有名な曲に寸劇を合わせ音と動きを仕掛けにした笑いだった。
はじめに二人が寸劇をしながら客に動きを記憶させる。
そして全く予想外の曲が流れると、さっきの寸劇のセリフをミュートして同じ動きをすると、歌詞とピタリと合うナンセンスだ。
最初はアニメ「一休さん」のテーマだった。これには会場は沈黙だった。
底ぬけAIR-LINE、はめげずにすぐ、2曲目「ニコニコプン」をやった。少し会場から笑いが出た。
談志ひとり会の空気がこやつらを笑って良いかもと揺らぎ出したのだ。
そして、ピンクレディーの「UFO」をやった時には、なんと大爆笑&大歓声が起きた。
これは驚くべき、一大事だった。
古坂大魔王は、爆笑問題をはじめとしたお笑い仲間からの評価が高い。
ミュージシャンから人気のミュージシャンを、ミュージシャンズ・ミュージシャン、というらしいが、それに似てる。
古坂大魔王のブレークはちょっと前にもあって、一時期よくテレビに出ていたが、最近また、みなくなっていた。
それが、談志生誕80周年のこの年にこういう形で、ピコ太郎、が売れたことの意義は大きいと思うのだ。
そして何故か思い出したのが、談志が、ざこば、との対談で語っていた芸談のことだ。
ざこば、「天災、は理屈抜きで、ウケまっせ~」
談志、 <ウケる、って何?>
ざこば、「あんた、それがいけませんのや」
談志、 <笑ってる、ってこと?>
ざこば、「そうでんがな」
談志、 <2回やってごらんよ。笑わなくなるから。3回でもいいよ>
ざこば、「そうでんがな?」
談志、 <やってごらんよ。笑わなくなるから>
ざこば、「何が言いたいん?」
談志、「(笑)つまりね、ウケてるからってのを条件にしておくとね、ウケてるうちはいいけどね。ウケなくなったら困るでしょ?
    そん時にね、理屈っぽいようだけれども、落語ってのはこうこうこういうものだから、
    こっちから攻めて、ここを守ってんだ、ってのが有るとね、ウケなくなっても迷わないで済むでしょ?」
みたいなこと。
ピコ太郎の活躍を、どこが面白いのかわからない、とか、一発屋、などと、したり顔で批判する人は多い。
すぐにウケなくなるだろう、とも。ひょっとしたら、一番そう思ってるのは、古坂大魔王、自身なのかもしれない。
しかし、もし談志が生きていたら、違った意見を言うのだろう。
ひょとっしたら、それはもうとうの昔に伝えられていたのかもしれない。
つまり、ざこば、に言ったようなことを、「ひとり会」の後の、底ぬけAIR-LINE、に談志が喋った、と想像すると、
当てブリショー、と、ピコ太郎、の点と点が結ばれて、その間の空白が線になって繋がるロマンだ。
ピコ太郎、「談志まつり」にタイマーズみたいに、ゲリラ・ライブで出ちゃえば良かったのに。
どうせ曲、短いんだから、尺とらないんだから。
BGM.ザ・タイマーズ「カプリオーレ」


2 Replies to “11月はおとなしくしてよう(23)~ピコ太郎”

  1. オンエアバトル先生も見てたんですね。
    あの番組は面白かったなあ~。
    今思えば、ダイヤの原石が沢山いましたね。
    底ぬけAIR-LINEは覚えてないですね、もちろん古坂大魔王も知りません。
    お笑いの番組は結構みてるんだけどな。
    お笑いじゃなかくて、落語かな?
    笑点はかかさず、見てますけどね、親と一緒に!

    1. sinさん、こんにちは。
      オンエアバトルでは、他には、アンジャッシュとかラーメンズのことを談志は評価していましたよ。
      僕は「笑点」はみてなかったのですが、昇太が司会をやるようになってからみていますね、一人で!
      ではまた~

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