30/Ⅶ.(木)2020 くもり 高田延彦、アベノマスク追加8000万枚に苦言。「洗濯する負担も考えなさい」
笹公人の「念力ろまん」(2015年5月)を読んでいる。↓。
「気分はCITY POP」という連作で、
「ゴダイゴの『ビューティフルネーム』脳内にかけながら見る園児の散歩」、
という句があった。そういう訳で、今回は、名前の話。
中2の頃、自分の名前に別の漢字を当てる遊びをしてた。僕の下の名は「達二」だから、「刺青(タトゥー)血(ジ)」と当て、出来たら満足して部屋のその辺に放っぽいたからいけないのだが、母がみつけ、悲しそうな目で「達二、あなたは自分の名前が嫌いなの?」と訴えられたもので、僕は「ハァー、これだから大正生まれは面倒くさい」と思ったものだ。
知り合いの獣医さんに聞いた話だと、動物園で「○○の赤ちゃん」の名前を公募、ってのは客寄せなんですって。
基本的に動物園では、動物に名前は付けないらしい。
識別できれば良いから。
今の個人情報保護法と似てるな。「何番の方、会計にどうぞ」みたいな。
そう考えると、名前って記号かな。
ところが、我々の業界では、「イマジナリー・ベイビー」なんて用語があります。
「イマジナリー・ベイビー」の例で、よく引き合いに出されるのが、皆さんご存知の画家のゴッホです。
ゴッホの産まれる丁度1年前に子供が死んでいて、つまり、その子の命日に、ゴッホは産まれたことになります。
親としては、モーニング・ワークの意味合いもあったのでしょう、ゴッホに死んだ子と同じ名前をつけます。
でも、これってどうなんでしょうね?
庭の隅には、お墓もあって、墓石に自分の名前が刻まれているのを、きっと幼いゴッホは見ただろうに。
その名前が、「ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ」。
ゴッホは小さい時から親と馴染めず、弟のテオにくっ付いていて。
テオを親代わりにして何とかやっていたが、テオが結婚した直後、精神症状が悪化して入院となる。
甥が産まれた時、ゴッホはホロホロと泣き、その子に「ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ」と名付けてくれと頼んで。
その通りに名が付くと、その直後に自殺して死んでしまう。
ゴッホには、「ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ」を伝える役割があった、というお話し。
これが、「イマジナリー・ベイビー」、家族神話のような世代間伝達のお話し。
どうですか?
すごくないですか、我々の業界。
ゴッホってもっとも多く「語られる画家」の1人だと思うのだが、我々のすごさはゴッホの作品に一切ふれてないこと。
ま、病跡学のジャンルではふれてるんでしょうが。
家族精神医学では、ふれない。ただ、役割理論の例えに良い具合に使われている。
ゴッホほど極端でなくても、名前には、何かを縛りつける力(作用とか効果)がありますね。
名前を考えるにあたって、僕が1番に想起するのは「シベールの日曜日」という映画です。
ここからは、ネタバレありです。
嫌な人は、ここから先は読まないで下さい。映画のあらすじを書いて終わりの記事ですから。
あらすじは、シベールという少女が母に男が出来て邪魔になったから、寄宿舎に入れられます。
母はシベールに「毎週、日曜日に面会に来るから」と約束して去って行きますが、一回も来ません。面会どころかその後の映画に登場しません。シベールは、棄てられた訳です。
おまけに寄宿舎の怖い寮母みたいな人に、「シベールは変な名前だから、ここではフランソワーズと呼びます」と勝手に名前も変えられてしまいます。
フランソワーズ(シベールのこと)は日曜日ごとに健気に来る筈もない母を待ちます。
ある日曜日、フランソワーズは、ある青年と出会い、意気投合して、友達になります。
いつしかフランソワーズの日曜日は、この青年と会う日になりました。
青年は、ベトナム戦争で受けた心の外傷で、戦争神経症(PTSD)になっていました。
青年には綺麗な看護婦の彼女がいて、彼女は献身的に青年のケアをしていました。
でも、青年は彼女には心を閉ざし、フランソワーズにだけ、心を開くのでした。
世間からみたら奇異にみえますが、純愛ストーリーです。
フランソワーズはクリスマスのプレゼントに教会の上の風見鶏が欲しいとリクエストします。
クリスマスの日に二人は逢引して、青年は危なっかしい足取りで、教会の屋上に上って風見鶏をもぎとってきます。
それをフランソワーズに渡すと彼女は満面の笑みで、お返しにと、木にくくりつけた紙を指差します。
青年が、その紙を木から取って、畳まれた紙を開いてみると、カメラがそこに書かれた文字をクローズアップします。
シベール
とだけ書いてあります。
フランソワーズは、クリスマスのプレゼントに、青年に本当の自分の名前を教えたのです。…涙。
それから、何がどうしたのかは忘れたのですが、警官隊が二人を取り囲みました。
どうやら、精神異常者が少女を誘拐した、って話になっていたような。
「手を上げろ!」の声に、青年がシベールをかばおうと動いた瞬間、一斉射撃。青年、銃殺。
青年の死体に泣き崩れる少女。
警官隊が近寄り、声を掛けます。
「お譲ちゃん、大丈夫?」「悪者は死んだからね」「怪我はないかい?」と警官隊は優しく口々に語りかけます。
少女はずっと泣いています。
そしてラスト。「もう大丈夫だから安心して。お譲ちゃんのお名前は?」という警官の質問に、泣きながら少女が答えます。
<もう私に名前なんてないのよ>
これが、映画「シベールの日曜日」です。
名前の持つ意味を考えさせられますね。名前は単なる識別記号ではありませんね。
さて、これでおしまいです。
名前について興味を持った人や、戦争神経症の資料を探してる人は、観てみたらどうでしょうか?
ただ1つ注意点があります。
僕の古い友達がよく言うのですが、「君の教えてくれる映画はいつも面白そうだから観るんだけれど、必ず、筋が違うんだよ」。
「さらにタチが悪いのは、映画より、君の話の方が面白いから、観た後、損した気がするんだよ」って。
僕は自分の記憶だけで話してるから、他の話がミックスされるのでしょうね。
だから「シベールの日曜日」のストーリーも違うかもしれません。
さっきのゴッホの話も同様です。気になった人は鵜呑みにしないで自分で検証して下さいね。
あと、ここまで読んでくれたけど、記事や映画「シベールの日曜日」に取り分け、興味が湧かなかった方にも朗報!
シベールは美少女だから、ロリコンの人は必見です!!
この記事のタイトルは「ビューティフルネーム」なのに、なんちゅう、オチじゃ。
BGM. 映画「シベールの日曜日」ダイジェスト
私は、私の名前でコンプレックスを持ったことはないです。その点では、両親に感謝してます。
でも、イキなゲームですね、先生たちのやっていたやつ。
名前のイメージって本当に大切で、三島由紀夫は本名が「平岡公威」なのに、三島由紀夫っていう若々しくて、勇ましい名前・・・・誰がつけたのか知りませんが、ついちゃった。そのあとで、ボディビルやって。きっと何かのコンプレックスを持っていたから、ああいうペンネームとボディビル、今でいうウェイト・トレーニングをやったんじゃないかって、思ったりしました。
ゴッホは、もっと絵を見たいです。自画像なんか見ていると、綺麗ですものね。「シベールの日曜日」は、つらすぎて見てられない。
papaさん、こんばんは。
今、受付のスーちゃんと、「食べ物の頭に、ろまん、をつけたら美味しそうにならないか?ごっこ」をしてました。
「ろまん・エビ」、「ろまん・ウニ」、「ろまん・チーズバーガー」、「ろまん・チキン・マック・ナゲット」など。
人間の名前につけたらどうかしら?「ろまん・三島由紀夫」、「ろまん・ゴッホ」、「ろまん・シベール」。人間だと、なんか切ない感じがしますね。
ではまた~
川原先生、こんばんは
なんか切ないお話ばかりで…
「イマジナリー・ベイビー」って初めて聞きましたが社会学でいう「ファミリー・アイデンティティー」の事?と一瞬勘違いしました。ニュアンス的にはなんか違うので「例え」のほうがいいですね。投影も入ってますし。
シベールの日曜日はなんかお互い失っているから似ていて補い合うように思えました。青年に渡したモノは真の名、必要な人にだけ渡せるモノ、でも青年が死んでしまったら消えてしまう「本当の自分」 ここでの2つの話に精通するものは「自分を忘れないで」だと思いました。
戦争神経症からPTSDとして認知度が広がったのはオウム真理教の影響だったんですよね、最近勉強サボり気味だからちょっと忘れ気味(笑)
ネコスッキーさん、OHA!
若い子で、「自分は勉強が出来ない」という子がいます。
そういう子には、「勉強、とは、無理に強いるもの。あなたは好きなことは詳しいから、学問向き」と言って、大学進学を勧めます。
オタク気質の人って、モチベーションの持ち方で、パフォーマンスが左右されますものね。
立川談志は、中卒ですが、「俺には学歴がある。落語や芸を学んできた。ないのは、学校歴だ」と言ってました。さすがですね!
ではまた~
川原先生こんばんは。
私の兄は夏の暑い日に産まれました。生まれるまで女の子だと言われていて、両親が用意していた名前も女の子の名前。でも、産まれてみてびっくり。実は男の子だったのです。急遽、両親は男の子の名前を考え直したそうです。
その時兄の為に用意していた女の子の名前が、今の私の名前です。
このブログをよんで、久しぶりにそんなエピソードを思い出しました♫
いずみさん、OHA!
この話、何気にすごいですね!
しかも、初耳!!
川原先生、こんばんは。
ゴッホ私も大好きな画家で、高校時代に模写とかしてました。波乱万丈な人生だったのも知ってたけど、絵は明るくて快活で素敵な絵だなってずっと思ってました。でもある時、ゴッホはすごい多作で、あれらの絵を2〜3日?に1つくらい描いてたスピードだったっていうのを知って、初めてゴッホの苦悩を感じたというか、あれだけカラフルで動きのある絵をそんなスピードで描くのは大変だったんじゃないかと思いました。抜群に突出した人だったんだな。私はゴッホの模写、半年以上の授業で完成させた気がします。
ゴッホは大好きだから、それにまつわる思い出が沢山あってコメント書ききれないです。
シロクマ@ゴッホが白熊描いたらどんなかな、さん、こんにちは。
批評家の小林秀雄も、ゴッホのことが大好きでいつもゴッホのことを考えてたから、ひとり言で、「ゴッホ、ゴッホ」といつも言ってたから、周囲から、「風邪をひいているのか?」と心配されていたそうです。ゴッホ豆知識でした。ではまた~
わたしは自分の下の名前がとても好きです。わたしの父が、正しい道をあるくように、という意味を込めてつけてくれました。
何をもって正しい道というのかは、誰にもわかりません。それでも、自分の心に真っ正直に生きること、これがきっと正しい道なのだとわたしは思います。
とても単純で、当たり前なんだけど、お金や、忙しさや、他人の目や意見で、見失いがちだと思います。
ブレたり焦ったり、なみはまだまだ激しいわたしですが、バランスをとりながら、大切に生きていきたいと思っています。
タモさんが好きさん、こんばんは。
キヨシローが覆面バンド「ザ・タイマーズ」をやった時の芸名を知ってますか?
正解は、ゼリー、です。夏っぽいですね。
川原せんせい、こんにちは
ゼリーですか。今の時期にピッタリですね。
最近はハンドルネームを自分でつけるのは普通だけど、キヨシローさんの時は、SNSもそんなになかったろうし、画期的だったのかな?
タモさんが好きさん、こんにちは。
タイマーズ、は今も、セブンイレブンのコマーシャルで使われてますね。元は、モンキーズの歌だけど。
川原先生こんにちは。
あの彼女って、絶対お母さんじゃないといけないのかなあ…記憶の中にだけいる彼女でもいいんじゃないかなと思うんだけど。
タモさんが好きさん、こんばんは。
女性ならいいんじゃないでしょうか?ちなみに、フランス語で「テーブル」は女性名詞、「日本」は男性名詞だそうです。
川原先生、こんばんは。
自分の名前が分からなくなるほど傷ついた時は、一体どうしたものでしょうね…わたしって一体なんの病気なんでしょうかね。今は傷つき切った自分に驚いてます。
タモさんが好きさん、OHA!
こういうのは、「ゴミ箱」の方がいいかも。そっちも利用して下さいね~