今日は「ムンク」のその後です。
よくよく考えたらムンクは僕が中学の時に、1年だけ五反田に住んでた時に、マンションにいた子です。しばらくして、「ところでこのフランス人形どうしたの?」って聞いたら、誰も知らない、って。いつのまにか家にいた。皆気味悪がったから僕が引き取った。以来ずっと僕の部屋にいる。もう母が死んで20年くらい経つ。僕とこいつの関係の方が50年くらいだから母を抜いた。誰よりも長い。
残念ながら、ムンクに何か特別な力がある訳ではなくて、ただ、僕の中学受験のための塾通いの頃から中学合格、その後の僕の生活をずっと見てきて知っている。僕がマンガを読んでいる時も、投函しそびれたラブレターを書いていた時も、ホルンの練習をしていた時も、深夜ラジオを聴いていた時も、友達が遊びに来て馬鹿騒ぎしてる事も、親に隠れてウイスキーをこっそり飲んだことも、憬れのアイドルのピンナップも、好きなプロレスラーのポスターも、僕のお気に入りの歌手とレコードも、整髪料で髪型に異常にこだわって鏡の前に立っていた姿も、それから、僕の喪服姿も何度か見て知っている。
僕の歴代の彼女も、一回きりの人も僕の部屋に遊びに来たことのある人は皆会っている。
今は、霊能者から「もはや呪物だから、手離した方が良い。呪物コレクターを紹介します」と言われてしまいましたが、それではムンクが可哀想です。球体関節人形なのですが、関節もイカれて脱臼しているし、髪の毛もとれちゃっています。対症療法でいいから治してあげたいのですが、まずは綺麗なお洋服を着せてあげたくて、Facebookで見つけたお人形作家さんにダイレクトメールしてみたら、色良い返事が来たのでムンクのお洋服の交渉をしました。
お人形作家さんが今週の水曜日、クリニックまで来てくれると言うのでそこでムンクと対面してお話をしてお渡しです。だから家からムンクを連れて来ました。
厳重に袋にしまって。
中を開けますね。
あらあら、髪の毛が取れちゃった。
こうやって乗っけていますが、ボンドか何かで接着した方が良いのかな?それも相談しよう。
帽子もボロボロになっちゃって。
これも上にかぶせるだけです。新調してもらいましょう。
これが現状の「ムンク」です。
この子の名前は長いことなくて「お人形」と呼んでいましたが、僕の夢の中に出て来て「わたしはムンク」と名乗ったから、それで名前はムンクです。
ムンクひとりを預けると寂しがりそうだからいつも一緒に寝てるサンリオの人形もお供させます。
おうちで寝てるムンクたち。
仲良さそうに寝ていますね。
ムンクを預ける時に一緒に旅立たせます。埴輪の発想です。
文化部長のスーちゃんにも抱っこしてもらいました。最初は恐る恐るですね。
でも、しばらくすると慣れて、優しく抱っこしてくれました。
人形作家さんが来てくれてムンクを預けました。そうしたら預けてる間の代わりのお人形をくれました。ムンクの友達にして欲しいと、抱き熊スーティー、というそうです。木毛(もくもう)とお腹は「激落ちくん」というスポンジで出来てるそうです。アンティーク調ですが、全部、新品です。チョコミントのミント色はなんとなくカワクリのロゴの色とも似てますね。赤い蝶ネクタイがポイントです。
お人形作家さんが作ってくれた、抱き熊スーティー、を運ぶ時の布バッグ。だきぐまSOOTY、とはイギリスの番組にいた「耳黒スーティー」から来てるそうです。
「気持ちよく心地よく過ごせるように僕はいつも君のことを守ってみてるよ」っていう子なのです。
名前は勝手につけて良いと言われたので、ラスプーチン、にしました。意味は、反戦を願って、プーチンでラスト、みたいな願いを込めました。
ラスプーチンを連れてお昼に行きます。鍋焼きうどんを分けてあげます。
いつも守ってくれる約束だから、連れて出かけますよ。
お人形作家さんは、テディベアの第一人者です。実はムンクを渡した翌日にテレビのロケでお教室にテレビ局が来たそうです。芸人のさまーずの二人が来て、一緒に作家さんがあみだした似ベア絵を描きながらテディベアの雑談をしたそうです。時系列で言うと、この企画は僕がムンクのお願いをした直後に来たものらしく、作家さんは「ムンクちゃん効果」と本気で呼んでくれています。
アートな仕事をする人の思考回路って古代的で素敵ですね。すっかり懐いちゃいました。
ムンクをお預けした3月19日は、偶然、母の命日だったから、とても感慨深かったです。
僕は、ムンクの居場所にラスプーチンを配置して一緒に寝ています。
ムンクの服が仕立てあがるのが楽しみです。