こんにちは、とくだです。
今年もオオトリは相談室だよりをお届けします。
クリニックでは、毎月『定例会』を行っていて、今年もいろんなテーマが挙がりました。今年の「定例会ノート」を振り返って見ていると、そこからまた連想が湧いてきます。今年は、『14歳』という年代について思うことが多い年でした。
以前にも、心の発達のポイントになる年代のお話をしたことがありますが、
0歳、2歳、10歳、14歳、17歳…
今回は特に14歳について。
14歳前後は、心と身体の両方で大きな変化が重なり合う時期で、第二次性徴が進み、身体は急速に「大人」に近づく、その一方で、心はまだ揺れ動きやすく、まだまだ子供の部分や未成熟な部分も多く残されています。
この時期の大切なテーマは自我の芽生えで、
「自分は何者なのか」「何を大切にしたいのか」
という疑問がはっきりと意識されるようになります。親や教師の価値観よりも、仲間同士での価値観の方が大切になり、優先されたりするのもこの時期の特徴です。彼らはそうやって、これまでの親の傘下にいる自分の価値観を壊して作り直す作業をしようとするのです。
とはいえ、まだまだ成熟はしていないから、この年頃の子供と親の親子関係は、時には激しく衝突することも多いです。
親から見れば子供の変化が突然に見えることもあるかもしれません。反抗期がきたのか、思春期か、と思うけれど、その関係性の葛藤のタネは、ある日突然始まるものではありません。
多くの場合、その芽はすでに10歳、12歳頃にすでに現れ始めていることが多いのです。親の言うことに疑問を持ち始めたり、些細なことで反発したり、内面を見せなくなったり…まだうまく言葉にならない時期ですし、親への反発もまだそこまでではなかったりするので、目立たないことも多いかもしれません。
しかし、14歳は、その萌芽がはっきりとした形を取り、親から心理的に離れようとする時期の始まり、と言えるでしょう。
これは親の育て方が失敗したからでも、子どもが問題を起こしているからでもなくて、必要な過程なのです。
そしてまた、14歳前後の子どもを育てる親自身も、ミドルエイジ(中年期)の課題に直面していたりもするもので、この時期の親も、心理的な発達課題に直面しています。
ミドルエイジの発達課題には、例えば、時間の流れをこれまでとは違う感覚で意識し始める時間展望の変化、ホルモンバランスなど身体的変化、家族の形の変化(子どもの自立、夫婦関係の再編、自分の親との関係の変化など)、仕事での役割の変化などが挙げられます。
この時期の親子のすれ違いは、
「子どもが反抗するから」 「親が理解しないから」
といった単純な構図ではうまく理解できないところがあるので、難しいですね…
子どもは親から離れ、自分になろうとしていて、
親もまた、変化に直面していることが多い。
衝突や違和感は、どちらかが間違っているのではなく、双方が変化しているゆえに不安定な関係になりやすい、そういう構造が浮かび上がります。
14歳という時期は、完成ではなく「過程」の真っただ中であり、揺れること、迷うこと、ぶつかること、そのものが、成長の一部でもあります。
揺らいでいる子どもにとって、安心して揺らげる場所が失われている場合、それは要注意です。
親自身がミドルエイジの課題もあり、余裕を失っていると、子どもの不安定さに対して「正そう」「理解させよう」と強く関わってしまうことがあります。
その結果、子どもは、失敗できない、弱さを見せられない、気持ちを言葉にする前に閉じこもる、といった状態に追い込まれてしまうことが、多々あります。
これは誰かの責任というより、同時期に二つの発達課題がぶつかり合う構造そのものの問題ではないかと思われます。
「今はそういう時期なのかもしれない」
そう捉え直す視点があるだけで、関係の見え方は少し変わります。この時期の揺らぎは、早く問題解決をすることが目標というよりも、揺らぎながら見守り、支えることが必要になるでしょう。
誰しも、揺らいでいても、戻れる場所がある、そう思えると強いと思うのです。子どもだけではなくて、親にとってもそれは同じです。
単純な図式では捉えきれない時期をどう抱えていくか、私たちもこれからも考え続けていきたいと思いますし、カウンセリングの時間も活用してほしいと思います。
14歳只中の人も、その周りの人も、かつて14歳だった皆さんも、来年もまたよろしくお願いします。
