あるところに、お嬢様学校に通う、貧乏な女の子がいました。
その子はとても秀才なため、特待生でそこの学校に入りました。
ですが、そこの学校に通う子は、自分以外、全員裕福です。
その子はひたすらに貧乏なので、お友達との様々な違いに、日々悩んでいました。
裕福な友達1「今日のわたしのおやつは、広島のもみじまんじゅう」
裕福な友達2「わたしは、プラハに売ってたチョコレート」
貧乏な女の子「いいなぁ。二つとも食べた事がないや。
わたしは、お母さんが勤めてるクリニックからもらってきた、ミルクと砂糖」
さっそく食べ始めようとした3人ですが、ここは学校の中庭。
手洗い場がありません。
でも女の子なので、用意周到です。
裕福な友達1「わたしの今日のお手拭は、三ツ星フレンチでも使ってる、これよ」
裕福な友達2「わたしは、ファーストクラスでも使われてる、これよ」
貧乏な女の子「二人とも可愛いの持ってるね。
わたしは、バイト先でお客さんが使わなかった、これ」
無事、おやつを食べ終わりました。
その後は、さすが女の子、お口のケアもかかせません。
裕福な友達1「やっぱりこれよね」
裕福な友達2「わたしはそれの新作よ」
貧乏な女の子「美味しいの?やっぱりにおいケアといえばこれよね!炭!」
裕福な友達1「おやつの時間はあっという間ね。今何時かしら?とけいで確認しましょう」
裕福な友達2「とけい、とけい、あ、あったわ。あら、もうこんな時間」
貧乏な女の子「わたしの、けいと、は時間がわからないんだ」
裕福な友達1「残った時間でシール交換しましょうよ。昨日買ってもらったの」
裕福な友達2「わたしはイギリスで買ったものよ」
貧乏な女の子「キラキラしてて綺麗だね。
わたしは手作りなんだけど、これでいいかな?」
シール交換を無事に終えた3人は、授業に戻っていきました。
次の授業は美術です。
裕福な友達1「わたしは、フランスの画家が使っているものと同じキャンバスとペンを使うわ」
裕福な友達2「わたしは世界に3つしかないキャンバスとペンを使ってみるわ」
貧乏な女の子「二人とも素敵な文房具だね。
わたしはそんな高級品持ってないから、これを使うよ」
貧乏な女の子「あはは。これじゃ、ぜんぜんかけないや…。
わたしのは文房具じゃなくて、びんぼうぐだよ…。」
女の子は、どうしてこうも違うのかと、嘆き悲しみました。
「わたしは、まともにかけるペンすら買えない」
一本のえんぴつを、小指ほどの長さになっても、大事に大事に使っていた女の子にとって、カラーペンなんて夢のまた夢でした。
そして、いいものを使っているお友達と、それを持つことすら出来ない自分を恨みました。
とうとう貧乏な女の子は、いけないことをしてしまいました。
同級生のロッカーからカラーペンを(ペン立てごと)盗んでしまうのです。
数日後、女の子は先生から呼び出されました。
先生の後姿は、とても意味深です。
「な、なにかご用でしょうか?」
女の子は、怯えながら聞きました。
とてもこわいかおです。
でも、先生は何も言いません。
何も言わず、手を前にかざしています。
『先生は怒っているんだ。わたしが人の物を盗んでしまったから』
女の子はそう気付きました。
そして、盗んだものを先生の前に置きました。
女の子は言いました。「先生、すみません。
わたしは同級生のロッカーからこれを盗みました。
どんな罰でもうけます。」
先生は女の子に聞きました。
「なんでこれを盗んだの?」
女の子は正直に答えました。
「わたしが持っている文房具じゃ、満足に絵も描けないからです。
でも、新しい文房具を買うお金はなくて。」
先生は数回うなずいたあと、女の子に言いました。
「手を出してごらん」
「これは、とっても美味しい柿だよ。これを君にあげる」
女の子は混乱して、聞きました。
「先生、なぜですか?わたしは悪いことをしたのに、なぜ美味しい柿をもらえるのですか?」
先生は一呼吸置いて、こう言いました。
「その柿で、【カキカキ】しなさい。
よし!踊ろう!」
このお話が、有名な不良更生プログラム「柿踊り」の起源である。
川原です。
この撮影で使われた柿は、マリちゃんにハロゥインの日にいただいたものです。カボチャじゃなくて、柿だってところが面白いですね。
今回の記事のクレジット。
記事執筆・うかい。
原作・有島武郎「一房の葡萄」。
原案・川原&うかい。
絵コンテ・うかい。
撮影・川原&うかい&杉山&渡辺。
小道具・川原私物&患者さんからの贈り物。
フリスク・ナースの塚田さん私物を拝借(無断)。
貧乏な女の子役・渡辺(初主演)。
裕福な友人1・杉山。
裕福な友人2・うかい。
先生・川原。
貧乏な女の子がペンを盗んだ引き出し・スモーク君(ピローヌ)。