6/Ⅵ.(土)2020 はれ、夕方から雷雨? スタバに生まれて初めて行く。
今月のおすすめ図書は、つげ義春の「古本と少女」という少女マンガです。これは、つげ義春という特異でマニアックなファンの多い作家にしては異色なちょっとロマンティックな作品です。つげ自身も気に入っていたのか、初出は貸本漫画時代のものを後に現代風にセルフカバーしています。コマ割やセリフはほとんど同じで、絵だけが違います。今回は、その二つを皆さんと一緒に見比べようという企画です。今月のおすすめ図書、なんていうと恒例行事のように聞こえますが、初の試みです。
診察室の本棚を、二段、つげ義春が占拠しています。こちらの「選集」は時代的には古いもので、簡単にいうと、「ねじ式」以前の貸本時代の物です。↓。
こちらの「全集」は「ねじ式」以降の物から過去の名作までを選出したものです。↓。
それでは、どちらにも載っている「古本と少女」をみていきましょう。新しい物・貸本時代の物の順に交互に行きますね。まずは、扉絵。↓。
古いのは、時代感が出てますね。作者が違うみたいですね。↓。
主人公の少年は恋をしています。その相手は一冊の本です。お金がなくて買えないから、毎日、本屋さんに来ます。読みに来てるのが半分、まだ売れてないかを確認に来てるのが半分といったところでしょうか。古本屋の娘は、この少年のことがちょっと気になっています。タイトルの「古本と少女」の少女はこの子のことです。↓。
貸本時代の少女は、大人びてますね。未亡人のようにもみえます。↓。
この本は、元々、ある人がお金が困ってこの本屋に売りに出してたものです。しかし、それはその人のお父さんがとても大事にしてた本だから、お金が出来たら買い戻しに来るのです。そもそも、そんな大事な本なら質屋代わりに使うなよ、って話ですね。
少女は、こっそり手紙とお金を本に忍ばせます。少年はいつものように本を手に取るとお札がヒラヒラと足下に落ちます。少年にとっては大金です。とっさにお金を拾って本屋を抜け出してしまいます。しかし良心の呵責からか臆病風か、おまわりさんをみただけでビクビクします。そうして悩んだ末、お金を返しに古本屋に行きます。すると、どうでしょう。そこで本の持ち主が、買い戻しに来ている場面に遭遇します。少年はとっさに返すつもりのお金を出して、いけませんね、その本を買おうとします。二人の間で本の争奪戦です。店のオヤジも困り顔。少女は思わず、顔を伏せます。
決着はあっけなくつきます。持ち主が多くのお金を出すと言うのです。少年はギリギリの額しか持っていません。オヤジは「よし、こうなったらワシも商売だ」と高い金額を提示する持ち主に本を売ります。落ち込む、少年と少女。
しかし、事態は急展開します。なんと、本の持ち主が少年のアパートを探し出して本を譲りに来てくれるのです。「これは本来、君が持っておくべき本だ」などと不思議な事を言って。その種明かしは、彼の次の発言に隠されています。「手紙がはさまれていた。僕には関係ないからそのままにしておいたよ」とニヤニヤして立ち去ります。少年はキョトンですね。その手紙とは。↓。
古い方。↓。
そして大団円。ラストシーンは、少年が本を抱いて嬉しそうにします。ちょっと良い話っぽいですが、なんかおかしいと思いませんか?この話のタイトルは「古本と少女」です。ハッピーエンドは、本来なら「本」を媒介にして、「少年と少女の結びつき」になるべきではないでしょうか。それがどうよ。少女の気持ちをまったく思いやるでもなく、本が来た嬉しさに浸ってしまう、この少年に、作者の自閉的で人の思いやりがわからない独りよがりの偏愛が滲み出てしまうのです。少女に対する感謝のかけらもないのです。人としてどうなのでしょう。↓。
古い方。↓。
どうですか?面白かったですか。好評ならこの企画の第2弾も考えます。
さて話しは全然変わるのですが、前回の記事でも紹介したのですが、クリニックのお花柄のランプが壊れてしまったのです。それもコンセントに差し込む導線の根元が千切れてしまったので致命的です。これは開業当時から使ってる愛着のある僕のお気に入りのチャームだったのです。「形、あるものはいつか壊れるから仕方ない」と強がったものの、死んだ子の年を数えるように、買った店のホームページや似たような商品をネットで探しても、代わりのものはないのです。
そうしたら、昨日、帰りに受付のうかいさんがこう言うのです。「先生、ランプを杉山さんが直してくれたんですよ。ネットで修理の仕方、調べて、100均にソケット探しに行って、無いからって自分の家のそばで買ってきてくれて、導線を切って、新しいのをつけて、ランプがまたつくように一生懸命やってくれたんですよ!」。
本当だ、ソケットが新しくなってる!↓。
ランプもちゃんとつく!↓。
良かった~、超・嬉しい!↓。
おしまい。
私が初めて読んだつげ義春さんのマンガは、「おばけ煙突」というもので、不思議な読後感がありました。
貸本マンガも色々で、テレビともちょっと違う感じで、面白いですね。
欲しい中古の貸本マンガもあるんですが、星の数だけあるわけですから、もう手に入れるのは無理でしょう。
papaさん、こんにちは。
おばけ煙突、も単行本になった話ですね。エンディングが救いがなくて。
意外と、中野ブロードウェイのまんだらけは、掘り出し物がありますよ。
ネットと違って足で探さないといけないですけどね。
川原先生、こんにちは。
私は、先生が、最近初めてスタバに行ったと知り、少し驚きましたが、川原先生らしくて嬉しくなりました☺️
私は。ドトールの方が好き(笑)
シンシアさん、こんばんは。
スタバは、タリーズで注文の仕方が判らなかったから、きっとそれ以上だろうとふんで、入ったことがなかったです。敷居が高くて。でも店員の女子は親切で全然怖くなかったです。ちょっと慣れ慣れしいくらいでした。あれも教育か?
素敵な男性にはなれなれしいぐらい親切にするみたいですね、女性の私には、キツイ言い方してきますけどね。店員さん(笑)最近の若い女性は、挑発的な子が結構いますから。
シンシアねーさん、平和主義なのに売られた喧嘩を交わすのに大変です。
不器用ですから、私は。
シンシアさん、こんばんは。
昔は、アニメイトの店員が態度悪かったですよ、怖いくらい。
でも、1回、何かを尋ねたら、無茶苦茶親切に大量の情報をくれました。
あれは態度が悪いんじゃなくて、オタク独特のバリアだったのです(笑)
そこへ行くと昨今のアニメイトの店員は特色なくなりましたね。
普通です。HMVの店員となんらかわりませんよ。
川原先生、こんにちは。
今日は自分からきてみました。
これを一言でいうと
「男は鈍感だな~」っていう
ニュアンスですが、作者が男性と
いうこともあり、投影同一化?
しちゃったのかな?みたいな(笑)
本の持ち主は「含み」を持たせて
るんですが。
話の切り口を色んな視点からとらえると
「ネジ式」もちょっと背景にこれは!と
思ったのですが巻く側によっては…です。←不適切だったら消して下さい。
先生は教養が羨ましいです。自分は
よく抜けている言われます。
では、失礼します。
ネコスッキーさん、こんばんは。
つげ義春、詳しいですね。
もしネコスッキーさんがハンドルネーム通りに「猫が好き」なら、「やなぎ屋主人」がオススメです。ラストシーンがいいです。初めて読んでも思い出の様です。
ではまたコメントして下さいね。
先生コメントありがとうございます。
Amazonで注文してみました。文庫本なんですね。読めるかな、文庫本は読みきれない事が多くて…。トライしてみます。
ネコスッキーさん、こんばんは。
おー、それはそれは恐縮です。
ちくま文庫の、つげ義春コレクションかしら?
いくつかの短編を集めてるのでしょうね。
やなぎ屋主人は、つげ義春にしては長いですが、まぁ、短いですよ(笑)
ではまたね。
河原先生、こんにちは
先生は自分に生の転移
をしてくれたんですね。
悪いイメージで恐怖を
感じたら良いイメージ
気づけました。
ありがとうございます。
また来ます。
ネコスッキーさん、OHA!
昨日、自由ヶ丘のブックファーストに行ったら、みたことのない装丁の「つげ義春全集」の4巻と11巻だけみつけました。
全部そろってたら買ってしまってたかもしれません。
「悪いイメージで恐怖を感じたら良いイメージ気づけました」か、良かったです。
また来て下さいね。
最後に、今話題のアンジャッシュの児島風に言うなら、「川原だよ」。
はじめまして。
久しぶりに読み返して検索したらこのページがヒットしました。
貸本版というのをずっと知らなかったので衝撃でした!ありがとうございます。
>>少女の気持ちをまったく思いやるでもなく、本が来た嬉しさに浸ってしまう
私は40年ほど前に初めて読んだ時から今までずっと
「少女の優しさを知り経緯を理解し全てに感謝して本を抱きしめている」と解釈しておりましたし「恋の予感?」的なニュアンスも含まれているとすら思っておりましたが、拡大解釈すぎだったでしょうか?「本が来て嬉しい」だけではないと思うのですが…
コメントありがとうございました。
つげ義春は自身の年表で小学校の時に、運動会に出たくなくて、前日カッターで足の裏を切り、「運動会に参加しないことに成功した」と書いてるような人です。
比較的、新しい作品で「夏の思い出」というのがあって、そこではたまたま道で倒れてるご婦人のパンツを覗きみて、そうしたら警察官をみたらドキドキして、妻にチャリティーでマンガを出した時の感謝状を用意させて警察が来たらそれをみせろと言ったり、犬の足音がすると「警察犬か?」と慌てるのに、後日、街で日傘をさして腕をつった「その女性」の姿を見かけたら、「なつかしいなぁ」という感想で終わる漫画を描く人です。「古本と少女」も独りよがりな気がしたのでしたですが、どうでしょうか?