まつたけ〜日刊ムンク㉘

~前回までのあらすじ~

 

中1の頃から川原のそばにいるドールの名前は「ムンク」。この写真の解説は後でしますね。


テディベア作家さんにリペアをお願いし、生まれ変わってムンクが帰って来ました。

作家さんは川原の「守護」を祈るクマ「抱き熊スーティー」をくれました。ラスプーチンと命名しました。

和食屋で固めの会。

夢洲万博にも行きました。

ムンク・川原・ラスプーチンの成長譚「日刊ムンク」の第28弾。

 

🌀スランプ。

僕はスランプに陥ると、決まって“ある人形”と一緒に寝てた。それは、いつからか家にいたもので、誰が持ち帰ったのか家族の誰にも心当たりがない。きっと誰かがどこかで買ってきたか、もらったのだろうが、そのこと自体を忘れてしまったのだと思う。その人形は、僕が物心ついた頃にはまだ家になく、中学生の頃に家に来たのだろう。
昔の家族も、今の家族も、みんな口をそろえてこの人形を「気味が悪い」と言う。だから自然と、ずっと僕の部屋に置かれていた。もう数十年になる。
この人形には何か特別な力があるわけじゃない。ただ、僕の中学時代から、その後の人生までを全部見てきた、いわば「全部知っている存在」なのです。僕がマンガを読んでいた時も、書きかけのラブレターを机の引き出しに入れて投函出来ないままの時も、ホルンを吹いていた時も、深夜ラジオを聴いていた時も、友達が来て騒いでいた時も、親に隠れてウイスキーを飲んでた時も、部屋に貼ったアイドルのピンナップも、プロレスラーのポスターも、レコードの山も、髪型にこだわって鏡の前で小一時間も格闘してた僕の姿も、そして、喪服姿の僕も何度も見てきた。
歴代の彼女だって、心の友だって、一度きりの人だって、僕の部屋に来た人はみんな会っている。
最近はスランプで、久しぶりに人形を枕元に座らせて、一緒に寝た。すると夢を見た。
奥さんが株で大儲けして、「もう十分だから熟年離婚しよう」と言い出す夢だ。(ちなみに、奥さんは株なんて一切やらない。)
目が覚めて、僕は人形に言った。
「まさかとは思うけど……。お前は女だし、母がいなくなった今、お前が一番付き合いの長い女だけど、だからって嫉妬して変な夢を見させたんじゃないだろうな?」


いい年して人形に話しかけるのもどうかと思うけれど、半分寝ぼけた僕はわりと真剣に、「頼むよ、お前くらいはそういうのなしでいてくれよ」とお願いした。
そう言って寝返りを打つと、ベッドが揺れて、人形がほんの少し、コクリとうなずいたように見えた。

 

🌀松茸。

昨日は大谷翔平が10奪三振、3ホームランと大活躍。MVPのインタビューで、「みなさん、美味しいお酒を飲んで下さい」と言うものだから、その言葉にそそのかされて、お昼から寿司屋で飲む。

国産の松茸を特注する。

普段お店が使ってる中国産の松茸と比べてみる。

でも、大切なのは大きさではなく、松茸の香りです。切ると見事な香りです。

松茸焼きです。

贅沢に食べ尽くします。

こっちは土瓶蒸し。

土瓶蒸しを考えた人ってすごいですね。

ドールは、匂いで食事をするから、2人も満足しています。

ウニも大好物なので、箱で特注。

秋の味覚。今年は秋刀魚が豊作です。

これは、ホンシシヤモ。

僕らが、ししゃも、だと思ってるのは、樺太ししゃもと言って、学名はカペリンで、別物です。ししゃも豆知識。

フグの白子。

この日はしこたま飲んでしたたか酔ってしまい、帰り道、大岡山商店街でドリームケースをぶちまけてしまい、立ち往生していたら、「あら、先生」とどなたかが駆け寄って来て、ドールを拾ってくれて、ケースにしまうのを手伝ってくれました。ありがとうございます。ちゃんとお礼を言えませんでした。何しろ酔っ払ってたから、恩人が誰かも覚えてなくて。これをもし読んでたら名乗りあげて下さい。ちゃんとお礼しますから。

 

🌀映画「鬼滅の刃」。

遅ればせながら映画を観に行く。

六本木で夜8時からなのに、満員でした。

4Dで観たので、映画に合わせて、背中を叩かれたり、風が吹いて来たり、椅子が揺れたり、映画というよりアトラクションでした。

下は特典のポストカード。

鬼にも、鬼になる理由がある訳ですね。

 

🌀ジェラス・ガイ。

僕がジョン・レノンの歌で一番好きなのは「ジエラス・ガイ」。男にとってもっとも恥ずべき事は「ねたみ」や「そねみ」だと思っていた若い頃の僕にとって、ジョン・レノンが「僕はよっぽど嫉妬深い男なんだ」、と告白するメッセージにカルチャー・ショックを受けたものです。
ジョンが死んだとき僕は高校生。色んなミュージシャンが追悼メッセージを発信したが、ロキシー・ミュージックは「ジェラス・ガイ」をカバーした。

手塚治虫のエピソードも好き。
手塚治虫は「鉄腕アトム」やら「ジャングル大帝」やらで大人気。それを師と仰いで「トキワ荘」にマンガ家たちが集まった。赤塚不二夫や藤子不二雄、石森章太郎など。まだ名前が売れてない新人の一人・石森章太郎がマンガ雑誌の選考に通過した。すると、その晩、石森の部屋の扉をノックする音がして、開けたら手塚治虫が立っていた。誉めて貰えるのかな?と思ったら、ケチョンケチョンにけなされたという。落ち込んだ石森。
翌朝、また扉をノックする音。開けたら立っていたのは手塚治虫。「昨日はごめん。僕は君の才能に嫉妬したんだ」と謝りに来たのだという。
全国的な大人気のアニメ作品を連発してる手塚治虫にとって、新人漫画家の入賞なんて比較するものでもないはずなのに。誉めてあげれる余裕はあるはずなのに。それでも素直に嫉妬する手塚治虫。
手塚治虫でも嫉妬するなら、僕が他人に嫉妬するのは仕方のないことだ。それ以来、僕は嫉妬する自分を許している。

 

🌀不老不死。

フランスの精神科医コタールは、「永遠妄想」という概念を残している。――自分は死ねない体で、永遠に生き続けなければならない、という妄想だ。
同じくフランスの映画監督ジャン=リュック・ゴダールは、『勝手にしやがれ』の中で「人生最大の野心は、不老不死の薬を手に入れて、早死にすること。」と言わせている。
フランス人って、こういう死や永遠についての逆説的な発想が好きなんだろうか。

手塚治虫の『火の鳥』には、少し変わった話があります。
火の鳥の生き血は不老不死の薬になる――それを求めて権力者たちが火の鳥を追い回すのが、この作品の定番の構図です。
けれど、ある巻では、少し違う展開になる。ある男が殺生をしたことに怒った火の鳥は、なんと自らのくちばしで自分の体を切り、その血を「罰」としてその男に飲ませるんです。すると男は、死ぬことができなくなる。どんなに時が経っても、知り合いがみんな死んでも、自分だけが生き続ける。地球上のあらゆる生き物が滅びても、彼だけは存在し続ける。そして、地球が新しく生まれ変わるころには、もう体はなくなっている。けれど、「存在」そのものは残っていて、新しい生命が芽吹き、新しい人類が現れるのを、ずっと見守り続ける。やがて彼は、その新しい人間たちから「神」として崇められるようになる――そんな話でした。
不老不死というのは、祝福じゃなくて、ある意味「罰」なのかもしれませんね。

 

🌀人相。

最近、僕が凝ってるのは人相学。凶悪犯罪をする人の人相の特徴をプロファイリングしてるのです。
小中学生で、お金を盗んだりする子が将来、犯罪者になるか、一過性のものか、病気になるのか、が今の関心事だから。
人相といえば、小学校の「聖書」の時間に聞いたお話をひとつ。
ある画家が、絵の依頼を受けた。
それは、マリア様に抱かれた赤ん坊のイエス様と12人の弟子を一緒に描いてくれ、という注文。
画家は、街を歩いてモデルを探す。
最初に見つけたのが、可愛らしく純真な顔をした赤ん坊。イエス様のイメージにピッタリ。
それから、1人づつモデルを見つけ描き上げていく。
しかし、どうしても最後の1人、「裏切り者のユダ」だけが描けない。
悪どい顔の人間というのもそうそう世の中にはいないもので、何年も歳月が過ぎた。
ある日、街で「これだ!」という悪い人相の男を見つけ、モデルを引き受けてもらった。
やっと、完成するぞ。
絵を描かれてる途中、モデルの男は画家に向かってこう言った。
「私は、人生で絵のモデルをやるのは2回目なのです。
1回目は、赤ん坊の時だったので覚えていませんが」。
イエスのモデルをした赤ん坊が、大人になってユダのモデルをやった、というお話。
悪いことをすると顔が変わるから、みんなも気をつけよう~、という脅しだった。
人を外見で判断してはイケナイが、ある程度の人間性は顔に出る。
下は、40何才の秋、描いてもらった似顔絵。
せっかく、いい人相に描いてもらったのだから、恥じないように生きなければと心に誓った。

 

 

🌀めっきり冷たくなりました。

衣替えに「漂流教室」のスカジャンをおろす。

右袖に「ギャーッ」。

左袖には「ウワーツ」。

胸には、高松 翔(主人公)と川田 咲子(ヒロイン)。

 

次号へ続く。


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