30/Ⅲ.(土)2019 はれ、寒い 次々とひとが死ぬ。北尾も死ぬ。
ショーケンが死んだ。ショーケンファンの友人からその日の夜にラインが来た。
68才だって。あと1年で、ロックだったのに。
友人は、ショーケンファンで落ち込んでいたが、
僕は「傷だらけの天使」のオープニングでトマトを食べるシーンと、
モノマネタレントが「太陽にほえろ」の殉職シーンの物真似をするくらいしか印象にないので、
正直、あまりショックでもない。テンプターズもPYGもさほど聞かなかったし、知ってはいるけれど。
翌朝のワイドショーは、ショーケンの特集をやっていた。
テンプターズは、「スパイダーズの弟分」という紹介をされてて、「へ~そうなんだ」と思った。
始めはそうだったのかもしれないけど、人気が出過ぎてそういう設定が外れたのかも。
河合奈保子が西城秀樹の妹としてデビューしたことを皆が忘れてて、みたいなことと同じか。
テレビによると、ショーケンは「太陽にほえろ」の、マカロニ、という役を嫌って断ったらしいが、
主題歌をスパイダーズの井上孝之(井上堯之バンド)がやるならという条件で、
例の♪タラちゃ~ん♪という有名なメロディが出来て、出演になったという。
しかし、スパイダーズは、あまたいるGSの中でも、突出して、成功者を輩出しているな。
何しろ、リーダーの田辺昭知が、田辺エージェンシー社長である。田辺エージェンシーはタモリがいる事務所だ。
ギターが、ムッシュかまやつ。
日本でムッシュと言えば、かまやつひろし、だろう。吉田義男と答える人がいたら、よほどの虎キチだ。
ボーカルは、堺正章と井上順。この2人の説明はいらないだろう。
堺正章は、SMAPがキムタクを除いて、大晦日に密会してた焼肉店のオーナーだ。日本のコメディアン・堺駿二の息子だ。
井上順は、前田武彦の後の、夜ヒットの司会者。
オルガンの大野克夫は、昔はジュリーの「時の過ぎゆくままに」や「勝手にしやがれ」の作曲者として知られ、
今の人には、コナンの音楽を担当してる人と言えばわかってもらえるか。
プラス、先にあげた井上孝之がいて、ベースが加藤充だ。
って書くと、「誰?加藤?」ってなると思う。実際、この人だけちょっと無名だ。
しかし、僕はこの人のことをよく覚えてる。
それは、「素晴らしき仲間」というテレビ番組があり、
それは昔の仲間が年取って集まって若い頃のエピソードを語り合うゆったりしたタイトル通りの、
日曜の夜にやってた同窓会のような30分番組で、みたい訳でもないがよくみてた。
そのスパイダーズの回だ。多分、全員集合していたと思う。
田辺昭知は社長然としていて、マチャアキと順は個性がぶつかり過ぎて、ムッシュはマイペース、大野と井上は華がなく、
なんともしまらない回になりそうなのを救っていたのが、加藤だった。
と言っても、加藤の仕切りが上手と言うのではない。
スパイダーズのメンバーがそれぞれ、なんか照れて(?)、警戒して(?)お互いに喋りずらそうなのを、
それぞれが「加藤となら喋れる」みたいな感じで、加藤の6番勝負みたいになったのを覚えている。
決して目立つ存在ではないが、互いの個性が強すぎて本来なら空中分解してしまう集合を、つなぎ粉のようにまとめ上げたのが加藤の役割だったのかもしれない。
僕も加藤のように生きたいと思った。人間、そうありたいものである。
ところで、どうだ近頃は?
こないだクリニックを早く終わりにして参加した医者の集まりも、「なんとなくつまらなかった」と言ったら、
スタッフに、「誉めてもらえなかったんですか?」と図星をつかれた。
僕はスパイダーズでたとえるなら、いつしかエラくなっていて、田辺やムッシュになってたり、
面白い人と思われたいと、マチャアキ・順になったり、或は、玄人好みの井上や大野として賞賛されたいと、
ガツガツしていたのかもしれないのだと思った。
僕は中学の頃、あまり友達のいない5人でグループを組んで活動していて、この関係は高校・大学そして僕が結婚するまで続いた。
毎年、夏休みに旅行に行ったりして、ある夏は地元の愚連隊にからまれ、うちの暴力担当みたいな砦がヌンチャクでのされて青ざめた。
ケンカでヌンチャクを使うバカがこの世にいるとは思わなかったからだ。
ま、そんな話はどうでもいいとして、その5人組は僕も含めて、皆、個性が強すぎて徒党を組めず群れから離れた子羊が、
東京砂漠で生き抜くために、身を寄せ合った寄り合いで、決して、「意気投合!」みたいな仲良しグループじゃなかった。
AとBは口きかないし、CとDは憎み合っていた。
しかし、僕はAともBともCともDとも、1対1で喋れたから僕がいればグループがまとまった。
それが僕のレーゾン・デートル、スパイダーズで言う、加藤みたいな役割だった。僕はつなぎ粉だった。
そう思い出させてくれるショーケンの死でした。…ショーケン、全然、関係ないけど。
次回予告
もうすぐ東工大へ恒例のお花見撮影だ。
去年は、高木さん、と行った。「今年はどうしよう?」と言ったら、スタッフ一同、口を揃えて、
「高木さんしかいないでしょ(笑)」と言うのである。
…そんな、勝手に噂になっても、高木さんに失礼だろ、と中1気分で照れてみる。
BGM. 武田久美子「噂になってもいい」