タイトルから思いつく過去の記事を3連続で!
(1)福岡の学会へ行く、グルメ・リポート
27~28/Ⅶ.(日~月) 2014 はれ
知り合いのSちゃんは、風俗方面で大活躍中だ。
先日、東スポの男セン・コーナーにもSちゃんの記事が出てたから、本人にそれを教えたら、
「そんなん見てん?こっちの方が写り良いよ」と、その方面の専門誌を見せてくれた。
そこでは、彼女が表紙と何ページもの巻頭グラビアを飾っていた。まるで、トップ・アイドル級の扱いだ。
<すごいね!>と僕が感心すると、「でしょ?」と彼女は得意気だった。
彼女のプロフィールに出身地・福岡と書いてあったのが、僕の頭の隅に残っていた。
それが今回の序章。
2014年の抱負は、「攻めること」にした。
だから、学会もバンバン行くし、学会発表やシンポジストも断らないで受けることにした。
その一環としての、福岡の学会である。
ここ数年で、メーカーと医者の関係は、きわめてクリーンになって、接待のようなものが一切禁止となった。
しかし、今回のような時は、困るな。
福岡のような勝手を知らない街で、1人で夜を過ごすのは、どこへ行ったら良いかも判らず、迷い子のようだ。
接待じゃなくても良いから、割り勘でどこかへ連れてってくれれば良いのに。
でも、待てよ、知らない医者と一緒に行動するのも疲れそうだな。前言撤回。
という訳で、福岡を前もってリサーチしないといけない。
コーディネートしてくれる人が、いくつか有名店をリスト・アップしてくれた。
この時点で判ったのは、博多は、日曜の夜は休みの店が多い、ということだ。
大学時代の同級生の小田くんが北九州の出身なので聞いてみた。
彼はとても親切で、色々な情報を、僕のスケジュールと合わせて、何度もメールでやりとりしてくれた。
ありがとう。小田くん。感謝します。
でも、結局は自分でネットで確認して予約しないといけないから、それが面倒なのだ。
フラッと行って良さそうなところに入る手もあるが、福岡、日曜の夜、休みが多い、って言うし。
困ったものだ。
そこで序章で、紹介した、Sちゃんを思い出し、相談してみた。
Sちゃんは、事もなげに、「私の福岡の友達に案内させようか?」と言った。
Sちゃんの友達は博多のキャバクラに勤めてるらしい。
Sちゃんは、事もなげに、「学会が終ったら、待ち合せて、同伴して、その店で飲めば良い」と言った。
僕がぽかんとしていると、「キャバクラとか、行かんの?」とSちゃん。
なまりは伝染るもので、<行かん>と答えた。
「フー…」とこれみよがしに大きな溜め息をついたSちゃんは、何かを考えている。
「日曜は休みだ」と独り言を言い、急に、「よし、直接、頼もう」と友達に電話をして交渉を始めた。
電話口の様子では、相手はその日は、昼間にバーベキューの用事があるらしい。
Sちゃんは、「でも、夜は空いてるっしょ?」と交渉をすすめて、夜の8時からならOKということになった。
<僕はその友達と2人で逢うの?>と判りきったことを念のために確認した。
「大丈夫、私の幼馴染だから」とSちゃん。
<いや、ちょっと緊張するかもしれないんですが>と僕。
「大丈夫、あの子とは腐れ縁だから」と微笑むSちゃん。
<何だかよく判らないけど、ま、腐れ縁なら、大丈夫か>と僕は納得させられた。
そうして僕は、Sちゃんの幼馴染に博多のガイドをしてもらうことになった。
しかし、その日の幼馴染は、まったくのオフの日なので、<お礼とかしなくていいの?>と聞いてみた。
「う~ん」とSちゃんは少し考え込んでいた。
<1万円くらい払うか?>と僕が言うと、「高い!」と即答&怒声。
<じゃ、東京銘菓のひよこ、でも持って行こうか>と僕がユーモアで返すと、Sちゃんの表情はにわかに曇った。
「あんね~、ひよこ、って福岡のお菓子だって知っとう?」とSちゃん。
Sちゃんが言うには、ひよこ、は東京オリンピックの時に全国のお菓子を紹介するために東京に集められた物らしい。
皆さん、知ってました?僕は知らなかった。
<でもさ、東京駅には東京駅限定の、塩ひよこ、があるのはどうなの?>と僕。
「別に良いんじゃない?企業努力だし」とSちゃん。
塩ひよこ、にはまるで興味がないようだった。下が、Sちゃんを怒らせた、ひよこ。↓。
で、結局、お礼は、幼馴染が連れてってくれた店で一緒に飲み食いした分をご馳走すれば良い、ということになった。
僕は、<福岡の人って、ライオンズのこと、今でも好きなの?>と尋ねてみた。
Sちゃんは、にべもなく、「あ~、それ、おじさん、っしょ。西鉄ね。今は、ホークス」。
僕はプロ野球は昭和の時代で止まってるからな。
<そうだったね、今は、福岡ダイエーか>の僕の発言を、「ソフトバンクね」と憐れな者を見るような目で訂正した。
Sちゃんは、店は幼馴染に任せて、1人で時間が余ったら呼子(よぶこ)でイカを食べると良い、と教えてくれた。
呼子のイカは透明で、それを知ってるから、東京のどんな高級な店でもイカは食べれない、とSちゃんは言った。
わかった、イカ、食べてくるよ。
<ところで、普段の僕はレディにこんな失礼な質問は決してしないんだけれどね、参考までに、Sちゃん、いくつ?>。
心の準備をしておきたいじゃん。すると、Sちゃんは、「ん?にじゅうさん」と答えた。
…ってことは、幼馴染も23才か。
「俺はまだ本気出してないだけ」の大黒シズオの編集担当の宇波さんと同い年かぁ。大丈夫かな?
そして、僕は日曜日、飛行機に乗り遅れることもなく、無事に福岡の学会に参加した。
そして、幼馴染との待ち合わせまでの間、ホテルの部屋で仮眠した。
きっと、疲れが溜まっていたからだろう、短い質の悪い睡眠で、悪夢と金縛りとこむら返りの三重苦を体験した。
いてぇーよ!
そんなこんなしてるうちに、約束の時間になった。
予定通り、幼馴染と僕は、待ち合わせ場所で落ち合って、タクシーに乗って、予約しておいてくれた店に向かう。
タクシーの運転手もその店の名前を知らなかったから、隠れた名店みたいだ。
ちなみに、コーディネートしてくれた人のリストにも入っていなかった。
中心部と逆にあるらしい。「おのころ」という店。
幼馴染は朝の仕事と夜の仕事を掛け持ちしていて、明日(月)も朝9時から仕事らしい。
今日は休みで、海に行き、バーベキューをしていたと、スマホで写真を見せてくれた。
<なんだか、休みの日に悪いね>と僕が言うと、「Sちゃんの頼みだから」と手刀を作って、横に振った。
幼馴染が言うには、店に来るお医者さん達に相談したら、ここがいいだろう、ということになったらしい。
彼女もここに来たのは、2回目らしい。
座敷もあるが、カウンターの方が作業がみれて楽しい。
いけすが2つあり、裏のいけすの様子はモニターに映っている。
まずは、お刺身。呼子のイカが早速、出てきた。↓。
ゲソまで透明でゲソ。コリコリでゲソ。↓。
イカの頭部は後で焼いて食べます。↓。
白身は、くえ。そして、まぐろ、いわし。↓。
くえ、は冬の魚だと思っていたが、1年中海底にいるらしい。
台風があると、かきまぜられて、上に上がってくるのを捕まえるらしい。だから、夏でも食べられる。
下が、くえの顔。おそろしい顔ですね。↓。
次は、国東半島の天然物の岩ガキ。↓。
国東半島は、九州の地図の四国側のコブのあたりだそうだ。
幼馴染がスマホを駆使して、日本地図を出して、説明してくれた。
幼馴染はすごくスマホを使いこなす。
ホークスは強いのかと聞くと、パ・リーグの順位表や今日の試合結果を見る。ちなみに、勝ってた。
博多のご当地アイドルの話になると、橋本環奈、の画像を。
ちゃわんむし、の話から、僕が<鹿児島に、ちゃわんむしの民謡があるね>と言うと店の人も誰も知らなかった。
すると、彼女がスマホで調べ、「あった!」と言って、民謡「ちゃわんむし」を流して聞かせた。
店の人も手を止めて聞き入った。
前に東スポの「こんな女の子は落とせる」という記事で、「呑み会で知らない話題が出ると、すぐスマホで調べる子」
というのがあって、僕は<そんな奴ぁ、いねぇよ!>と1人で東スポにつっこんでいたものだが、いた。
ま、落とさない、が。
彼女は、途中でバッグから、充電器のようなものを取り出し、「スマホってすぐ切れちゃうんだよね」と言って接続した。
<そんなことばっかりやってるから、すぐバッテリーあがるんだよ>と思ったが、口には出さなかった。
ちなみに、そんな彼女でも、HKT48の劇場のチケットはとれないらしい。
「ホークスはとれても、HKTは無理!」、って言ってた。
冬瓜(とうがん)は鯨と一緒に食べるらしい。↓。
冬瓜は、その名前から、冬の物かと思ったら、夏の瓜らしい。
皮が硬くモチがいいらしく、冬までモツ、という例えから、冬瓜というそうだ。
幼馴染は、例によって、スマホで、冬瓜の画像を出して、「こんなに大きいんだよ」と見せてくれた。
厚意は嬉しいが、それ実物大じゃないし。
穴子は、川原3大好物の1つで、穴子がいる地盤と同じ色をしているらしい。
これは柔らかい砂のような地盤にいた穴子。
穴子は恐ろしい牙を持っていて、店主曰く、「よく噛む」そうだ。↓。
魚ばかりじゃなく、お肉もあります。佐賀牛とかもあるけど、地鶏を食べた。↓。
この店には、よく横綱・白鵬も訪れるらしく、その時に、かめしずく、という焼酎を呑むらしい。
マネして、呑んでみた。↓。
幼馴染が、「お酒は何が好き?」と聞くから、<日本酒>と答えると、店の女の子が「だっさい、入りましたよ」と言った。
だっさい、は山口のお酒だが、珍しい酒であまり店にも入ってこないらしい。
店の女の子がこれが最後の1本ですよ、とすすめるので呑むことにした。↓。
女の子がお酒を注いでる時に、<これ、エヴァンゲリオンのミサトさんが呑んでた銘柄だね>と僕が言うと、店の女の子は
手を止め、「本当ですか?」とマジな口調で食いついてきた。
<いや、わかんない。勘違いかも>と僕が答えた時には、幼馴染は、もうへべれけで、スマホで調べてくれたりしなかった。
だっさい、は3杯呑んだ。↓。
しめは、小さなおにぎり。一口で食べてしまい、写メ、撮り忘れちゃった。
すると、店の女の子が、「小学生の頃、おにぎりコンクールで優勝したらしいですよ」とこっそり教えてくれた。
僕が笑うと、その子も、「おかしいですよね、おにぎりコンクール、なんて」と笑った。
<だけど、よく考えたら、その審査員に見る目があった、ってことだね>と僕が店主の方をチラリと見てそう言うと、
その子も店主の方を見て、「あっ!そうですね」と、真顔になった。
店主は、割と若い人で、博多華丸にちょっと顔が似てる愛想の良い人だった。
8月になると、8月にだけとれる、メイジダイ、という珍しい魚が入るらしい。
黒潮と何かがぶつかって、2週間だけ大量に浮かび上がり、それを漁師がいっせいにとるらしい。
店主が言うには、メイジダイ、は活きてないと食べれないらしい。
メイジダイ、だけを食べに東京から来る人もいるらしい。
僕も8月に来ようかな、って言うと、店主は、「是非」と頭を下げた。
気がつくと、幼馴染はもうベロンベロンで、明日は9時から仕事だと言うので、タクシーを呼んでお開きにした。↓。
タクシーの中で、幼馴染は、「Sちゃんとはしばらくあってないなぁ。カノジョ、元気ですか?」と聞くから、
<大活躍だよ>と答えておいた。
幼馴染は、「川原さんはどこの生まれ?」と聞くから、<茅ヶ崎、知らないか、ま、東京みたいなもの>と答える。
「あぁ、サザン」、そんな会話の後、「私、福岡から外に出たことないんですよ」と幼馴染はポツリと言った。
そんな事を言われても答えようがないな、と思ってると、幼馴染は運転手に道を教え始めたから、彼女の家が近づいた。
僕は、<今日はありがとう。本当に8月に、メイジダイ、食べに来ようかな>と礼を言った。
すると幼馴染は、「喜んでもらえて良かったです。メイジダイ、は、Sちゃんと一緒に来たら?」と屈託もなく言った。
そういう訳にもいかないだろう。倫理的に。このブログには、中高生の読者もいるし。
幼馴染は車を降りると、見えなくなるまで手を振っていた。
僕は後部座席に後ろ向きに座り、見えなくなるまで、それを見ていた。
僕はホテルに着くと、バーに寄って、コニャックを2杯呑んだ。清志郎がCMをやってた、ヘネシー、だ。XO。
そして、拓郎がこないだのコンサートで喋っていた、モヒート、も2杯呑み、部屋に帰って寝た。
翌日は、Sちゃんに頼まれたお土産を買いに天神の岩田屋に「北島の丸ぼうろ」を買いに行く。
僕はすっかり寝坊して、ホテルの朝食バイキングを食べ損ねたので、どこかでお昼をすませよう。
ホテルの案内の人にどこがいいか聞いてみた。
すると、ホテルの案内の人は、「北島の丸ぼうろ、は佐賀のお菓子ですよ」と首をひねった。
それは、いいんだ、と僕は受け流し、おすすめの店を聞いた。
すると、岩田屋の先に「ちかえ」という料亭があり、そこのランチの定食がおすすめだと言う。
「私も1人でよく行きますよ。いけすがあって、カウンターがいけすを囲ってて。そこのランチは1300円です。
私は東京なら3000円、大阪なら2500円かな、と思いながら食べます」と親切に教えてくれた。
下が、「ちかえ」。難しい漢字です。↓。
入り口のいけす。↓。
ランチの定食は、「ご飯」と「そば」がありますが、僕は「そば」にしました。↓。
「ちかえ」は料亭だが、お土産もあり、そこの明太子が人気らしい。隣にお土産専用の店がありました。
家庭用の食べやすくカットされたものや、パスタなどに便利なチューブ入りの物もあった。
そのチューブ入り明太子は、ランチを食べた時、他の調味料と一緒に、自由に使えるように並んでいた。
福岡の2日間はお天気に恵まれて、暑さも東京ほどの猛暑じゃなかった。
福岡は街と空港がすごく近い。
空港に早く着いたので、乗る飛行機の時間を早めてもらった。
福岡空港で、ひよこ、の看板を見かけた。↓。
「ひよこ、は福岡!」と、Sちゃんの幻聴が耳の中で怒ってる。
東京にいれば何でも食べれると思っていたが、浅はかだった。
福岡の食文化はやみつきになりそうだ。
最後になりましたが、福岡の学会およびグルメ・リポートの僕の服装は、ヒスのピンクのカモフラ柄の上下です。↓。
本来、敵の目を誤魔化す為の迷彩柄なのに、ど派手なピンクで逆に目立つという二律背反。
はにかみ屋なのか?目立ちたがり屋なのか?はっきりしろ!、と言いたいですね。
アンビバレントなこの世界には、お似合いですね。
BGM. ゾンビーズ「ふたりのシーズン」
(2)新たなる不安の影+ずっとある悩みの種
16/Ⅷ.(土)2014 今日から夏休み明け
「あなた、疲れてるわね」とSちゃんは言う。
Sちゃんによると、僕は「年齢不詳」だそうで、それは見た目のファッションや感性ではなく、声、なんだって。
僕の声は特徴的らしく、彼女曰くそれが「年齢不詳」にしてる原因らしい。
Sちゃんによると、最近の僕の声は「低い」らしい。「よほど疲れてるのね」と言う。
ま、確かに忙しいことは忙しいし、「殺害予告」のコメントは来るし、採用面接も控えているし。
しかし、いつから僕はこんなにSちゃんと話すようになったのだろう。
福岡の学会で困っていた時に、Sちゃんが福岡出身だということを思い出し、相談したのがきっかけと言えばきっかけだが。
彼女は、風俗方面で大活躍中だが、結構、義理堅くお盆やおばあちゃんの何回忌には福岡にとんぼ返りしている。
Sちゃんはもうすぐ誕生日で、東京の友人が祝ってくれるから、このお盆は福岡に戻ってすぐ帰ってくる強行軍だそうだ。
福岡の学会の時は、ガイド役に幼馴染を、ブッキングしてくれたし。
何かお礼に誕生日祝いでも、あげようかな。
しかし、僕は昔から、女子が喜ぶような贈り物をしたことがなく、そういうセンスはゼロに等しい。
一方、Sちゃんも超売れっ子だからたくさんプレゼントを貰うだろうし。
趣味じゃない美少女フィギュアとかを貰っても、始末に困るだろうし。
こうゆう時は、形に残らない物をあげると良いと、誰かに教えてもらったことがある。
しかし、食べ物も好き嫌いあるだろうし。
お米でもやるか。でも、重いか(重量的にね)。じゃ、お米券、にするか。金券は、重いか(気持ち的にね)。
そんなことを僕は悩んでいた。こんな言い方も不道徳だが、少し淡い恋心に似ていると思った。
前の病院で一緒だった心理のAちゃんはいつも困ると相談に乗ってくれるのだが、今回ばかりは、ノーコメントだった。
そりゃそうだ。コメントのしようもあるまい。それとも、呆れられたのかも。
こうなったら、直接、本人に聞くしかない。<何かプレゼントいる?>。
そうしたら、Sちゃんの冒頭の発言につながるのだ。「あなた、疲れてるわね」に。
しばらく、Sちゃんは考えて、何かを思いついて、「でも、やっぱり…」って言いよどんで。
僕が黙ってると、彼女は、「土曜日、仕事、何時まで?」と聞いてきた。
<まぁ、その日によるけど、9時から10時くらいかな>と僕が答える。
「お酒は呑めるの?」<平日は呑まないけどね>「キャバクラとか行く?」<行かない。寿司屋とか焼鳥>と僕。
「あぁ、値段の書いてない寿司屋っしょ?回るんじゃなくって」と、Sちゃん。
すると、Sちゃんは、「だったら、私の誕生会に一緒に来てよ。そこの呑み代、私の分と二人分、払ってくれれば」と提案。
僕が渋い顔をしていると、Sちゃんは、「あっ、無理なら、全然。気にしないで。断ってくれて良いから」と言う。
ここで回想シーン。
僕が大学の5年生の頃、仲の良い女の子がいた。病院実習で1年間一緒にローテーションしてたから仲良くなる。
それをきっかけに付き合うカップルもよくいる。結婚してるケースも珍しくない。
僕らはつきあってはいなかったが、(つきあう、の定義がわからなかったから)、けれど、はたから見てもお似合いだった。
それが、国家試験直前の6年になって、その子は、僕らの班の別の男子と交際した。
正直、それはちょっと意表をつかれた。クラスの皆もそう思ったと思う。でも、誰も口にしなかった。
変な空気だった。僕は告白もしてないのにフラれていて、つきあってもないのに捨てられていた。
皆、遠慮して、その周辺のことは、一切、僕の前では、禁句になった。
その気遣いが、傷口にまた塩を塗りこむみたいに、痛くてね。
そんな時、レレちゃんが、(今回の人材募集の会社も彼女が紹介してくれた)僕をホームパーティーに誘ってくれた。
レレちゃんは、広尾とか麻布とか、あまり僕が行かない方面に、自宅を持っていた。
彼女は、小・中・高と一環の名門お嬢さん学校の出身で、だからそういう友達が集まる会だった。
僕の記憶では、うちの大学からは僕しか呼ばれていなかった気がする。
外人とかもいて、留学生って言うんですか?、白人だった。
来てる人は皆、着てる服装から違ってて。上品でさ。で、優しいんだ、そういう人達って。
隅っこでオドオドしてる僕に声をかけてきてくれたりして。
あまりの場違い感に、途中から記憶喪失です。
1つだけ覚えてるのは、ハンサムな男の子が「今日のパーティーのために、肉を焼いてきた」って差し出したシーンで、
僕は、単純に、<男が料理するんだ?>ってビックリしたことと、その肉がメチャクチャ美味しかったことだ。
まだ、「ビストロ・スマップ」はおろか、SMAPさえ結成されてない時代にですよ。
レレちゃんは、傷心の僕を励ますためにホームパーティーに呼んでくれて、「手ぶらでくれば良い」と言ったから、
本当に手ぶらで行ったら後悔したっけ。
ここで回想シーン、終了。
で、話をSちゃんに戻すが、まさにその時のレレちゃんのホームパーティーの招待のされ方と酷似してるのだ。
僕は、Sちゃんに、<実は大学生の時にね~>と上に書いたような話を打ち明け、<だから気が進まない>、と遠慮した。
Sちゃんは、「全然、気にしないで。気を遣わなくて良い人達だから」とその日の参加人物や行く場所を教えてくれた。
その日は、神宮で花火大会があり、女の子達は全員浴衣で参加する。
皆、似たような事を考えるらしく、その日の着付けは、予約がいっぱいで、だから会が始まるのも遅くになるそうだ。
それで、さっき、僕の外来が終る時間を聞いた訳で、むしろ、それで丁度良いくらいだと言う。
Sちゃんの友達は歌舞伎町のキャバクラで働いている女の子らしい。
そのメンバーで、行きつけの歌舞伎町のホストクラブに行って、VIPルームでシャンパンをあけるんだって。
話を聞いてる最中に僕がドン引きしてるのが、伝わったらしく、「大丈夫、シャンパンはもう用意してくれてあるから」と言う。
それも大事だが、それ以外にも色んな問題があり過ぎて、何を質問していいかが判らない。
本当に勉強の出来ない子って、質問すら出来ない、ってのとどこか通じるな。
<俺ね、初対面の人だと対人恐怖になるんだよ。喋れないかも>に、「精神科医が何、言ってるの」と笑う。
さらに「そこは皆、プロだから、大丈夫。対人恐怖を克服しよう!」だって。とほほ。
<そもそもホストクラブって男が入れるの?>「ダメじゃない?でも、私と一緒なら入れるから。事前に待ち合わせね」。
<ドレスコードとかあるの?>「女の子は浴衣デーだけど、あなたはそのままで大丈夫。TシャツでOK」。
さすがに、いくらかかるの?、とは聞けなかった。バースデーパーティーにお金の話をするのは無粋だし。
そもそも、これはSちゃんが、僕が元気なさそうだから、誘ってくれた好意だし。
本当の内輪の会みたいだし。
やっぱ、レレちゃんのホームパーティー・パターンだよ。その水商売バージョン。
まぁ、現実問題、いくらお金がいるのか、カードを使って良いのか、プレゼントは別にいるのか、などが皆目見当つかない。
そこで蛇の道は蛇、昔、その方面に詳しかったFのクリニックに表敬訪問する。
僕がFのクリニックに着くと、もう診療は終っていて、受付の二人の女の子とFが待合室のソファに座って待っていた。
僕は女の子にアルタでお土産に買ったクロワッサン鯛焼きを一匹づつ差し入れて、早々と二人を追い帰し、Fに相談。
Fは「う~ん、多分、騙されてはないと思う。でも取り巻きが怖いな」と分析し、「俺なら行かないな」と結論づけた。
現金は持っておいた方がいいよ。クレジット・カードは使っちゃだめ。花くらい用意したら。
「かすみ草だけ、とか、はよしたほうが良いよ。普通にバラとかね」だって。
<俺、現金、持ってないんだけど、貸して>って言うと、「君、ATM知らないの?」って言われた。
<使ったことない。オタクの間では、ATMってアニメイト・タイトー・まんだらけ、だって知ってる?>の返しは、スルーされた。
まぁ、でも、ありがとう。何か参考になったよ。
しかし、Fだったら、行かないのかぁ。
それでも、俺は行くけどね。
我ながら勇気があると思う。
戦場で生き残るのは必ずしも勇敢な兵士ではない、という言葉が頭をかすめる。
そこで心配になって、ヨット部で一緒だった、よく女の子にモテてた巴くんにも相談してみた。
巴くんは、「えーっ、Fは行かないって?僕は行くなぁ、行かないと始まらないよね」と心強い発言。
さらに巴くんは突っ込んだアドヴァイスをくれる。
「プレゼントは外れる可能性もあるので、別の日に時間を作ってもらって、一緒に買いに行くかな」だって。
お金は、Fと同じ意見で、カードは持っていかないって。
「お金は状況をみながらだけど、脈なしでも会費、女の子の分、車代で10万くらいかなぁ。
ホストクラブの飲食まで入れたら20万くらい?それ以上は絶対出さない。
でも聞いた話では、どうにかしようとする時は、同伴から店内、アフターまでして金使うみたいだよ~。
金かかるよね~。頑張って下さい。結果、教えてね」だって、ちょっと勘違いしてるみたい。
別に「どうにかしよう」なんて思ってない訳だし。
Sちゃんは、僕に一定の距離をおいている。彼女は悩み事を僕には愚痴らない。僕に喋ると金銭が生じると思ってるのかな?
それとも俺の腕を信用してないのかな?(苦笑)
彼女は悩み事は、キャバクラやホストクラブで喋って発散するそうだ。
「一々始めから相手に説明しないといけないから自分の整理になるのよ」、と笑う。
ちなみにSちゃんって、サド、です。職業柄のキャラ設定はね。
初対面で僕は彼女と一言二言交わして、「あなた、Mじゃないのね!?」と言われた。
確かに人間を「S」と「M」で分ける物差しが存在して通用するのは判る。
しかし、初対面の人に対して、「あなた、Mじゃないのね!?」という挨拶が成立する空間があることを僕は知らなかった。
結構、長く生きてきたつもりだが、まだまだ知らないことばかりだ。
でも、良く考えたら、Sちゃんの仕事は客を選ばないから偉いな。
どっかの地方では、「疲れる」ことを「えらい」と言うらしいな。
「疲れた~」の意味で、「えらいわ~」って使うらしい。
本来、立派という意味で用いられる「えらい」が「しんどい」って意味と同じ言葉で表現されるのは興味深い。
「えらいね」はひとつで両方をまかなえるから便利だね。
取り敢えず、髪の毛をスイカ模様にしてみました。今日から仕事だし、夏だし。
「金くれ。」Tシャツはタイムリーでしょう?。↓。
後ろから見ると、こんな感じ。緑と黒が見分けづらいですかね。緑はスイカの皮で、黒はスイカの種ね。↓。
爪は、Sちゃんの誕生祝いをイメージしてケーキっぽく。デコレーション・ケーキじゃなく、カップ・ケーキですね。↓。
しかし、人はどうやったら、綺麗に生きれるのかな。
BGM. RCサクセション「よそ者」
(3)恋は盲目
16~17/Ⅷ.(土)~(日) 2014 猛暑
いや~歌舞伎町…怖いね。
ホストクラブ行ってきましたよ。
今回は、前回の記事の続きなので、読んでない人には何のことだか判からないですね。
実は、前回の記事は、すこぶる評判が悪かったんです。特に女子から。
元々、僕は優等生キャラで売ってる訳ではないから、あまり気にしてはいないんだけれど。
だけど、万一、殺害された時、「こんなことをブログに書いてる医者だから、当然だよね」と世間に中傷されるのは嫌だ。
心外だなぁ、ブログの記事だけで、人間性を評価されるなんて。毎日、遅くまで、一生懸命、働いてるのになぁ。
ま、言い訳しててもしょうがない。
わかる人にはわかってもらえるはずさ。そう信じて書き進めよう。これまで、そうやって生きてきたのだし。
その日は、風俗方面で大活躍中のSちゃんという女の子(23歳)から彼女のバースディ・パーティーに誘われたのです。
場所は歌舞伎町のホストクラブ。仲間だけで祝う会だと言う。
ホストクラブに男は入れないらしいが、今日の主役のSちゃんと一緒なら入れるので、歌舞伎町のコンビニで待ち合わせ。
さすが、歌舞伎町、コンビニの雑誌コーナーに、「ホストマガジン」なんて雑誌がありましたよ。
大岡山のコンビニでは、まず見ませんね。
この一冊で全国優良ホストクラブ情報を完全網羅!らしい。
9月号は、上半期ナンバーワン大特集だって、うひょ~!
その日のホストクラブは浴衣デー。従業員ホストは全員浴衣(将棋柄とか金魚柄など)で、お客も浴衣ならドリンク只。
僕は、浴衣を持ってないので、アメ横で買った海軍のセーラー服に水兵帽という「水兵さん」の格好で行った。
Sちゃんは着付けに時間がかかり、僕は歌舞伎町のコンビニで待機する。
しかし、コンビニに出入りする客層が怖いし、僕をジロジロみるから、近くの交番の前で待つ。
すると、交番に「あの店で、ボッタくられた!」と怒鳴り込んでくる強面のお兄さんたちが多数。
歌舞伎町の交番は、ボッタくりバーの苦情処理所にもなっていた。
おまわりさんが、「店に表示してる限り、金額に関しては、こちらは何も言えない」と歌舞伎町ルールを一々、説明していた。
僕は、Sちゃんへの誕生日プレゼント代わりに、Sちゃんと自分の分の代金をおごるという約束をしていた。
なんか、これから起こる事を暗示してるかのような光景だ。
それにしても、Sちゃん、早く来ないかな。怖いな。帰りたくなってきたよ。
待つこと20分。浴衣姿のSちゃんが現れて、水兵さんの僕が手を振ると、「すぐ判った」と彼女は笑いながら駆け寄って来た。
履きなれない下駄で走るから、左足の親指を切っちゃって。圧迫止血とかしてやったよ。歌舞伎町の真ん中で救急処置。
この会は、Sちゃんの誕生日に開かれたものだが、参加者は1人の女の子(ホスト好き)を除けば残りは皆、ホスト。
つまり、店側の人じゃん。Sちゃんは友達が少ない。そういうところ嫌いじゃないです。
Sちゃんが僕を招待してくれた理由のきっかけは僕が元気がなかったからだが、本当の深層心理は参加してみて判った。
「自分にはこんな変わった友人がいる!」という自慢を皆にしたかったようだ。
Sちゃんは、実際、僕をその様に紹介した。
「髪の毛、スイカなんだよ~」
「見て見て、爪、ケーキなんだよ。私の誕生日祝いだからなんだよ~」
「この人、いくつに見える~?」
「本当の職業、言って良い?」などと無邪気にはしゃぐ姿は少女のままだ。
あるホストから、「自分も~昔~、バンドやってたし~、まったく同じ~髪色にしたことあるし~、超~懐かしい~!」って、
20代前半の奴に先輩風吹かされるみたいに言われる、50代前半の男の哀愁って、皆さん、判る?
あるホストは、僕に「年齢、本気に当てに行っちゃっても良いですか?」と挑んできた。
<いやいや、そんなに面白いオチとか、ないから>、と俺。
そのホストは、俺のことを上から下まで何度も見て、クイズ番組の回答者みたいな声で「37!」と答えた。
Sちゃんは、大喜び。「やった~!年齢不詳~!」って大騒ぎ。
ちなみに僕は、昭和37年生まれの52。
だから、<(37は)惜しい!>って答えた。
ホストは、「惜しい?じゃ、38?39?36!」とピンそば狙い。
Sちゃんも一緒に混乱して、「あれ、そんな年だったっけ??」と言っている。かなり酔ってる。
僕は、<今、37、って言ったでしょう?それが、惜しいの>とヒントをあげるがホストは「47?えっ、74?」とトンチンカン。
案外、それ程、アドリブの適応力が必要とされない職場なのかもしれないな。
その点では、我々の方が質の高い連想力を要求されるな。
ちなみに、「74」ってどんだけジジイだよ。ジョン・レノンの年だよ、もし生きてたらね。
しかし、年齢の話で驚いたのは、Sちゃんの本当の年齢だ。
ホストは、口々に、「おめでとう~、ついに大台ですね」とSちゃんをいじって、祝っていた。
Sちゃん、今日が、実は30歳のバースデーパーティーだったのです。
僕は、<Sちゃん、23歳って言ってなかったっけ?>。「それは、営業用よ、言ってなかったっけ?」と、Sちゃん。
<じゃ、何?福岡をガイドしてくれた幼馴染は?>、「あの子も、今度、30」。
ガチョーン!!
俺の緊張とときめきの博多の夜を返せ!
人のこと「年齢不詳」とか言っといて、そっちは「年齢詐称」じゃないか。7つもサバ読んどいて。
Sちゃんには、この店にお気に入りのホストがいる。
今日のバースディパーティーは、VIP席で、そのホストを完全指名し、常に脇に置いていた。
そのホストから名刺を頂いて驚いた。そこには、「S」と書いてあった。
「S」は、男でも女でもおかしくない名前だ。
Sちゃんの「S」は源氏名だが、その由来がこのホストの源氏名から来てたとは、ホストから名刺を頂くまで知らなかった。
どんだけ「おそろ」にしてんだよ。
バウンダリーなさすぎだろ。
中2かっ!(タカ&トシ風に)
Sちゃんは、そのホストと僕を会わせたかったみたいだ。気が合うと思ったらしい。正気か?
Sちゃんは、そのホストと僕がちょっと似てる、とも言った。
娘のフィアンセと会う時の父親って、こんな気分なのかな。
どんな奴が来ても、絶対、気に要らないだろうな。
俺が父親だったら、相手の男に対して、治療的な精神療法と正反対の事をして、苦しめて試してやる。
ケケケ、ザマァミヤガレ。
あっ、何を取り乱してるんだ。すみません、お見苦しいところを。
話をSちゃんのお気に入りのホストに戻そう。
Sちゃんは、僕とそのホストがちょっと似てると言うけど、Sちゃん、言う程、俺のこと、知らないでしょ。(笑)
強いてあげれば共通点は、顔が良いところと、低身長、口がうまい、ヒスを着る、子供の頃から医者を目指してた。
ん?何、最後のそれ?聞き捨てならんな。何ゆえ、今、ホスト?
Sちゃんは僕のリュックについているオレンジのプンプンを指差して、「私、前から、これ気になるんだぁ」とホストに言った。↓。
Sちゃんのお気に入りのホストは、「知ってます。言わないで下さい。当ててみせます。う~ん…、おやすみプンプン!」と、
俺の目の前に人差し指を突き出して、自慢げに答えた。
<正解です…>と俺。
「すご~い!なんで知ってるの~?」とSちゃんはホストの肩を揺すり、ホストは照れながら、「サブカルですよね」と俺に言った。
俺は心の中で、<なんたる、浅薄…>と絶句した。
そのホストは、それ以上の知識がないとみて、Sちゃんに「きっと、君は、好きじゃないよ」と優しく諭す様にささやいた。
Sちゃんも、しなだれかかって、「うん」なんて酔っ払って言ってるし。
もう帰ろうかな。
でも、せっかくのSちゃんの誕生日会だし。空気をぶち壊しては可愛そうだし。
一応、福岡の学会の恩はあるし。
ここは、じっと我慢する。男はつらいよ。
そうやって、僕がこの日、Sちゃんの誕生祝いに、この店に支払った金額は、7万円だった。
Sちゃんのバースディパーティーは、ドンペリのゴールドを開けて盛大にお祝いされた。
それで、7万は安いなと思って聞いたら、シャンパン代は、Sちゃんが毎月積み立てていたらしい。
僕はSちゃんに<いくらするの?>とシャンパンの値段を聞いた。
すると、Sちゃんはちょっと躊躇って、「引かない?さっき払ってくれた金額あるっしょ?その10倍」だって。
ビローン!!
おまけに3月に、さっきのホストの誕生日があるから、同じシャンパンで祝うため、現在、積み立て開始中だって。
ムヒョー!!
Sちゃんは、あんなに取材をバンバン受けて、顔を売って、ほぼ毎日、オールタイム店に出て、完全歩合制で、稼いで、
頑張ってるなぁと感心してたら、こんなことに消費してたのか。
こんなこと、って言い方はないな。訂正します。失礼しました。
しかし、職業に貴賎はないし、職業にランクもない、と僕は本気でそう思う。
誰がどう何に自分の稼いだ金を使おうが他人にとやかく言われる筋合いはない、と僕は本気でそう思う。
価値の多様化したこの世の中だし、趣味も人それぞれ、他人に理解して貰えなくても構わない、と僕は本気でそう思う。
自分の好きなことを好きだ、と胸を張って言える心は大事だし、時に勇気のいることだと僕は本気でそう思う。
そんなことを全部、踏まえた上で、一言だけ、言わせてもらいたい。
<何やってんだ!?、Sちゃん>。
カモられてんじゃん。
カモネギだよ。
Sちゃんがカモで、俺がネギ。
情けないなぁ。50過ぎて、野菜担当かよ。悔しすぎるぜ。
ホストは、真剣に俺にこう言った。
「こう見えて自分は子供の頃、体が弱くかかりつけの小児科医がとてもよい先生で。
自分も将来はその先生のように小児科の先生になりたかった。
しかし、自分が高2の時、その医者が児童ポルノの罪でつかまった。
なんだ、あんなに良い先生だと思っていたのが、実はそういう目で子供を見てたのかと。
裏切られたと思って勉強をやめてしまった」、それが医者をめざした理由と辞めた理由のすべて。
ん~、どうでしょう??
ま、それは実話なのかもしれない。
百歩譲って、真実なら、こう言うしかないな。
<その医者が逮捕されたのが医学部に入る前で良かったね>、と。まぁ、Sちゃんの誕生日だったから、言わなかったけどね。
医学部は6年間。臨床心理士も同様だ。大学を出た後、大学院に行って、資格試験を受ける権利を得る。
その時間は、単に膨大な知識を吸収するためだけにかかる時間なだけではない。
その間に気持ちが折れずにモチベーションを維持出来るかどうかが問われているのだと思う。
そうやって、患者と向き合う覚悟が問われ、責任感が育まれるのだ。
我々だって何度も、理想と現実のギャップをつきつけられ、ぐらつくことに耐えて、生き残った。サバイバルした。
少なくとも、「尊敬する先生がロリコンだったから幻滅して、夢を放棄」なんて、責任転嫁な言い訳は通用しない。
ところが、こっちの世界では、通じちゃうみたいだ。むしろ、逆に、有効でさえあるみたいなのだ。
「その医者、サイテー」とか、「可哀想~、被害者だね~」なんて同情票が期待できる。とほほ、な話でしょ。
ぬるい!
<Sちゃん、目を覚ませ!>。
Sちゃんは馬車馬の様に働いている訳だが、それはホストに貢ぐためで。
だから、それを今、急に取り上げたりしたら、自殺しちゃうかも。
そんなことになったら、俺のトラウマになっちゃう。気をつけよう。
Sちゃんには、何か別の生きる目的を見つけてもらってから、脱錯覚させよう。肝心なのは順番だ。
いきなり、ガーっとやっちゃダメ。
これは、「地雷撤去」とか「遺跡発掘」と似ていて、精神療法の十八番の技術をそのまま応用すれば良いだけだ。
しかし、難しいのは、Sちゃんが僕の患者じゃない、という一点だ。
構造化、出来ないからね、やりづらい。
でも、軽くとっかかりくらいはつけておこう。
取り敢えず、Sちゃんが貢いでるホストの語る現時点での将来の夢は、天文学者、だ。
「医者」→「ホスト」→「天文学者」って、どんだけ、振れ幅、デカいんだよ。
なれないモン、無いんじゃないか?
って言うか、ブレ過ぎだろ、軸が。芯がないのか。
コミックス「おやすみプンプン」は、愛子ちゃんが転校して来て、「もうすぐ地球は滅亡する」と言う所から始まる。
愛子ちゃんの可愛さと衝撃的な発言に戸惑う小学生のプンプンは、同時に学校の宿題の作文の提出期限も迫っていた。
作文の題は、「将来の夢」。
何も思いつかないプンプンは愛子ちゃんの言葉を思い出し、「僕は将来、宇宙を研究する人になって人類を滅亡から救いたい」と書いた。
そして、誰も最終的に救われないストーリー展開の物語の火蓋は切って落とされる。
そう言えば、ホスト、Sちゃんに「おやすみプンプン、見なくていい」って断言してたっけ。
よし、Sちゃんに「おやすみプンプン」を読ませよう。
まずは、天文学者の辺りから切り崩して行くか。
家に帰ってから、今回の件で色々と相談に乗ってくれたFに報告をした。
Fは、「生きて帰れて良かったね。7万円?妥当な金額だね。まあ良く行ったと思うよ、僕なら絶対行かなかったと思うし。
君は勇気あるよ、徴兵制度があったらきっと素直に行ったんだろうね」と言った。
Fは、世間は終戦記念日に戦争だ平和だと叫んでる中、僕が風俗だホストだと騒いでいた事を冷静に皮肉って。
僕の純情を揶揄した。Fよ、お前は、ジョン・レノンか?
後日談。
Sちゃん、「お誕生日は、ありがとう」
僕、<こちらこそ、素敵な日に誘ってくれてありがとう。最初は怖かったけど、実は、皆、良い人達だったな>
Sちゃん、笑顔で、「そう言ってもらえると嬉しいわ」
僕、<あの日は荷物になるから持って行かなかったんだけれどさ、これ、誕生日プレゼント。マンガ、なんだけれどね>
そう言って、僕はSちゃんに「おやすみプンプン」全13巻セットを差し出す。
カメラは、Sちゃんの驚く顔を、パン。
…と、現在、イメージ・トレーニング中。
行くぞ!、プンプン!、君が切り込み隊長だ。↓。
BGM. 吉田拓郎「裏街のマリア」、もしくは、河合奈保子「けんかをやめて」
※そして今
Sちゃんは、僕の仕事や連絡方法は知っているが、僕の私生活はまるで知らない。僕に家族がいるのかとか、聞かれたことがない。
ある日、僕がひどく落ち込んでアニメの抱き枕を大量に買った時、悪女の深情け、というのか、彼女はやさしいから、「これから添え寝しに行ってあげようかと?」と冗談ともなくマジともなく言った。遠慮したけど。
こないだ久し振りに彼女にメールした。今は違う源氏名で同じような仕事をしていると聞いた。