マドンナの話

2/Ⅹ.(水)2019 くもり えなりかずきが泉ピン子と共演拒否。

マドンナの話はよそうじゃないかホホホホと赤シャツが気味の悪い笑いをした。(夏目漱石「坊ちゃん」より)

9/30(月)息子が冬服が欲しいからと買い物に付き合わされる。勿論、役割はサイフ。GUでバックスバニーのシリーズが出てるからと、
新宿のビックロへ行く。明日から消費税が10%に値上げだというから街は大セール。平日なのに人も多かった。
大型量販店、ねぇ、思い出も売ってればいいのに。

※この記事は個人情報保護法により個人が特定できないように一部、事実を修正したり脚色しています。念のため。※

僕は一浪してるから大学に入学したのは昭和57年。
受験生なんて古今東西みんなそんなものだと思うが、灰色の青春時代で大学に受かった時には、燃え尽きている。
そんな僕のモノクロームの生活を天然色に変えたのは、一人の女の子の存在だ。
ボクらの学年には、マドンナ、がいた。

僕は彼女が好きで彼女の気を惹こうと色々したが、まだ18-19才だし、何もわかってないし、自分の心もわからないし、
時代はドンドンオシャレになって行くプロセス(やがてバブルに行き着いて朽ち果てるのだが、その前段階)で、
デートの手法やアプローチの仕方にも模範解答があるような時代で、僕らはそういうのを参考にしながら反発して、
バカにしながら取り入れて、右往左往してた訳である。

「愛は恋より少し大き目」というCMが流行ったから、原宿のキディランドで、牛乳パックのデザインの持ち抱えるようなサイズのゴミ箱を買って、
マドンナの誕生日にあげて彼女を辟易させた。捨てようにもゴミ箱に入らない大きさだし、そもそもゴミ箱だし。
そんなこんなで僕はドンドン嫌われて、口をきいてもらえなくなるのだが、医大生は6年あるから、どこかで挽回できて、
僕は奇跡的に彼女と連絡をとりあえて、今はメル友だ。

僕はラインを始めてから変てこなスタンプを買うのが趣味で、それを真夜中に友人に送るのが日課。
今やリアルタイムでラインをみてる人はいないから気兼ねなくやってるが、昔は、深夜2時とかに謎のFAXを送り続けてたものだから、
よくまぁ、ブロックされずに関係が続いたものだ。

そんな僕らの同窓会があった。銀座でやった。マドンナは卒業したら田舎に帰って地元の医者と結婚したから、30年くらい会っていない。
メル友だけど。

それが今回の同窓会には「出席」の「○」がマドンナの名前の横についていて、だから僕も万障お繰り合わせの末「○」にした。
マドンナは家庭もあるから田舎から日帰り、とんぼ返りだというので、僕も皆さんに協力してもらい早く出させてもらいました。
9/28(土)診察の人、どうもありがとうね。

僕は開始時間よりちょっと遅れて会場に到着。女子グループは固まっていて、会計係が会費を払う際、「マドンナも来てるよ」と教えてくれた。
僕は女の子グループを見渡す限り、僕の知ってるマドンナはいない。でも名簿ではいる。ならばと消去法でしぼってゆくと、1人知らない女がいた。

それはドブネズミみたいな、トレーナーを裏返しに着たようなフダン着で、ノーメークで、髪はモンチッチみたいな女だった。
僕は、「あれがマドンナか?」と愕然とした。
するとしばらくしてマドンナの方から僕の方に来てくれて、
「川原君、いつもメールありがとう。元気づけられたよ」と笑顔で言うが、その滑舌が悪く、まるで総入れ歯のおばあちゃんみたいだ。
僕はちょっとギョッとしたけど、すぐにマドンナだとわかって、人間の印象なんて2-3分もすれば、思い出フィルターを通して補正されて、
昔のマドンナに戻ってみえた。
マドンナは僕に、「私は旦那が女作って家を出て、離婚して、子供2人育てて、乳癌になって抗がん剤使って髪の毛が全部抜けて、
やっとここまで生えたから、思い切って今日、来てみたの」とカミングアウトするから、
僕はその間に深夜にくだらないメールを送って申し訳ないと思ったが、
彼女は、「川原君の送ってくれるパフェの写メや新しいヘアスタイルのカラーにずい分と勇気づけられたのよ」と言ってくれた。
「でも、私の話は、ラインで言うには少し重いと思って今まで言わなかったの。ゴメンね」と謝られた。

マドンナは片っぽのオッパイを切除して、でも幸い転移がないから経過は良好らしい。
僕の母も物心ついた時にはもう乳癌で左の胸をとっていたから、一緒にお風呂に行ったり旅の宿の温泉で皆と入ると気まずそうにしてたのを覚えていて、
僕は何も出来ないけれど母を守ろうと思っていた。

僕はマドンナに手術したオッパイをみせてと頼んだ。彼女は「何言ってるの?」とこばんだが、僕は「そういうのじゃないから」と言うと、
こういうのって言葉じゃなくてハートで通信されるみたいで、マドンナは「じゃ、川原君、こっち」と言って皆から見えないパーテンションの蔭に僕を連れてって、
ドブネズミのシャツをめくって、ない方のオッパイをみせてくれた。僕は間近でドブネズミのシャツをみた。よく見たら綺麗じゃないか。

ボクらの同窓会は四捨五入すると60才くらいの人たちの集まりだ。
若い頃に病死した奴もいたが、その頃はそいつは「例外」だった。でもこの年になると大病を患ってる人が何人もいた。皆何かしらの病を抱えていた。
精神科医の同門会だと半数以上の者が何らかの精神安定剤(眠剤や抗うつ剤)を飲んでいた。
病気を持つことは辛いことだ。でも病気をもってはじめて、あるいはそれを開示してはじめて医者としての手腕にすごみが出ることもある。

マドンナは日帰りだから先に帰る。その帰り際に記念のツーショットを撮った。
今、見てみると、僕のお腹もずい分と出ている。
真を写す、と書いて写真と読むが、写真だと自覚してるより出っ張ってみえるから、他人にはかなり太ってみえてるのだろう。

僕は、アンチ・アンチエイジングの立場だったが、やっぱり少しダイエットしようと思って、前に買ったトランポリンを取り出してきて、部屋に設置した。
4月に、ぺろりんに出した手紙のリアクションはまだ来ないから、今度は同じような内容の手紙を、にゃんこスター、のアンゴラ村長に送ってみようと思う。

↓。

BGM. さだまさし「セロ弾きのゴーシュ」


10 Replies to “マドンナの話”

  1. そもそもゴミ箱だし、に少しわらいました笑
    誕生日を覚えていてくれて自分のために選んでくれたのなら、自分だったらゴミ箱でもうれしいだろうな、とも思いました。

    マドンナさん、大変だったんですね。
    私は何年も連絡の取ってない友人から、何気なくメールがくるようになり、趣味で小説や絵をネットに載せているのだと、ちょくちょく送ってもらっていました。後から、友人にはうつだった時期があり、布団からも出られず、苦しい中で創作されていたのだと知りました。
    何気なく返信していましたが、それが人を助けていることもあるから、なるべくどんな友人にも誠実に接していきたいと感じましたし、自分も助けられることもあるかもしれない、とも思いました。

    大病をしてから、健康の大切さだったり自分の生活を反省するものですが、できれば事前に防ぎたいものです。
    今、スーパーでは医学者が開発したというブロッコリースプラウトをよく見かけます。生で食せ、栄養満点、解毒作用もありアンチエイジングにも高い効能があります。ぜひ食わず嫌いで試していただきたい、と思いました!

    1. へるしーさん、こんにちは。

      僕の知ってるヘルシー・ジョークを2つ。
      ①医者「煙草は1日3本までにしましたか?」
      患者「はい。でも、つらかったです。私、煙草、吸わないもので」
      ②中国の奥地に200才になる老人がいると聞き、その御宅にインタビューに行く。
      長寿の秘訣を聞くと、酒も煙草も吸わないという。すると、2階でドスンバタンとすごい音がする。
      記者「何ですか?あの音は」
      老人「また、親父が酔っ払って暴れてるんです」

      何気なくした行為が人を助けたり、その逆に助けられてることって確かにありそうですね。
      金八先生じゃないけれど、「人、という字は、支え合って出来ている」。
      これをツービートはギャグにして、たけしがきよしが「ひと、という字は支え合って出来てる」って黒板に書いたら、「入る」って漢字を書いちゃった、ってのがありました。
      今度、そのブロッコリースプラウト、探してみますね。
      ではまた、コメントして下さいね。

  2. ランボーサクラダです
    時の流れの無情を感じさせる話しですね…
    全く変わりますが、「後ろから前からボックス」畑中葉子CD4枚組セット発売をご存じですか?欲しくはありませんが知っておいた方が知識人として良いかと思いコメントしました。失礼致しました。

    1. ランボーサクラダさん、こんばんわ。

      畑中葉子の情報ありがとう、知りませんでした。ま、知ろうともしてなかった訳ですが。
      後ろからも前からも、取り出せるCDボックスなのですね。
      彼女は本格的に歌手として、赤組から紅白に出たいと言ってるそうですね。
      そう言えば、カナダからの手紙、は白組だったんですね。
      平尾昌晃も今は、ほたるの光、の指揮をやってるから共演できますね。
      ま、僕は格闘技みますが。
      おかげで、痴識人になれました。ではまた~

  3. 私も、かつて、エアロビクスでなく、短い時間で指示されたことをすれば、体脂肪が燃えるという体操のDVDを見て、毎日やっていました。予想に反して、かなり体重が減りましたね。
    今は、日課のウォーキングを、毎日、ちょこっとづつやっています。
    本当に体力が減りましたから、初めからやりなおしです。

    1. papaさん、こんにちわ。

      デス・ノートの初代「L」は、「本当は頭を使っていれば、太らないんですよ」とケーキをパクつきながら言ってましたが、あれは嘘ですね。
      昔、大巨人・アンドレ・ザ・ジャイアントは、1試合やると体重が10キロ減ったといいます。分母がデカイからですね(笑)

      僕はジョギングを始めようとすると、必ず、3日目に雨が降るというジンクスがあり、続きゃあしません。

  4. 川原先生、こんばんは。

    私の祖母も、私が物心つく頃には片方のオッパイをとっていて、子供の頃、よく一緒にお風呂に入ったのを思い出しました。言葉に出さずとも、わたしの気持ちを一番よく分かってくれていた祖母と私は、年齢を超えた不思議な絆がありました。
     マドンナさんのお話。の記事は、なんだかすごく、元気、というのかな。勇気みたいなものをもらいました。私は医者ではないけれど、病気も自分の魅力につながっているといいな。

    なんだか真面目なコメントになっちゃった笑。

    1. いずみさん、こんばんは。

      いずみさんのおばあちゃんもそうでしたか。
      病気を持つことや開示することで生きることの意味を掘り下げられることが治療者としての成熟に寄与することってありそうですね。
      真面目なコメントありがとうございました!

  5. 川原先生、今日は~!
    この話、何回読んでも声を挙げて笑ってしまいます。
    マドンナさんはとてもいい人ですね。年頃の女性が同窓会、それも医学部の同窓会に行くのは勇気がいるのに。
    服装やメイクに捉われずに素のままで来られて、きちんと挨拶もされて帰られて。
    その後ろ姿に尊敬の念を禁じえません。
    ところで、先生の服装は探偵では無かったんですか?

    1. エコさん、こんにちは。

      僕は今回着て行く服が買えなくて、「ピカソ(本人)」のTシャツを着て行きました。
      受付のうかいさんは、「誰ですか、それ?ヒットラーですか?」だって。
      「戦争への嘆きや怒りを、ゲルニカ、という絵に昇華した画家だよ。ヒットラーの真逆だよ」と言い返しました。

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