KWAIDAN

28/Ⅷ.(金)2020 猛暑 内海佳子、死去。97歳大往生。

真夏なので、定番の怖い話をお送りしようと思います。と思ってたら、お昼のテレビで、安倍総理が辞任する、ってやってました。今晩は、タイタン・ライブですね。爆笑問題・太田は、ウーチャカがコロナだから一人で臨む訳ですが、朝の時点では、「内海佳子師匠、死去」で練ってたはずの台本を、直前に、ぶちこまれたビッグ・ニュースで大慌てで手直ししないといけませんね。時事ネタをやる人はここが大変ですね。

今回の記事のタイトルは、高校の時の英語の授業で「小泉八雲、の怪談」をやったのですが、表記が、「ラフカディオ・ハーンのKWAIDAN」だったことから拝借しました。

コロナの夏は医療従事者への負担や医療機関の病床数の逼迫などから、一部で「医師不足」が叫ばれていますね。以前に歌舞伎町のホストとこんな会話をしたことが印象的に残っています。
ホストは、真剣に僕にこう言いました。
「こう見えて自分は子供の頃、体が弱くかかりつけの小児科医がとても良い先生で。
自分も将来はその先生のように小児科の先生になりたかった。
しかし、自分が高2の時、その医者が児童ポルノの罪でつかまった。
なんだ、あんなに良い先生だと思っていたのが、実はそういう目で子供を見てたのかと。
裏切られたと思って勉強をやめてしまった」、それが医者をめざした理由と辞めた理由のすべてだった。
ん~、どうでしょう??
ま、それは実話なのかもしれない。でも、こう言うしかないな。
<その医者が逮捕されたのが医学部に入る前で良かったね>、と。まぁ、言わなかったけど。
医学部は6年間。その時間は、単に膨大な知識を吸収するためだけにかかる時間なだけではない。
その間に気持ちが折れずにモチベーションを維持出来るかどうかが問われているのだと思う。
そうやって、患者と向き合う覚悟が問われ、責任感が育まれるのだ。
我々だって何度も、理想と現実のギャップをつきつけられ、ぐらつくことに耐えて、生き残った。サバイバルした。
少なくとも、「尊敬する先生がロリコンだったから幻滅して、夢を放棄」なんて、責任転嫁な言い訳は通用しない。
ところが、こっちの世界では、通じちゃうみたいだ。むしろ、逆に、有効でさえあるみたいなのだ。
「その医者、サイテー」とか、「可哀想~、被害者だね~」なんて同情票が期待できる。とほほ、な話である。

医師国家試験のテスト範囲は膨大である。
その全部を完璧にこなすのはなかなか難しく、また全部が出題される訳でもなくどこが出るかわからない。
そこで、傾向と対策が必要になり情報戦が重要になる。
僕らの頃の情報戦の主軸は、「~が出るらしい」という風の噂。
それを聞くと、そこを集中的に取り組む。
また別の噂を聞きつけると、そこを見直す。そんなことをしていた。
実際、情報内容よりも、そういうものを自分だけが知らない不安がプレッシャーを呼ぶから心理的効果の方が大だったのかもしれない。
そうは言っても、国試直前の僕らには、まるでTVの選挙速報よろしく、
「どこが出るらしい~」というガセネタを待ちわびながら、自分の勉強を続ける、
というスタイルがスタンダードだったような気がする。
クラスの頭の良い子が、学校にかけ合い、6年生のために皆で勉強をし情報を共有するためのスペースを確保してくれた。
これは、大変助かる。
0時とか1時まで解放してくれるのだが、その時間まで学校に残ると僕は家に帰れなくなってしまう。
僕は、当時、へんぴな所に住んでいたので、交通手段がなくなってしまう。
大学6年にもなると、結構マイカーを持ってる人がいて乗り合わせたりして帰っていたが、僕は車は乗らないし、いかんせん‘へんぴ’なので、他の友人に乗せてもらって遠回りになってしまうので悪くてお願い出来ない。
それも毎日毎日のこと。
とてもじゃないが頼めない。
困っていると、これまで6年間、ひとことも喋ったこともない男が、「川原さん、僕、帰り送って行きましょうか?家は○×ですよね?うちもすぐですから」と言ってくれた。
本当に?いいの?。
「川原さんの所、帰り道なんでいつも通るんですよ。1度、見かけたこともありますよ」と言ってくれた。
悪いなぁ。じゃ、お言葉に甘えて。
ところで、君、誰?。
すると彼は真面目な顔をして、「ナカクラです」と答えた。
ナカクラ君、と呼ぶことにした。
ナカクラ君の車は紺色の丸味を帯びた地味な日本製の車だった。
学校から僕の家までの間、車中で今日勉強した箇所を話し合った。ナカクラ君がどの位頭がいいのか僕は知らないが、きっと僕より成績はいいのだろう。
「そこはこうだと思いますよ」「それと関連して、コレコレ、というのも覚えておくといいですよ」などと言ってくれたから。
約束通り、国家試験が終わるまで、毎日、ナカクラ君は僕を家まで送り届けてくれた。
国家試験の当日、僕の手応えはなかなか良かった。
ナカクラ君はどうかな?と少し気にしたが、広い会場だ、誰がどこにいるかなんてわからなかった。
そして、国家試験の発表。テストは水物だから、受かる人もいれば落ちる人もいる。
合格発表者の表にナカクラ君の名前はなかった。他のクラスの子に「ナカクラ君、駄目だったの?」と聞くと、「ナカクラ?誰?」と言われた。
えっ?。…合格欄だけではない。卒業名簿にも「ナカクラ君」の名はなかった。
今でも、不思議に思う。ナカクラ君は、いなかった?。
ただ一つ、はっきり言えるのは、もしナカクラ君がいなければ今の僕はいない、っていうことだ。

BGM. ソフトクリーム「クラスメイト失踪事件」


10 Replies to “KWAIDAN”

  1. 川原先生のお話だから、最後はギャグっぽく終わるんだろうなってサラサラ読み進めたら、ガチじゃないですかー、怖いですーー。豚肉食べすぎて壊したお腹が、またキューってなりました。面白かったです涙

  2. 川原先生。
    ナカクラくんのエピソード、なんか、背筋が寒くなりました。
    幽霊だったのか、それとも、潜りの医大生もどきだったのか。
    きゃー!怖いよ➰

    1. シンシアさん、こんばんは。

      これ不思議でしょ?
      僕の不思議体験はまだ他にもあるんだけど、ちょっとここには書けない内容なので、いつか覚えてたら直接教えてあげますね。
      ではまた~

  3. 川原先生こんばんは。

    今日は、体が重くベッドで横になっていたら、息子が、「あきらめないで、どんな時も、君ならできーるさ、どんなことも」って、サンボマスターの歌を口ずさむもんだから、起き上がって作りました夕飯。いつもよりおかず1品多く笑。息子の歌は良薬でした。

    内海圭子師匠死去に対する、ナイツのお二人のコメント。もうご覧になりましたか?とても心を打たれるコメントでした。

    国家試験、私の時は、当日隣の席に座った、同じ学校のクラスメイトの男子が、なんとインフルエンザ発症中で、試験中にうつされるんじゃないかという緊張感と、試験中その子が倒れやしないかという心配感とで、いまいち集中出来なかったのを覚えています。幸い2人とも受かりましたが。

    ナカクラ君、医療の神様が先生に授けてくれた救世主かもしれませんね♫ 先生が先生になってくれて良かったです。ナカクラ君に感謝です。

    1. いずみさん、こんばんは。

      ナイツのコメントみましたよ。あいつらもっと悪い奴なのに、好感度あげようとしてる(笑)
      あなたの国試、すごいね!コロナの今、読むと考えられないですね。

      ナカクラくんのことの整合性をつけようとすると、結論はひとつ。
      僕が医者になってるこの世が夢。

      ってか、あなた、体調、大丈夫??色んなストレスがトリガーですかね??忙しすぎたものね。

      1. 私の中で好感度すごい上がりましたよ。してやられましたかね笑!?

        忙しすぎましたね。でも、ピークは過ぎ去ったから、今はもう大丈夫です♫

        1. いずみさん、こんばんは。

          ナイツは、サンドイッチマンの好感度下げて、自分たちがそのポジションを奪う作戦ですよ、笑、絶対。

          体調、ビックリしましたよ。何が20年振り?って振りに騙されました(笑)

  4. 有吉のラジオは下ネタがきついので、あまり聞かないのですが、島田秀平をゲストに呼んで、占いを徹底的にインチキだと論破した回があって、その続編で、怖い話も封印してやろうという回(有吉的にはコロナで困っているだろうからゲストに呼んだようです)が面白かった。
    でも怖い話は個人的に好きです。
    何のネタだったか「私メリーさん、今ブラジルにいるの」っていうのが好きです
    だいたいここに書き込んでいるときはメンタルとフィジカルがダメな時ですね、やれやれ

    1. すみっこぐらしさん、こんにちは。

      さくら学院が、活動をやめてしまうそうです。
      コロナのせいで今年度の新入式も出来なかったし、いよいよ、ちゃおガール、を追うしかなくなってしまうのか?
      地下アイドルも大変そうですが、地底アイドル(地下アイドルの最下層)は安定してライブがやれてるそうです。
      元々コロナ以前から、150人規模で5人くらいしか客がいないから、十分にソーシャル・ディスタンス、とれるそうです。何が生き残るかわかりませんね。

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