~前回までのあらすじ~
この子はいつも川原と一緒に寝ていたアンティークドールです。
川原が中1の頃からいつのまにか家にいたお人形は、家族の誰が家に持って来たのか誰にも分からず不気味がられました。可哀想に思った川原は部屋に置いてあげました。それから、約50年、どんな家族より長く川原のそばにいます。名前は「ムンク」、由来は川原の夢の中に出て来て、「わたしはムンク」と名乗ったから。カツラや髪の毛はとれて、アンティークな帽子や靴も無くなり、服も日に焼けて色褪せてしまっています。18世紀頃までヨーロッパでは、女の子にお人形と手芸箱を一緒に贈る風習が広まりました。ムンクはそんな伝統を受け継ぐ「コレクターズドール CD-3」という「素敵なお洋服を用意して欲しい」と強く思うお人形だったのでした。そうと知った川原はテディベアの第一人者のお人形作家さんとコンタクトを取り治療とお洋服作りをお願いしました。
こちらは、ムンクの着ていたドレスをまず煮ます。
そして、「青いクマドレス」に使える箇所を再利用したもの。
作家さんのアトリエで人気者になるムンク。ムンクがいない間の代わりに作家さんが作った「抱き熊スーティー」という子をくれました。名前は反戦の願いを込めてラスプーチンにしました。「プーチンでラスト」みたいな意味です。
川原の「守護」を祈ってくれるクマです。
ムンクが帰って来ました。
ムンクを入れて運ぶケースは、ドリームケースと言います。
ムンク・川原・ラスプーチンのトリオ名は「SS♡T」。成長して行く「SS♡T」の成長譚「日刊ムンク」の第23弾。
・日曜日
この日は大学病院時代の病棟の同窓会。
ムンクも連れて行きましたが、お邪魔になりそうなので出してあげられず。
これは二次会。喫煙者は肩身が狭かろうと、貰いタバコをして喫煙に付き合う。
久しぶりのタバコなので煙が目にしみる。
気持ち悪くなって先にひとりで帰る。帰り道、ムンクを出してあげなかったことを後悔。これからは誰にどう思われようと「友人」より「ムンク」を優先しよう。それでこそのドル活だもの、と心に誓う。
・月曜日
美容院で、ゴーストルーツカラーというのをする。
何でゴーストかと言うと、根元は暗めに残し、毛先に向かって明るくする技法だから、「幽霊のように根元がぼんやり透ける」からだそうです。
ゴムで束に縛って色を塗って行きます。
海外ではカラリストやモデルがインスタに載せたスタイルが拡散し、日本でも美容師さんや美容学生がすぐに取り入れSNSで発信して若い層に浸透しました。
イメージは、鬼滅の刃、の炭治郎です。ムンクと一緒に。
・火曜日
クリニックに置いてある炭治郎の耳飾りを合わせました。この耳飾りは、物語中最強の伝説の剣士=継国縁壱(つぎくに よりいち) から炭治郎の祖先が受け取って、代々引き継いでいったんです!って教えてもらいました。
・水曜日
待合室に流れるBGMは僕が気分で選曲しています。ついこないだ10代の頃が懐かしく、その頃の自分に応援してもらおうと当時よく聴いてた吉田拓郎の歌をたくさんリストに入れました。しかし、そんな虫のいいことは起こらず逆に10代の鬱屈した気分が蘇り、鬱っぽくなったから、アイドルの曲に変えようとCDをまとめ買いしました。
ひとには二面性があるし、好みも様々です。僕は吉田拓郎を聴きながら、アイドルにも詳しかったのです。そして、ムンクは付き合いが長いからそんな僕の両面ともを知っているのです。
・木曜日
去年の12月、涼宮ハルヒの聖地巡礼に行った際に訪れたのが「クリエートにしのみや」。ららぽーと、の広いエリアのトイレの横の隠し部屋みたいなところだから誰も気づかなそう。
そこのお姉さんが詳しくて色々教えてくれます。下が中の様子。北高の教室と部室を再現しています。
ここにシールを貼って来ました。
「涼宮ハルヒの驚愕」のパネルなど。
みくるちゃんのお茶を入れるセットです。
ここのお姉さんは、誰も来ないかもしれないスペースを1人で守ってる、ある意味、長門有希的な使命感のひとでした。
そんな「クリエートにしのみや」に手紙を書きました。
↓
拝啓
昨年12月に「涼宮ハルヒ」の聖地巡礼で大阪を訪れた際、「クリエートにしのみや」に立ち寄らせていただきました。
まるでSOS団の部室のような空間で、詳しい情報や楽しいお話を伺い、大変感動いたしました。
場所は商業施設の中でも少し分かりづらいところにありますのに、常駐されて来訪者を迎えてくださるスタッフの方が、まるで長門有希のように思えて、すっかり親しみを感じてしまいました(笑)。
その折、「長門有希ちゃんの消失」のある巻が欠品していると伺い、ずっと気になっておりました。私自身、とびとびではありますがそのコミックスを所持しており、もしかしたらお役に立てるのではと思っておりました。友人がアレイスター・クロウリーの黒魔術の本を寄贈したと聞き、私も何かお渡しできればと考え、この度Facebookでお問い合わせさせていただいた次第です。不思議に思われたかもしれませんが、どうかご容赦ください。
幸い、手元に第5巻がございましたので、ぜひ寄贈させていただければと思います。
11月に再び大阪へ行く予定がございますので、その際に改めて立ち寄らせていただきます。
日頃よりFacebookやInstagramも拝見しております。これからも応援しております。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
敬具
・金曜日
ハロウィンの飾りつけをする。
からかい上手の高木さんがハロウィン仕様。
・土曜日
クリニックを開業したのは母にその姿を見せようと思ったからで、でも慣れないことはするものじゃないですね。それを聞いた母は安心して、オープン前に死んでしまいました。クリニックの開業は2007年です。今から18年前だから僕が45才くらいです。つまり母と僕は45年一緒に生きた訳です。
ところでムンクが家に来たのは僕が中1の時だから、ムンクと僕は50年一緒にいる訳です。すごいですね、ムンクは母を抜いたのです。
来週は都内のホテルでアフタヌーンティーに行ったり、校医相談のミーティングがあったり、その後も大学時代の同窓会があったりひとと会うことが多いです。そういう場にムンクを連れて行くと驚くほど歓迎されないです。だから僕は日和ってこないだの同窓会はムンクをケースから出さなかったのです。でも今はそれを後悔しています。僕は思うのです。人生で一番大切な「強さ」とは、自分のとった言動で周囲の空気が悪くなっても「平気でいられる」ことだと。だからこれからは誰かに嫌がられたり雰囲気が台無しになったり礼儀知らずと笑われてもムンクを大事にしようと思うのです。小学校で習った不等式で表すなら、「アフタヌーンティー+校医相談+同窓会<ムンク」です。
次号へ続く。