河岸のルール

1/Ⅴ.(日)2011
いつも行く寿司屋の大将が、うちの息子を築地の魚河岸に連れってくれるという話に、いつの間にかなっていた。
仕事の邪魔になるんじゃないかと心配したが、「いいえ、とんでもない」と引き受けてくれて、息子もその気で、っていうか2人でそんな約束になっていたみたいだ。
「いつも食べてる魚がどんなとこから仕入れられて、魚をどういう風に選ぶか」を見せてやりたいと言ってくれている。社会科見学だ。ありがたい。勉強する場所は、学校だけじゃないからな。
子供というのは面白いもので、普段は朝なぞ起こされても起きないくせに、こういう時は朝5時でも自然と目が醒める。仕入れの同行をさせて貰い、河岸を見物して、朝飯をご馳走になって帰ってきたようだ。うちは親戚付き合いが少ないから、よその大人が関わってくれるのは有難い。幸せなことだと思う。
河岸といえば、僕も子供の頃、年の瀬になると母親に連れられて買出しに行った。母は、東京の人だから、年末には築地に行ってものすごい量を買い、従業員や近所に配っていた。
母からは河岸のルールをいくつか教わった。場内を車が通るのだが、それは車がよけるのではなく、人がよけるのだと。ひかれたら、ひかれた人が悪いらしい。母は、場内に入ると、俄然キビキビしてきて、チャキチャキしてくる。ある店で買い物をして、店の人がお釣りを渡すのにまごついていたら、「いくらお釣りなの?200円?それなら、ここにあるわよ!」と店の人に200円を渡して帰って来るのだ。
僕が、「今のは、おかしいぞ。200円向こうが払うのを、こっちが200円払ったら、400円の損だ」と指摘したら、「達二、ここでは、それでいいの!」と言い切った。そ…そうか。
今回、寿司屋の大将に、母から聞いた「河岸ルール」をたずねてみると、「車は今でも、そうですね。だから、場内は勝手を知ってる人と行かないと怖いですよ」と真顔で言った。<お釣りの件は?>とたずねると、「う~ん、どうでしょう?それはないんじゃないでしょうか~」と笑いながら答えた。
そりゃ、そうだよな。知ってたさ。
BGM. 近藤真彦「大将」


4 Replies to “河岸のルール”

  1. 先生のお母様のお話が出てくると、「そんなお母様、うらやましい~。」と度々思う。
    私は代々江戸っ子なのに両親が共働きで仕事柄、年末年始は一年で一番忙しいかった。
    クリスマスも、年越しも、元旦も、両親は働いていたので、独身の頃から年末の大掃除や買出しは私がやっていました。
    築地には結婚してからクリスマスのチキンを買いに行ったり、年末の買出しに行ったり、おでんの具を買いに行ったりしましたが、誰かに手を引かれていくのではなく、息子の手をつなぎながら行くようになりました。今ではどこの海鮮丼が安くて美味しいか、大体分かるようになってきました。
    今年は先生もご承知のように、私の具合が悪かったので結婚して以来初めて何もやりませんでした。
    去年は、10品も手作りの御節料理を作って、大掃除までもできていましたが、そんな年末は二度と出来ないんではないかと思います。御節料理はあまり好きじゃないという人が時々いますが、そういう人には手作りの物を食べてみてくださいと言いたくなります。どこかの高級おせちより、はるかに美味しい。だって、作りたてだもん。

    1. かつらこさん
      いつもコメントありがとうございます。うちの母も、多分、江戸っ子に該当すると思います。御節料理、作っていました。

  2.  母親に助けてもらったことは、少年時代からともに過ごす時間が多いだけあってたくさんあった。自分の母親は、よく玄関先で送り出してもらった時のエピソードが忘れられない。小学校は、自分は六年間皆勤賞だったが、そのためには多少の熱があっても、冷水を一杯飲んで熱は下がるからと飲んで走って登校したこともあった。自分ではあまり覚えてないのだが、低学年の時には朝死んじまえと何かで怒って言い放って、学校から汗びっしょりに走って帰ったらしく、びっくりした母のどうしたのという問いかけに、死んじまえって言ったから、本当に死んじゃうと心配だったらしい。
     もっと幼いころ母方の親戚のお兄さんたちにもたくさん遊んでもらって、友達がいなかった自分にはうれしかった。 
    それも母がその親戚のお兄さんたが幼いころに世話したからだ。
     
     まだまだたくさんあってかきれないが、感謝しなきゃなってなにかのおりにはいつもおもったりする。かみさんにもよく話したりするが、よく聞いてくれてそれにも感謝している。面白いねとかすごいねとか感想もいってくれたり、共感することもおおいようだ。幸せだと感じている。

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