5/ⅩⅠ.(土)2011
11月5日は、母の誕生日。子供の時、兄の提案で兄弟でお金を出し合い、プレゼントをしたことがある。
それは、おもちゃの指輪で、多分、数百円の代物で、エメラルドのイミテーションで、
キラキラの緑色がカメレオンみたいで魅力的だった。
母は、その日、父に「子供達が、これをくれた」と報告しているのを、僕はコタツでうたた寝しながら聞いていた。
父は、「子供達は、宝石のつもりなんだから、一生、大切にするように」と言うのを、僕は寝たふりをして聞いていた。
実際、母はその通りにして、母が亡くなって遺品を分ける時、宝石箱の中にそれをみつけた。
この幼児体験は、のちのちの僕の女子との付き合い方の原型となった。
要は、「お金<気持ち」である。
中1の時に、流行った太田裕美の『木綿のハンカチーフ』はその思想を強化した。
松本隆の作詞したその歌は、男が就職のため、恋人を田舎に残し、上京するという設定だった。
僕は中学から東京に出て来て、小学校の好きだった子は田舎の学校に通っていたので、
これは自分のために作られた歌なのではないかと愛着をもった。
『木綿のハンカチーフ』は、男女の文通の内容が歌詞になっている形式で、
1番では男が恋人へのプレゼントを探すと宣言し、
それに対して女は、私は欲しい物などない、あなたが都会に染まらないでくれればいい、と返す。
この歌は4番まであり、男は女にスーツ姿の自分の写真や、都会で流行りの指輪を贈りつけ、
それに対して女は、木枯らしのビル街で体に気をつけてとか、ダイヤや真珠よりあなたのキスの方がきらめくもの、
と返信する。
太田裕美の澄んだ伸びるソプラノが健気さを表現する。
男はとうとう4番の歌詞で、
「毎日、楽しくって、君を忘れちゃうよ、許してね」
みたいなふざけたことを一方的に抜かし、
ずっと贈り物は要らないと言っていた太田裕美が最後のわがままとして贈り物をねだるのだが、
それが涙を拭くための木綿のハンカチーフ、というオチである。
こうして、「お金<気持ち」路線は確固としたものになり、思春期の刷り込みは恐ろしいもので、
僕は大学時代や医者になってからも女子に高価なプレゼントをするのは不誠実だと思った。
プレゼントには、オリジナルの彼女を主役にしたマンガを描いたり、
その子の好きな歌手の秘蔵映像(もしくは音源)をあげたりした。
それが一番、喜ぶと、本気で思っていたから。
つげ義春のマンガで、世の中は安保闘争で騒乱としている時に、
ヤミ米を買いに行く仕事の手伝いをするという実話に近い作品がある。
そのマンガは、ヤミ米を買いに行く親分に
「アンポ、って知ってるか?」と聞かれたつげ義春が、<何ですか、それ?>と答え、
親分は「俺も知らねぇんだよ」と笑って終わるのである。
昭和史みたいのを見ると、皆がその時代は安保に関心をもっていたように錯覚するが、
同時代に全く別次元で生活する人はいるのである。僕もそんなところがある。
多分、僕はバブル時代というのを東京(もしくは神奈川)で過ごしているのだが、
実体験としての感覚はゼロだ。
言われて見れば、友人達がデート・コースや記念日が何とかとかよく言っていた時期があったから、
きっとあの辺りなんだろうな、とは思う。その頃も女子との付き合い方は同じだった。
結構、大人になってから、割と、この人はセンスがいいな、と思う女の子が、
「プレゼントに、ブランド物を貰うと嬉しい」と言ったのを聞き、とても驚いた。
僕のマンガを心底、喜んでいた子だったから。
平成に、太田裕美はいないのか、と痛感した。その反動形成なのかもしれないな…。
僕は、最近、カエルの指輪をしている。たまに、「可愛いですね」と言われると、
<ティファニーです>と答えている。
勿論、ウソであるが、皆、一瞬、「エッ?」と驚く。
それが、楽しくて、指輪をしているようなものである。↓。
BGM. 太田裕美「木綿のハンカチーフ」
私事ですが、別れた男性から餞別品と言われブランド物の財布をもらいました
物に罪はないので使っています
ブランド物など興味も無いのに
mayuさん
なるほど、物に罪はないですね。いつもコメントありがとうございます。
筒美・松本コンビ作品だと尾崎さんの
「また逢う日まで」がお気に入り。
とのさん
尾崎紀世彦は、僕の小学校の先輩です。筒美・松本コンビは、しょこたんの「綺麗ア・ラ・モード」や斉藤由貴の「卒業」とか中山美穂のデビュー曲の「C]もそうでしょう。あと、初期のマッチとか。
ちなみに「また逢う日まで」は、阿久悠じゃないかしら、作詞?
今、調べたら「また逢う日まで」は阿久悠さんの作詞ですね。失礼。
しょこたんの「綺麗ア・ラ・モード」聴いたことがなかったのでYoutubeで試聴してみたのですが、良い曲ですね!
ゆうこりんはご結婚なされましたが、彼女はまだなのでしょうか?
とのさん
すぐ調べるところが、本当の意味での頭の良さを感じさせますね。
「綺麗~」のポスターは、クリニックのトイレの横に貼ってあるので見て下さい。
しょこたんっぽくないから、注意しないと気付かないかも。
ゆうこりんの結婚は、まだ認めていませんので、以下、ノーコメントです。