へそもち

20/ⅩⅠ.(金)2015 はれ
まったくもって季節はずれの話で恐縮だが、白玉あずき、について。
幼い頃、母に言われて、近所のおばあちゃんの家に遊びに行っていた。
いつも1人で寂しがっているから、話相手になってやれ、とのこと。
おばあちゃんは、僕を可愛がり、昔話を聞かせ、おやつの時間に磯辺焼きを焼いてくれた。
夏には、気が向くと、白玉あずき、を作ってくれた。
おばあちゃんの作る、白玉、はちょっと変わっていた。
白玉のお腹の部分を指で押してくぼみを作り、「へそもち」を呼んでいた。
おへそ、みたいな形だからね。
おばあちゃんは、「へそもちを作ると、雷様が欲しがって、鳴り出すんだよ」が口癖だった。
僕は子供とは言え、そんな馬鹿馬鹿しい話を鵜呑みにしなかった。
おばあちゃんが、へそもちを作った日に高確率で、雷が鳴っても、それはそういう季節だから、とクールに受け止めていた。
ある夏の日、おばあちゃんが、へそもちを作った。
おばあちゃんは、「今日は雷様が来るよ~」といつもの様に言うが、僕は老人の独語だと思い、受け流していた。
しかし、衝撃だったのは、台所に立つおばあちゃんが鼻をほじっている光景を目撃してしまったことだ。
多分、僕はこの頃から、食べ物に潔癖症になったのだと思う。
僕は鼻をほじった手で作った、へそもち、を食べる気になれず、手をつけず、<帰る>と言った。
すると、おばあちゃんは、「タッちゃんの好きな、へそもちなのにどうしたの?」と聞いた。
だけど、そこで何を答えられようか。
おばあちゃんは、お土産に、へそもちを包んでくれた。
僕は、へそもちを家に持ち込むと家全体が汚染されそうな気がして、帰路、民家の塀の向こうに投げ捨ててしまった。
やれやれ。やっとこれで晴れた気分で家に帰れる、ホッとしたのも束の間。
にわかに空が暗くなり、雷様がゴロゴロと泣き出しそうな雲行きだ。
慌てて僕は全速力でダッシュして、両手でへそを隠して、大急ぎで家まで走った。
BGM. 堀ちえみ「稲妻パラダイス」


8 Replies to “へそもち”

  1. 先生、こんばんは。
    白玉だんご、私も真ん中へこませて作ります。たぶん…そうする人は多いと思いますよ。真ん中もちゃんと火が通りやすくするためです。現実的な話になってスミマセン。
    あと、子どもの頃、母方の祖母(故人)がおにぎりを作ってくれたら、なぜか蛆虫が入っていて、ビックリして放り投げそうになった記憶があります。
    しばらくのあいだ、ご飯粒にはよく気を付けて食べるようにしました。
    「それ以来、食べられなくなった」ではないところが、田舎の子だなぁと自分で思います。
    日曜日の志らくの「文七元結」、終わったら我慢し切れず、声に出して泣いてしまい、前の席の人たちが振り返るほどでした。

    1. トモトモさん、おはよう。
      まさかの早朝コメントです!
      へそもち、は火が通りやすくするためですか?
      理にかなってるのですね。
      しかし、おにぎりの蛆虫ってホラーですね。
      僕はよみうりホール、行けなかったんですよ。
      寝坊じゃなくて、面接で。
      今度、様子、教えて下さいね。
      ではまた~

  2. 先生、こんにちは。まさかの早朝コメント嬉しいです。
    よみうりホール、そうなのかなぁ…と思ってました。2階席から髪型か帽子かリュックを目印に見回しても見つけられなかったし、面接は都合に合わせますと記載してあったので。(とらばーゆ、見ちゃいましたよ。)
    日曜日までお仕事、本当に本当にお疲れ様です!

    1. トモトモさん、こんばんは。
      労いのお言葉ありがとう。
      はげみにします。
      文七かぁ、聴きたかったなぁ。
      ではまたね。

  3. はなくそほじってへそもちを作っている所をみたら、それは衝撃ですよね。
    下手したらおばあちゃんを嫌いになっちゃうかもしれないし。
    先生の気持ちよくわかります。

    1. sinさん
      共感された瞬間に気持ちって楽になりますね。
      ありがとう。
      今度、新宿伊勢丹のとらや、にでも行って白玉ぜんざいを食べて来ます。

  4. 川原先生こんにちは。
    食品に関するトラウマは私にもあります。
    小学生の頃、親戚からハワイのお土産でマカダミアナッツ入りチョコレートを
    頂きました。箱を開けて透明なビニールを開けてみるとチョコレートに小さな
    穴が空いていました。「何だろう?」と思いチョコをひっくり返してみると・・・・・
    何かの幼虫らしき芋虫が蠢いていました。ぎゃーーーーーーーーーーーっ!
    それ以来、ナッツ類の入ったチョコレートは見るのも怖くなりました。
    あと飲食店で働いている人に調理場の実情を聞いたことがあるのですが、
    ここでは書けないほどの衝撃的な事実を聞きました。
    食の安全性、衛生管理は今日の日本では期待できないのが現実です。

    1. やられメカさん、こんにちは。
      小学校の時のマカデミアナッツのエピソード、すごいですね。
      このブログの意味の一つに、僕の記事に触発され皆さんが各々の歴史を語れるきっかけになればいいな、と思ってるから、こういうコメントは本望です。
      後半の飲食店の話は気になりますが、聞かない方が良いのでしょうね。
      僕が中学の時、近所の中華飯店は店主が暇があると店先に残飯を置き、鳩に食べさせていました。
      鳥好きな人なのかな、と思っていたのですが、ある日、そのオヤジが大きな網で、一斉に鳩を捕獲して店内に引きずり込むのをみて愕然としました。
      食用??
      怖くて、その店に入ったことはないです。

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