松井さんからバトンを受け取りました、心理の原です。
カウンセリングの新しいポスターができましたね。
若い人にもカウンセリングを身近に感じてもらえたら、と思っています。
2022年度から、高校の保健体育の授業では精神疾患にかかわる項目が盛り込まれるようになりました。背景には、①精神疾患の多くが10代(思春期)に発症が急増していること、②適切な処置が遅れると症状や生活への影響が深刻になりやすいことがあります。最近の研究では、うつ病や統合失調症など発症のピークは19.5歳から20.5歳、強迫性障害や不安障害、摂食障害のピークは14.5歳から15.5歳という結果もあります。また精神疾患全体(認知症を除く)では18.5歳までに罹患者の半数が発症しているとも言われています。もちろん大人になってから発症する人もいますが、10代での発症は見逃せない割合に達するわけです。(参考:東京都こころの健康だよりNo.138 2023年10月)
思春期は、子どもから大人へと心身ともに変化する時期です。急激な身体の成長に戸惑いながら、心の中は子どもと大人の間を行ったりきたりします。周りの評価を気にしながら、自分とは何かを自問自答したり、親に甘えたい気持ちと自立したい気持ちの間で揺れ動いたり、多くの葛藤を抱えて戸惑いながら過ごしています。
自分自身を過大評価する一方で、ささいなことで自己卑下にとらわれたり、周囲に対して根拠なく優越感を持ったり、次の瞬間に激しい劣等感が湧いてきたりします。容姿や体型などの外見的特徴もアイデンティティの形成に大切な役割を担っています。このように思春期は、自分への関心が高まり、自分らしい生き方を模索する時期ともいえるでしょう。いわば、だれもが自意識過剰なわけです。
カウンセリングでは、精神疾患の治療や不登校などの一時的な停滞を、アイデンティティを構築する上で「意義あるもの」として考えます。とにかく早く症状や問題行動がなくなればよいとか、それらを取り除いてもらうためにやってくるだけ、という考え方はしません。その人のそれまでの生活や周囲との人間関係、社会的状況とも関連づけながら、その症状が出現した意味を検討して、理解して、役立てることを期待してお会いしています。
川原クリニックでの私は「創造の病(creative illness)」という考え方も大切にしています。人が病気(特に精神疾患)になり、それを克服しようとする過程の中で、今までとは異なる創造的な考え方を生み出したり、生き方そのものが創造的に変容したりすることを示している概念です。
河合隼雄は「病というのは、その人なりに、どこか自分の心の深いところと接触して何か変化しているのではないか」と述べています。「カウンセリングによって、その人が単に元通りに治ったというのではなく」「生き方が前と少し変わった、あるいは考え方が少し変わった、それはやはり、ある種の創造じゃないでしょうか」「カウンセリングを受けに来る人はみんな、その意味で言うと創造の病にかかっている人です」と指摘しています。
川原クリニックのカウンセリングでは、病気の人が来て病気を治して健康になる、という考え方だけではなく、その人が自分の人生の物語を生きるうえで「創造の病」をどう活きるのか、を一緒に考えたいと思っています。
そうそう、大人になって中年期に訪れる「第二の思春期」もありますね。家族関係、転職、ハラスメント、不倫、喪失や逆境体験など、メンタル不調という症状になって現在の自分をおそってきます。
嵐のような思春期の真っただ中にいる方も、かつて思春期だったミドルエイジの方も、自分を見つめる機会にカウンセリングを考えてみませんか。
ついしん:精神疾患の授業ですが、高校では遅い?かもしれません。せめて14歳、中2頃には教養として伝えたいなぁ
それでは徳田さんにパスを送ります!