ゴージャス

17/Ⅲ.(水)2021 はれ アナフラニールが新型コロナ治療に効果?

二回目のエヴァは二子玉川の「イーマックス」という高画質上映。普通の映画が1800円だとすると2500円。エヴァは大人気でチケットがとれなくてやっと空席をみつけたらそこのプレミアシートがあった。反射的にとってしまってから値段をみたら6500円でした。

高い物には高いだけの理由があるものです。一般の人と同じ入場口から入ろうとしたら「お客様はこちらです」と一階上のスペースに案内され、横文字が書かれた自動ドアを開けて中に入るとホテルのロビーみたい。バーカウンターみたいなところに黒のタキシードを着たイケメンがいて、丁寧な口調と紳士的な低姿勢で「お客様、こちらはご利用されたことがありますか?あっ、初めてですか。それではご説明します」と言ってロビーとか化粧室(個室)とか入場口のご案内をされたが気おされサッパリ何も頭に入らず。豪華なメニューを見せられ、ワンドリンクプレゼントというが、その飲み物もいわゆるライブハウスの「コークハイ」とか「モスコミュール」と違って、「山崎12年」とか高級酒ばかり。僕は「山崎12年」のソーダ割を頼むと、「お席までお持ちいたします」だって。僕の席は、「L5」。

劇場の後方に10席あまり用意されたリクライニングソファは細いカップルなら二人でかけられる。頭と足元が上下できる。ソファの横に高級な衣文掛けの棒が立っていて、荷物をしまえる棚もある。靴は脱げるし、僕は靴下まで脱いだ。天井桟敷みたいな場所なので「下の階の一般客」が目に入らず視界にはスクリーンしかない。隣の席も2-3m離れてて視野に入らないから快適。そこへタキシードを着た清潔そうな女性スタッフが静かに気配を消しながら「山崎12年」を銀色のお盆に乗せて参上。そっと、グラスとおしぼりとおつまみを横のサイドテーブルに置き目礼。お酒のグラスはホテルのバーで使われるような高級なガラスで氷も良い氷を使ってる。おつまみをいれる器には綺麗なガラスに3つの味のポップコーン(塩・カレー・キャラメル)が礼儀正しく座り、ビニール袋に個別包装されたおしぼりもぶっとい本物。映画は2時間以上があるからゴロゴロ体位変換しながら観られるのは優雅。お酒も美味しい。本当はお代わりしたいがトイレに行きたくなると困るから我慢。出来れば尿瓶(しびん)を持ったメイド(ナースでも可)を席の横に常駐させてくれれば200点。画質と音の良さを「普通」の映画と比較するため2画面で上映前にみせてくれた。それが「CM」替わり。これが6500円の「価値」ですが、今回の記事で提言したいのは日本人とゴージャスの関係性が若者の生活に与える制限についてである。

よくおしゃれ盛りの子がたとえば茶髪にしたりピアスを開けたりするのにファッション的な記号以外に意味は見出せないのに、「茶髪&ピアス」だとバイトを断られるという話を聞く。或いは、「もう少し髪の色のトーンを抑えてきて」などと条件を出されるのを聞く。自分のおしゃれを貫きたいと働ける場所が限られてしまうのだ。僕は常々これはバカらしいことだと思っていた。そしてそれは「ブラック校則」から繋がっているものかと邪推していた。しかし、今回の6500円のチケットである仮説にたどり着いた。

たとえばあの映画館のタキシードを着たスタッフに茶髪&ピアスは似合わない。「浮く」と思うのだ。それは「悪目立ち」のように少数派だという「見慣れなさ」が原因だ。僕は自分で言うのもなんだがまぁまぁ社会的な地位や収入や経験や付き合いがある。今はこんなご時世だからないが「接待」などを受けたこともある。ドレスコードのあるお店にお呼ばれして、ビーサンにアロハで行ったら店の入り口で靴に履き替えさせられジャケットを羽織らせられた。そういう物が用意してあるということは一定数そういう格好で来る客がいるのだろう。だから僕はそういう場所に全く無関係ではなく生きてきたが、今回の映画館の接客にはむずがゆさがあった。その正体は「ゴージャスに慣れてない」からだ。

日本人はゴージャスに慣れてないと思う。むしろちょっとビビる。もう令和の世の中なのにまだ敗戦を引きづってるかのように卑屈だと思う。ここをなんとかしないといつまでもゴージャスのやりたい放題だ。映画館で6500円払ってもいい、という人から草の根運動のようにゴージャスを有難がらない習慣をつけていきたいと思わないか?「山崎12年」などと言わず、「ホッピー」と言える度胸が欲しい。

日本人にそういう耐性がつけばタキシード着用の店にも茶髪&ピアスの子が勤められる。そこを皮切りに、バイトにおける茶髪&ピアスが解禁になる。若者のファッションと労働環境の選択の自由の両立が目指せる。そんなことを考えさせられたイーマックス体験でした。

今朝、大岡山駅に立て看板とその横に頭を下げる駅員がいた。どうも昨日の東急線の遅延を詫びるメッセージと、その横でずっと頭を下げ続けている駅員のパフォーマンスだった。なんかその駅員が悪い訳ではないのにいくら仕事とはいえ大変だなぁと思った。その駅員の身だしなみはちゃんとしていた。この役は茶髪&ピアスでは説得力が欠けるなぁと朝からしみじみ思ったものだ。


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