11/Ⅵ.(金)2021 はれ 池江璃花子(20)が日本選手団の旗手の候補に浮上
心の護美箱(37)がいっぱいになったから(38)を作りました。始めてこのブログを読む人は「何のこっちゃ?」ですね。とりあえず、グチを書き込めるページなのです。つまり心に溜め込んでるものを、捨てる、ゴミ箱、のようなものです。昔、僕の少年時代の茅ヶ崎では駅前に有害図書を入れる「護美箱」という大して面白くもないトンチのゴミ箱がありました。それへのオマージュです。非公開を希望の人は、そう書いてくれればアップしませんし、こちらが判断して「不適切」なものはアップを控えます。参考にこちらを。→心の護美箱(37)。
精神療法あるある、です。患者さんから「あの時の先生の一言で救われました」と後になって語られる一言が、こっちは全然覚えてない、ということがあります。逆に、こっちが満を持して発したフレーズがまるで刺さってなかったということもあり、結構なディスコミュニケーションの中、精神療法は進んでいるということです(笑)。えっ?そんなことで良いの?とお思いの方も多いと思いますが、「週刊誌ネタ」が「全体の会見や文章の一部を切り取ったもの」で印象操作が行われる悪意、であることの反対で、「たまたま語られた一言」なんて所詮全体を言いつくせてはいないという逆説です。もっと言えばコミュニケーションのうち「言語的コミュニケーション」の占める割合なんてわずかだという研究もあるし、皆さんも実体験で経験済みでしょう。例えば、ふんぞり返って爪を切りながら「愛してるよ」なんて言われても何も響かないし、前かがみになって背を丸くし哀願するように「ごめんね」と言われりゃ許しちゃう。たとえ、それがDV男の手口でも。
昔、プロレスではその人の必殺技を他人が真似するのはタブーとされました。アントニオ猪木の「卍固め」をジャイアント馬場が使うことは、どちらのプライドとしてもあり得ませんでした。藤波辰巳と長州力の名勝負数え歌では、あえて長州力の必殺技「サソリ固め」を藤波辰巳が長州に決め、それを古舘伊知郎が「掟破りの逆サソリ」と実況した名フレーズが例外くらいで、精神療法にも似たところがあり、人が使った名セリフ(解釈、などという)を他人が真似すると大失敗するという例は枚挙にいとまがありません。女性患者が妙にめかしこんでくるから「あなたは私と結婚でもするつもりですか!」と「恋愛転移」を指摘して治療が展開したというのを聞きかじった治療者が同じような女性に「あなたは私と結婚するつもりですか!」と言ったら、「やっと、わかって下さったの?」と火をつけちゃったって古典的な笑い話もあるくらいで、大事なのは「何を言うか」ではなく「誰がいつどのタイミングで何を言うか」が問題なのです。だからコンビニで売ってる本のように、「子供に伝わる魔法の言葉」みたいなものは存在しないと考えた方が良いですね。
それを大前提にした上で、僕がお勧めしたい「魔法の言葉」があります。これは結構、誰がやっても効果が期待できるのではと思うので、気に入ったら使ってみて下さい。それはダライラマの手口です。ダライラマが来日した時です。丁度、北京オリンピックの直後で柔道無差別級で金メダルをとった石井慧がダライラマの講演会を傍聴してたのです。フロアから何か質問はないですか?と聞かれた時、石井慧が手を上げました。石井は当時まだ22歳でオリンピックの連覇を期待される日本柔道界の宝でした。しかし石井慧は総合格闘技への転身を考えていたのです。石井はダライラマに対して真正面から質問しました。「周囲の反対があっても自分のやりたい事を貫くべきか、それともある程度、長い物には巻かれるべきでしょうか?」と。その時のダライラマの格好はつるっぱげに派手な黄色とオレンジ色のあいの子みたいな片方の肩だけさらけ出したセクシーなスタイルで、これで肩にインコでも止まってたら「ビルマの竪琴」の中井貴一です。ダライラマは、石井の質問に前傾姿勢になりながら、通訳を介してなのに、「うん。うん」とうなずきながら、物凄い真剣な目つきで格闘家顔負けの迫力の形相で北京オリンピック金メダリストを睨みつけ、話を聞き終わったら、間髪を入れず、石井を力強く指さして、腹の底から絞るような声でこう言ったのです。「自分の人生は自分で決めるのだ!」。僕はこれをテレビの中継で見ていて、ショックを受けました。そしてひらめいたのです。人にインパクトを与える魔法の言葉の発し方。それはなるべく浮世離れした格好をして、相手の語る話をさえぎらず傾聴し、相手の話が終わったら、相手を威圧するようなポーズと声で、ものすごい「正論」を言う事です。
後日、天皇陛下のお正月のご挨拶に前年度活躍した各界の著名人が招待される会に、石井慧も招かれていました。天皇陛下は事前に各々のゲストについてお勉強されてるようで、的確なご質問をひとつづつされます。石井の番が来た時、陛下は「これからも柔道をお続けになりますか?」とお声をかけると、そこは石井慧は日本男児、天皇陛下を前に嘘はつけませんね、「自分は総合格闘技の道に進もうと思っています」と答え、隣にいた女子レスリングの吉田沙保里が腰を抜かしていました。
僕はこの放映をみながら、ダライラマの仕業だな、と点と点が線になったのです。
BGM. よしだたくろう「ガラスの言葉」