5・8アウトサイダー横浜大会

8/Ⅴ.(日)2011 母の日
前田日明が主催する不良達を総合格闘技ルールで戦わせ「更生」や「社会貢献」につなげる大会「アウトサイダー」をみにゆく。場所は、プロレスの聖地「横浜文化体育館」。去年は、不良達と在日米軍兵を戦わせたり、不良達とプロ格闘技団体の選手を戦わせ、不良の「意地」と「気合」で軍人やプロを叩きのめせるか?というロマンあふれる大会だった。ちなみに米軍には4勝1敗と大勝した。(去年の10月11日の記事にその模様は載せてあります。良かったら読んで下さい)。
今回は第16回になるが、前田日明自らが「今まで4年間やってきて一番面白いマッチメーク」と胸を張る大会だ。
目玉は、不良達vs「ロシア軍!」。前田日明は、RINGSの頃からロシアとの繋がりは深く、ヴォルク・ハンやヒョードルを発掘したのは前田だし、前田の引退試合の相手はアレキサンダー・カレリンである。
カレリンと言っても、格闘技好きじゃないと知らないかもしれないが、グレコローマン・レスリング‘130kg級’でオリンピックで3大会連続金メダルをとり、対戦相手から「カレリンに勝つには、ゴリラにレスリングを教えるしかない」とまで言わしめた、「霊長類最強の男」である。そんなロシアの英雄を日本に招聘できたことからも、前田とロシアのパイプの太さが窺える。
その前田が自分の目で選んできた3選手と不良3人が戦う。レベルが段違いになると困るので、ある程度、力がつりあうように選んだつもりだが、それでも差があるだろう、と前田は言う。
米軍兵と違いロシア人には、ハングリー精神がある。そして、何と言ってもロシアでは、「ヒョードル効果」があるらしい。
「60億分の1」の男、ヒョードルもアマチュア時代はロシアではそれほどの選手ではなかったそうで、上位の選手からしたら「ヒョードルでそこまでやれるなら、俺らもっとスゴいんじゃない?」的な人がたくさんいて、そういう人たちに育てられた選手達も、やはりそういう雰囲気を植えつけられているそうだから、楽しみだ。
結果は、ロシア軍の圧勝!いずれも1R決着で2人はフロント・チョーク、1人は開始直後4秒のKO勝利だ。ロシアというとサンボのイメージがあり、「アキレス腱固め」とか「三角締め」を予想しがちだが、どうでしょう、この結果。
現在、UFCなど世界の総合格闘技ではフロント・チョークが流行ってるのだ。「アキレス」や「三角」は失敗すると反撃を喰らう恐れが強いから。ロシア軍、それを知ってか知らずか、もっとも戦場で素手で戦うことを想定してトレーニングしてる人たちだ。当然といえば当然か。最後のカウンターのパンチも見事だった。文字通り、一撃必殺だ。
もう一つの見所は、不良達vsプロ格闘技集団。これは、不良漫画の永遠のテーマ、学内で一番強いのは誰か?で、よく漫画では、ケンカが強い不良の主人公とインターハイ出場経験のあるボクシング部キャプテンのタイマンに似ている。これは5試合組まれたが、大会も16回を数えるからアウトサイダー軍(不良達のこと)にもプロっぽい人が出てくる。正直、5試合中、「不良vs運動部」の図式は最初の3試合だ。
ところで、実は前田は、こんな時勢の中、この大会を自粛しようかと迷ったという。
でも、ここでやらないと選手の芽を摘んでしまうという思いと、アウトサイダーの連中(不良達のこと)の中には震災の2,3日後に支援物資を持って現地に乗り込んだ奴らもいるという。また何人かは3,4回募金活動をしたり、「チャリティマッチをやらせてくれ」とか「当日は募金箱を持ちます」という不良ならではの男気あふれるエピソード満載で、前田は開場が埋まらなくても赤字覚悟で開催を決めたのだ。
だからか残念なのは、おそらく節電のため試合前の「煽りビュー」がなかったことである。
「煽りビュー」とは、試合前に各々の練習風景やインタビューをうまく編集して、初心者にも解りやすくストーリーを紹介する機能と、会場の雰囲気を盛り上げる効果とがある。それが、なかったのでちょっと会場に伝わりにくかった面があったと思う。
それでも、3試合は面白かった。1試合目は、技にかなわなくて勝ち目のなくなった不良が、故意に反則技である顔面へのヒジ討ちとかチョーパン(顔面に頭突きをぶち込む、不良がケンカで使う技)を入れて「反則負け」。プロは怒って、「ルールを守れないならリングに上がるな!」とマイクアピールをするが痛々しく顔面は腫れ上がっている。不良は、開き直っている。
レフリーが激怒して反則負けを宣告しても、たぶん引っ込みがつかないのだろう、ふてぶてしい態度でコーナーマットにもたれかかっている。そこを収めるのは、やはり前田日明。毅然とした態度でリングに上がり、静かに諭すような口調で、「反則をするのは、自分が負けると思っているからやるんだ。それは、恥ずかしい行為なんだぞ。これからはするなよ。わかったな。以上!」みたいな感じ。それで、全員撤収。「場のおさめ方」のお手本を見た。
2試合目も、ある意味、ありがちなパターンで、プロがわざとおふざけして不良を挑発するのである。モンゴリアン・チョップとか連発させてた。これが、面白い程、入るのだ。モンゴリアン・チョップの構えに警戒した不良が首をガードすると、それはフェイントでボディに蹴りを見舞う。これも、また面白いように入る。不良は、ナメられて悔しいけど反撃できず。
つまり、プロとしては、そもそも勝って当たり前、この試合に意味を持たせるとするのなら、不良をカッカさせてそれでもプロは余裕シャクシャクで、力量の差を見せ付けて最後はビシッと決める。…はずが、なんとスキを突いて、不良がプロの逆関節をとって極めた。腕ひしぎ十字固め。不良の逆転勝ち!。漫画みた~い。
3試合目も、定番、不良もプロもガチのド突き合い。プロは「技」を封印して、ケンカ上等だ。不良も意地で殴り返す。3分を越えるド突き合いは圧巻。ドン・フライvs高山を彷彿とさせる。結果、レフェリーストップでプロの勝ち。これは、清々しい戦いだった。
そうそう、このプロ軍団にはパンクラスの選手もいたのである。RINGSの頃は、前田とパンクラスってひどい険悪な関係で、リング外で泥仕合みたいになって、脅したとかで裁判騒ぎみたいのもあったのにな。出場選手は(リアルタイムでは)知らないんじゃないかな。時は魔術師だ。感慨深いなぁ。
僕は、実はなんか興奮してて間違ってこの大会のチケットを二組もとってしまっていた。まぁ、チャリティーだから良いんだけど。
僕は、息子を連れて行った。アウトサイダーの「一つの売り」である、観客(これも不良達が主)の興奮・乱闘・乱入の臨場感を味わわせたかったから。でも、今回は警察からの指導も入り、場内でアルコール類の販売がされなかったことと、やはり震災チャリティー色が強いため、会場の殺伐さはほとんどなかった。だから、息子は少し肩透かし。
帰りに感想を尋ねると、「レベルが低い」って。そりゃ、お前は本場の総合格闘技とかを動画サイトでクマなくチェックしてるから、目が肥えてるのはわかるけどな。大事なのは、「気合」とか「度胸」なんだよ。「本気」と書いて「マジ」って読むんだよ。いいか、テストに出たら、そう書け。教師が×つけても、俺が◎をやる。
さて、残りのもう一組のチケットの行方はというと、クリニックのスタッフにあげて観戦してもらいました。
仕事場以外で会うと、照れるね。「あっ、どうも」「お綺麗ですね」みたいな感じになっちゃう。うそ。

BGM. カレン・ベス「アウトサイダー・ブルース」


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