相談室だより 〜2020 秋 新たな始まり その3

はじめまして、今年の4月から川原クリニックに来ました、心理士の松井美呼都(まついみこと)と申します。川原クリニックの、どこか現実から離れたような不思議な空間に魅了され、吸い込まれるように参りました。

クリニックには、様々な理由で、多くの方が足を運んでいます。そんな、苦しんだり悩んだり、生きるために現実と向き合う時間を、まるで心のテーマパークのような、非現実を感じさせるクリニックの空間が包み込みます。そこには、心を守ってくれる不思議な力があるように思います。

 

私は、心とは、常に自由であることが大切だと、常々感じています。そして、ここはとても自由で、遊び心があり、「これでいいのだ」という声が聞こえて来るようです。私自身もこのクリニックのように、カウンセリングを通して、少しでも心が軽くなるような、共に悩みながら道を歩んでいく作業をしていけたらと思っています。

 

また、カウンセリングを受ける決心がつかない、なんていう方もいるかもしれません。けれど、“なんか気になるな”くらいの気持ちを感じたら、それはもう、カウンセリングを受ける動機に十分なり得るのです。

 

コロナ禍ということもあり、心理士同士の交流は、現在リモートで行っています。もしかしたら、直接顔を合わせた回数よりも、リモートで話したことの方が、多いかもしれません。

9月は、新しく作成する、カウンセリングのご案内チラシについての意見を交わしました。 カウンセリングと聴くと、とても身構える気持ちになる方もいらっしゃるかと思います。しかし、私たち心理士は、カウンセリングをもっと身近に感じてほしいと思っています。

カウンセリングについて気になったら、ぜひ、チラシを手に取ってみてもらえたら嬉しいです。


相談室だより~2020夏 初恋

みなさま、おじゃまします。心理のとくだです。
今日はひさしぶりに相談室からのお知らせです。

あたしたちが送っている毎日は大変な日々ですね。
コロナや天災など。
明日のため未来のため計画してきたことが一瞬でおじゃんになることもあり、賢い人は厭世的にもなりますね。
近頃よく聞く皆さんの指針は、「今を生きる」ではないでしょうか。

精神医学的には、過去に生きる人を=うつ、未来に生きる人を=不安と位置づけます。
うつ、の人は時間軸が過去へと向いてるから、何でも「あの時ああしとけば」「あの時ああしなかったら」と発想し、
一方、不安な人はそのベクトルが未来へ向いてるから、「この先どうなるのだろう」「こうなったらどうしよう」と、先取り不安・取り越し苦労になります。

だから、あたしたちは「今を生きるんです!」とアドヴァイスしますが、その背景には「過去があるから今があり、今をしっかり生きることが未来に繋がるのだ」ということが前提にあり、人生を物語としてストーリーを読んで行く稼業なのです。

しかし、今の若い人達(若くない人もそうですが)は、今を生きるのが精一杯で、過去も未来もみてる余裕がありません。
「今を生きる」のではななく、「今だけを生きている」。そんなあなたにカウンセリングを、という告知です。

SF小説やライトノベルなどのエスパーものを見ていていつも思うのは、精神科医やカウンセラーが「世間の偏見」の代表として登場します。
こういうエスパーものは、決まって、ある日突然、主人公が超能力に目覚め、最初は「自分が狂ってしまったのでは?」と不安になり、
やがて本当に超能力があると納得すると、次第に「自分の存在理由は何なのか?」と悩み、そして最後は同様の仲間が集まり、共通の目的のため(敵を倒す、とか)に活躍します。
その途中で、自分がおかしくなったのでは?と思う段階で、精神科やカウンセリングをたずねる場合もあります。
しかし、決まって、精神科医やカウンセラーは、「ノイローゼですね」とか「薬を出しておきましょう」としか言わず、役に立ちません。
エスパー達への、社会の‘無理解’の象徴として描かれるのが精神科医とカウンセラーなのです。これは偏見です!抗議します!
…すみません。ちょっと取り乱しました。

すなわち、何を言いたいかというと、ある日、突然に超能力に目覚めた人は、「自分はおかしくなった?」と思うのは当然であり、そういう人が精神科やカウンセリングを訪れる可能性はあります。
そんな時、あたしたちはどうしたらいいのでしょう?
彼らの身に起きたことを、「常識」という物差しだけで判断せずに耳を傾け、不安や悩みや孤独感で押し潰れそうな心を支え、いつしか時が来れば、仲間や目的が見つかり活躍する、という希望を信じて、
「その時まで」寄り添うのです。
不安な彼らが、「あそこに行けば、いてくれる」と思えるような「定点」になるのです。‘わたしはここにいる’。それが相談室です。

固定観念に囚われない「非常識」さと、人としての誠実さが必要条件で、それから自分が病気をしない健康管理も大切ですね。カワクリの心理部門はエスパー対応もOKです。

↑、と徳田さんになりすまして記事を書いてみました。川原です。どの辺から気付きましたか?ドッキリ大成功!?タイトルは、「北の国から」にインスパイアされてみました。

BGM. 早見優「急いで!初恋」


カウンセリングのキャンセルについて

27/Ⅲ.(金)2020 くもり 緊急事態でも、若者は街へ。渋谷で大縄跳び?

治療抵抗という言葉があって、治療が進んでゆくと、これ以上、進むのが怖いな、とか、無意識に、治療が進むのを嫌がる気持ちが湧くものです。
それがまた「意識」してないから曲者で、そういうのが気持ちや行動に出ます。
「今日は雨だからめんどくさい」とか「仏滅だから縁起悪い」とか。
そういうのを許さず、正面から向き合う為、カウンセリングでは「キャンセル料」を設定します。

これはよく「あなたのために時間をとっておいたから」と言って、こちらがわの生活保障のようにとられますが、もっと深い意味があるのです。

治療抵抗は、行動に出ることがあるから、英語で、アクティング・アウト、ということもあります。
治療というアクトから、外れるアウト、という意味ですね。

だからもっともらしい理由があっても、約束の時間に来れないとキャンセル料が生じるゆえんです。
「雨が降ってもアクティング・アウト」ということわざ(?)があるように、親戚が死んでも、電車の遅延でも、キャンセル料はとられます。

でも、ここにきての、コロナ、です。
外出自粛の要請など。これはもうしょうがないですね。「教条的に」やってる場合じゃないですね。
そう思い、今回のコロナ関連に関してはキャンセル料が発生しないことに、心理士と相談して決めました。

今朝、朝ごはんを食べるとき、小さな奇跡が起きました。生卵を割ったら、中の黄味が双子でした。
きっと神様が、
その判断でいいよ、
と評価してくれたのだと思います。

BGM.阿良々木月火「白金ディスコ」


心理療法(カウンセリング)のすすめ

杉山です。
先生が患者さんにカウンセリングのアナウンスをするセリフを、私を患者に見立てシミュレーションしてくれたのを、それがまた早口で、一生懸命口述筆記しました。
それを記事にしてみましたので、後はよきに。

今、あなたがここに居て、これこれこういう問題があると。
そこにはあなたの性格とかいわゆるアイデンティティーというものが、関わっているわけなんだけれども、そういったものは、
昨日今日始まったようなものではない。と。
三つ子の魂百までもと言うように、あなたが生きてきた年数、
幼稚園時代とか小学校中学校高校、どこでどんな体験をしたか、
今まではそこをやり過ごしてきたかもしれないけれど、思春期とか青年期になると、寝た子を起こすように過去の固着していた問題が出てきたりするものなのだ、と。
だから、問題を解決するためには、何が問題なのかを
自分でわかる必要があって、そのためにカウンセリングでは、
最初の4~5回でカウンセラーの方から質問をして、
今あなたの困っていることと、あなたの歴史がどう関わっているのかを、見立てる作業をする。

それで納得いってくれれば、継続面接が始まっていく。
そこで、アセスメントの段階で聞かれる事は、
あなたの歴史を大河ドラマ的に分析していくことで、そのためには、
DNAレベルで父親とか母親とかの血も受け継いでいるわけだから、
親がどんな人間であるかだとか、その親にもまた親がいる訳だから、
おじいちゃんおばあちゃんがどんな人なのか。
プラス人間は、社会的な動物だから、兄弟とか親戚とか、
友人関係に留まらず、時代とか文化とか流行りとか風土とか信仰とかも関係してくる。
そういうものを全部聞いたうえで、それらにどのぐらい影響されているのか、あるいは反発しているのか、それを全く知らない他人であるカウンセラーにしゃべる事によって、相手に伝わるように喋らないといけないから、話しているうちに自分の整理にもなる。
これを毎週1回50分やる。
よく考えて欲しい、人生の中で生きてく中で、自分のことだけを話題にして、50分話し続ける空間などない。
それを人工的につくって、専門家と一緒に見つめていく作業がカウンセリングで。
これは本当の事を言うと、全ての人がやった方がいい。
ただそんな事に、厚労省は金を出さんと言っているから、
保険がきかなくて、1回7000~8000円かかる。
まぁ、高いように感じるかもしれないけれど、何かに比べれば高くないんじゃないかな。

唐突ですが、下にあるイラストは先生が描いたフロイト。色塗りは杉山が担当しました。↓

 

 


インタビュー ~夢のつづき~

 こんにちは。とくだです。今回は、川原先生の夢シリーズに、切り込んでいきたいと思います。
こういったやりとりの中で、少しでも夢について私たちがどのように考え、取り扱っていくのか、伝わると良いなと思います。
ブログのタグに「夢日記」というのがあって、かなりたくさんの夢がありますが、
今回は、2018年のものだけをピックアップさせてもらいます。

・それでは先生、よろしくお願いします。

「どうやろうかね?」

・始める前に、一つ気になっているのは、そもそもなんですが、
たとえばこれがカウンセリング、心理療法の中で夢が出てくる場合と、この夢シリーズのインタビューでは、
ちょっと前提が違っているように思うんですが。

「僕は少し違う意見でさ。
僕のブログはシリーズで、読者さんの皆さんに語りかけてるっていうか、話を聴いてもらっている立場で、
コメントもくれるし、それに返すし、ブログを通じて、こっちがカウンセリングを受けているみたいな(笑)
その中で、『夢日記』も、全部の夢を書いているわけじゃなくて、その時のノリで、選んでいる。
カウンセリングの夢の報告だって同じでしょ?全部の夢をしゃべってないでしょ?
意識的、無意識的にピックアップしていると思うんだよ。だから、実は似てると思うよ。」

・確かにその点はそうなのかもしれないですね・・・わかりました(苦笑)
では、早速、夢をシリーズでみていってみよう!ということで。
夢の元ネタはリンクを張るので、先生にはご自身の夢の感想をまず聞かせていただければと思います。
まずは『人をダメにする初夢』について。

「これはね、女子校に自分が入学するという設定ですね。昔の少年マンガにはよくありましたよ。
永井豪の、おいらスケ蛮、とか。よくあったってことは、そういうことを夢想する男子が多かったんでしょうね。
女の園に男が一人。僕は男子校だったので帰り道に女子と下校するのは夢でしたね。
夢に登場するクラスの中心人物で黒髪ロングヘアーの闊達な娘は、涼宮ハルヒ、のイメージで間違いないです。
SOS団に入りたいんでしょうね。」

・え・・・先生もお好きなハルヒ。これはつまりかなり直接的な願望充足なんですか??

「そうそう(笑)どうしようもないよね、こんな夢を新年そうそう初夢に見るなんて。人間が、ダメになる。」

・あ~!それでタイトルの、『人をダメにする初夢』、ってそういう意味なんですか?!

「そう。そういう意味でつけたの。」

・なるほど・・・気付いてなかった・・・次の『セカンド・ドリーム』は2番目に見た夢ってことですね?

「そう新年、第2弾。」

・これは、夢では常識が通用しないから、佳子さま、でもあらぬことをおっしゃるという意味でしょうか?

「って言うより、この頃、好きなアイドルが皆、ゴタゴタしててね。嫌気がさしてて。今更、2次元にも戻れないしさ。
でも、佳子さまなら、事務所は、宮内庁、だからしっかりしたプロダクションだと思っていたわけ。
そうしたら、患者さんから、佳子さまのスキャンダルがネットにいっぱいある、って聞かされて。
まさかと思ってみたら、結婚説、とかあって、ショックで。何を信じていいかわからない…と思ってた時に見たんだよ。」

・そうだったのですね。スキャンダルが簡単に入ってくる時代なんですね・・・
まぁ、夢はシリーズで読め、と言いますから、次に行きましょう。
通過儀礼』はこれは全部、夢なんですか?赤塚不二夫に実際に小さい頃会ったとか?

「ない、ない。夢だよ。子供の笑いと、大人のウィットって違うでしょう。
だから笑いのセンスでその人の成熟度ってある程度、わかる気がしてさ。
子供から大人になる階段って意味で、このタイトルにしました。」

・子どもの笑いと大人のウィット・・・『通過儀礼』というタイトルの背景にはそういう事情があったんですね。
印象的な箇所はどこですか?

「ハッテンバって、ホモの集まるところを言ったんだよ。中学生の時に、ホモっていいのか?って友人と実験したことがあって。
裸で抱き合ったりして。タモリと赤塚不二夫がそうやったっていうのを聞いてマネしたんだよ。」

・何やってるんですか?!

「中2だから。でも、すぐにどちらからともなく、もうやめようか、ってやめたんだよ。これも通過儀礼かな?」

・(苦笑)まぁ、これも一つの通過儀礼、ですね、きっと。他にはいかがでしょうか?気になる箇所。

「その頃は、まだタワレコとかが上陸してないから、町にレコード屋があるんだよ。大抵、偏屈なオヤジがやってる店でさ。
偉そうで。ロックとかジャズを買いに行っても売ってくれないんだよ。」

・どういうことですか?

「つまり、お前にはまだ早いってわけ。レコード屋で洋楽を売ってもらえたら大人、みたいなクラスの序列があったな。」

・レコード屋のオヤジさんに認められたら売ってもらえる。今じゃ考えられないですね。なんかノスタルジックですね。
ここまででは、先生は去年くらいから現実でアイドルに夢を見られなくなってて、
初夢で誇大的に願望を充足!というところでしたが、現実に目覚めて、こんなことではダメになる!と。
その後、佳子さまに走ったけど、さらに現実の追い打ちをくらい、夢で思春期まで退行した、という流れと考えられますかね?

「派手なパンツってのも、昔は男は白いブリーフ穿いてたんだよ。
大学で野球部の合宿に仙台に行った時、風呂に入るでしょ。先輩もみんな白のブリーフ。
その中で僕だけ、虎や豹柄のトランクスを穿いてたんだよ。
そうしたら、みんなが、それどうなってるんだ?チン○の置き場所はどうするんだ?って。
 だから、僕が、仰向けの線対称に置くんですよ、って言ったら、爆笑になって、僕は先輩やOBからも一目置かれて、
1年がやらなきゃいけないルチーンを免除されて、上級生達とマージャンやってたよ。
2年とかは、雑用やらされて、ブーブー言ってたな(笑)。そんなことでヒエラルキーって決まるんだよ。」

・パンツで決まるヒエラルキーですか。男の子も大変ですね。

「女の子もそんなもんでしょ?」

・そうですね・・・って、いや、今は、男が女が、という時代じゃありませんから・・・。

「自分が言い出したんじゃん」

・さて、次ですね!『夢日記~「心の音」』については、夢の素因数分解、で先生自ら、解説をされてますが、
私はこれを興味深く読んだんです。
これは、ちょっと『通過儀礼』よりも、心象風景が穏やか、というか、
心のノート、これは移行対象、であったり、対象恒常性であったり、といったことを意識されてますよね。

「僕の兄の子供が小さい時、タオルケットを小さく切って持ち歩いていたのが可愛くてね。」

・スヌーピーのライナスの毛布みたいですね。お母さんと離れていても一人でいられる、というところまで確立していないけど、
独特な中間の領域、そういう表れが移行対象、といわれますね。

「そうだね。だから、前の夢の、通過儀礼、ともつながるね。成長していくみたいな意味では。」

・夢では、細部にも目を配ることがあります。先生は、あまり重要視していませんでしたが、
彼女の、こころのノート、の格言ですが、ナボコフや芥川龍之介やトロツキー、というのは、何が連想されますか?

「ナボコフは、ロリータ、の作者で、ロリコンの語源になったと思ってる人が多いと思うけど、
ナボコフのロリータは年より上に見えて、男に対して誘惑的なんだよ。
だから、大人の女がこわいから少女を好きになるのがロリコン、ってちょっと違うんだよ。」

・随分、力説しますね。

「ゆずれないところだね。」

・では、芥川龍之介はどんなイメージですか?先生は、そんなにお好きではないですよね。

「思い出すのは、母が小さい頃、よく、くもの糸、の話をきかせて、カンダタのように1人だけ助かろうとすると大変な目に遭う、
という超自我をうえつけられた。」

・でも、先生は、次の夢『地獄寿司』でも言っていますが、神も地獄も信じてないじゃないですか。
それなのに、何故、くもの糸、にだけ、いまだに引っ掛かってるんだと思いますか?

「別にお釈迦様が手を離して地獄に落ちても、地獄なんかは怖くない。
ひょっとしたら、何かから抜け出せない、というのが怖いのかも。」

・それは何だと思いますか?

「多分、大衆とか、全体主義とか、みんなとか、平凡みたいなものからかな。無個性が嫌なのかも。」

・平凡・・・自己愛的な人には、平凡恐怖、って症状の人がいますね。

「それだ、それ!」

・そうなんですね(苦笑)。では、トロッキーは?先生からはあまり思想的なものは感じないのですが。

「トロッキーは僕も思い入れないな。ただ赤塚不二夫のマンガに、狂犬トロッキー、というのがあるよ。
こないだ復刻版で買った。」

・お、また赤塚不二夫、ですね。夢には、日中残滓物とか昼の残滓というのがあって、
夢主が起きている間に経験したことが夢で現れるということがある、とフロイトはいっています。
一見無意味にみえても、無意識と深く結びついていたりするといいますが・・・
先生にとっての赤塚不二夫ってどんな存在ですか?

「特別な存在。ものすごく影響を受けてる。僕の頭の中の半分は赤塚不二夫的思考回路で出来ている。」

・それはすごいですね。談志師匠とも交流がありますものね。かなり、重要な人物なんですね。

「そうアイデンティティーみたいなもんだよ。」

・この3人の共通点は、ナボコフにゆずれないところ、芥川に個性、トロッキーにアイデンティティーですから、
まさに先生ご自身のことですね。

「そうかも」

・それを山口百恵さんの「心のノート」には綺麗な字で、先生のこと(3人の格言と言う形で)が書かれていたんですね。
ちゃんと山口百恵さんの中に先生がいた、という。

「RCサクセションの歌で、君が僕を知ってる、という歌があって、好きなんだけど、その歌い出しが、歌っていい?」

・どうぞ。

「♪今までしてきた悪いことだけで僕が明日、有名になってもどうってことないぜ、何も気にしない、君が僕を知ってる♪」

・ちょっと前の記事のコメントで、キムタクが勇気をもらった曲、と書いてた歌ですね。

「そうそう、その歌詞の中で、キヨシは、『誰かが僕の邪魔をしてもきっと君はいいこと思いつく』と歌っている。
彼女はいつも良いことを思いつく、って夢で言ってるのは、ここから来てるのかも。」

・それはどんな意味があるのですか?

「僕にとって理想の女性に求める条件だよ。」

・山口百恵さんは、無意識では清志郎さんと結びつき合いやすい存在なんですよね。

「清志郎と三浦友和が高校の同級生で、まだ売れない頃のRCの清志郎がその結婚式によばれているくらいだからね。」

・へぇ~!先生のアイデンティティーノートに清志郎さんは欠かせませんからね。こういうちょっとした現れ方もしますね。
そして、この次に見る夢が、『地獄寿司』ですね。
この夢は、先生は、『夢日記~地獄寿司~(夢の因数分解)』で解説してますね。
夢を理解する時、何故、今なのか?という時期も考えることは重要ですね。

「うん。これはお彼岸にみたから、父母への思いだと思う。」

・夢の中では、電車や線路が重要なワードとして出てきますね。
先生も『夢の因数分解』の中で、線路で思いつくのは、「進路」だ、と仰っていますね。
これは、アイデンティティーの続きとして、親の望んだ、目医者、ではなく自分で精神科を選んだという自負があるのかなと。

「乗り物恐怖、の人って少なからず、そういうテーマがあるよね。」

・『夢の因数分解』の最後の一文に、
「父は僕が大学2年の時に死んだから、僕が精神科医になったことを知らない」とありますが、これはどういうことでしょう?

「確か、この頃は、クリニックの人が辞めたり、内部でゴタゴタしてて、ずっとイライラしてた。」

・そうですね、この時期は色々と大変な時期でした。心理も責任の一端だと思っており、申し訳ないのですが、
先生はクリニックのチームワークに随分苦心されてた時期、ですね。

「そういうのも夢に出てたのかな。昔の病院の秘書さん(MSさん)が出てきたりしたのは、
そういうサポートを欲してたのかもね。
2つのテーマがある場合、たとえば、『アイデンティティー(アイドルも自分を応援してくれる栄養素と考える)』と
『現実的なクリニック運営』、目や耳や鼻の穴は2つあるけど、口は一つしかないからね。
だから、2つ話したくても、どっちかしか喋れないってことはよくあるね。」
  
・うーんと、ということは、夢には、隠れてるもう片方を思い起こさせてくれる作用もあるのかもしれませんね?
そこにはお彼岸の時期も重なって、現実の問題で意識的な自分は忙しい、
その分、夢では、親への追悼の思い、親との和解をすすめてくれるような夢になる、ということでしょうか。

「なるほどね。それで、その後、自分が親になる、夢につながるんだ。」

・あの夢は、いい夢ですね。親が育つというテーマは、今先生が力を注いでいる「花嫁になる君に外来」の方向性を示してくれたと思いましたよ。

「そうか。自分が仕事人じゃなく、親としての私人に目覚めたのかと思ったら、やっぱり仕事か。」

・さっきのお話しだと、2つのテーマが同時進行してる、ということですよね。

「特に我々の仕事は、患者さんと向き合えば向き合うほど、結局、自分と向き合わざるをえないから、当然か。」

・当然…とは、平凡恐怖の先生には言いにくいですね(笑)スペシャルです。

「ありがとうございました。少し、腑に落ちました。で、何か宣伝はある?」

・(笑)そうですね、私は、水・金にクリニックにいます。
通常、カウンセリングは毎週・週1の頻度でやるものですが、今回の企画に触発されて「夢」について語り合いたいという方は単発でもお受けします。
受付にお問い合わせ下さい。

「あくまで、夢占いじゃないから、こういう意味ですよ、と明確な答えを一方的にくれるものじゃないとは判ってもらえたかな。
ではお疲れ様でした。」

・読んで下さった方もお疲れ様でした。長いのに付き合って下さって感謝します。

・・・後日談。
・先生、その後何か夢、見ました?

「うん。ニューハーフになって、風俗で働くんだけど、無理やりその店に入れられた子を助けるべく、
2人で店を脱出する夢を見たよ。これ、去勢不安とかエディプス?」

・興味深いですけど、長くなるからやめときましょう・・・でも、先生の最新の夢がこの記事に応答してくれたような気がしますね。
その子、ちゃんと助けてあげてくださいね。


夢について ~相談室だより~

 こんにちは。とくだです。
夢については、カウンセリングの中でも話題になることがあります。
夢を見た人、夢主が、その夢を通じて、どんなことを連想するか、ということを私たちは考えます。

今回の企画の発端に、川原先生がおっしゃるように、
そもそも夢を意味のあるものと思っていない、
という人も多いのではないかという点があります。
ならば、夢をどんな風に考えるか、そこのところを共有できたら、カウンセリングでも、より話しやすいかもしれない。
あるいは、カウンセリングはしていなくとも、自己分析をする上で、自己理解を深めるための参考にしていただけたら嬉しいです。
ただ、夢にとらわれすぎてしまうのは要注意です。
不安が高まりすぎてしまっても逆効果なので、そういうときにはいっそ忘れてしまう方がよいこともあります。
その点はお忘れなく。

そうはいっても、『夢』というテーマはなかなか難しいです。
先生の夢シリーズの分析というのもハードルが高い気がします。でも、ご自分の夢を題材に、と提供してくださる先生の思いにも応えなくては、と思いながら葛藤していました。
 そんなときに、私が見た夢、
① 突然導かれた部屋で、半裸の男女が何人か寝ている、それを目撃してしまった。でも妙に冷静。
② 銀河鉄道999のような世界で、何かから逃げている、ブラックホールのようなところに吸い込まれていきながらもがく。
ほかにも共に逃げながら吸い込まれている人はいるけど、その流れを楽しんでいるよう。そういう楽しみ方もあるのか、と驚く。
③ 知らない人に、たまたま手が当たってしまって、怒られる。逃げる夢。
ざっくりというとこんな風でした。

 『夢』というのは、精神分析の世界では、クラシカルなテーマです。
フロイトの業績の中でも、大切な位置づけになるもので、「夢は無意識への王道」といわれています。
私たちは普段意識することのない無意識の世界、を想定したフロイトは、自分の夢も含め、その他にも多くの夢を検証しながら、
夢から、心のありようを科学的に示そうとした、それが『夢解釈』(1900)です。

そこには、フロイトが自分の夢を例に、一つ一つ構成されているものを挙げ、そこから連想されるものを分析していくことが度々出てきます。
自分の抱く嫉妬心や野心、さらには、私たち人間に普遍的にあるであろう同性の親へ向ける敵意や
異性の親への愛情の葛藤(エディプスコ ンプレックス)へと辿り着いていく大作です。
そんなわけで、私にとっての『夢』というと、なんだか教科書的で、権威的なイメージがわきやすく、
勝手に恐れおののいていたのが①の夢には現れているかもしれないです。
夢は無意識的な願望の充足、という側面もあるから、ショッキングなことも冷静に見ておける自分でいること、がある意味願望充足かもしれない・・・。

フロイトは、夢というものは、その人それぞれによってどういったものが連想されるかが重要であり、
紋切り型には解釈できない、という姿勢でした。
それでも、多くの人が見たことがあるという夢の存在は否定できない、としていて、それが「類型夢」とか、「典型夢」と呼ばれる夢です。

【類型夢】
・ 裸で困惑している夢
・ 近しい大切な人が死ぬ夢
・ 試験で苦しむ夢

【準類型夢】
・追われて逃げる夢
・落下する夢
・火事の夢
・ 空を飛ぶ夢
・ 水におぼれる夢
・歯が抜ける夢

私の②、③の夢もこの辺に当てはまる、いわゆるよくある夢でしょう。
「追われて逃げる夢→親への恐怖、性的衝動の活動による不安」、と教科書に書かれています。
なるほど、それはそうかもしれない。親のイメージ、権威のイメージ、この『夢』というテーマとリンクするなと感じます。

性的衝動の活動による不安というのはどうでしょう?
こういった説明から、精神分析、夢、というと何でも性的なものに還元されるイメージがある、という人も多いかもしれないです。
無意識、というのは意識の世界とは違って、もっと原始的な、生きる、とか、死ぬ、とか、生まれる、とか、そういう人間の根本的なエネルギーのようなものではないだろうかと思います。
それを踏まえて、性的な衝動、という言葉に含まれるのは、生きることにまつわるエネルギー、それが親愛の情のようなものだったり、やさしさだったりするかもしれません。
単純に、いわゆる性的なものだけを指すのではなく、どういったものの表れかを吟味する余地があるんだと思います。

こういった形で、①~③の夢には、私の中にある葛藤が、様々な形で表れているんだなということを改めて認識しました。
短い夢でも、一つ一つ吟味してみると6~8倍の量になる、ともいわれます。
そのくらい夢の中にはたくさんのものがつめこまれている可能性があるんですね。

 次回はいよいよ「先生の夢シリーズ」について、インタビューをしたいと思います。 乞うご期待!?


カワクリ新メニュー

カワクリの心理部門は、僕の思いつきで新メニューが出来て、時々ザワつきます。
過去の専門外来は、こちら。

①「不倫専門外来

②「いじめ、DV【加害者】専門外来

③「安楽死専門外来

今回も2つ考えました。

(1)休職中、復職準備・短期集中カウンセリング

オーバーワークやハラスメントで心身が疲れた人は、燃えつき症候群になる前に、早目に休むのも手です。
ストレスから距離をとり休息をとることが、「くすり」になる場合もあります。
ただし、不慣れな休暇は、将来の不安を煽ることもあります。
そんな不安の源になるものを見つめ直し、働き方や生き方、本来の自分を見失っていないかを考えるカウンセリングは、
復職準備として有効です!

(2)親をなぐってはいけない外来

どんな理由があっても親をなぐってはいけない…、と人は戒める。
と言うことは、ある理由によっては親といえどもなぐられることはある、という事実が歴史上、たくさんあるからだろう。

僕は親をなぐったことはないが、1度だけ父と格闘したことがある。
小さい頃の父は怖かった。
えんじ色のカーディガンをよく着ていて、僕は動物図鑑をみるのが好きな子供で、そこに父そっくりの動物をみつけた。
オランウータンだった。

僕は高校の授業で柔道を習い、自分で言うのも何だが割とセンスが良かった。
高3の頃、反抗期だったのか、僕は父と口論の末、取っ組み合いになった。
僕は勝てるとは思わなかったが、もうどうにでもなれ、と必死で破れかぶれで、柔道で体得した大外刈りをかけ、
相手を倒し、そのまま馬乗りになった。
僕はビックリした。それは技がうまく決まったからではなく、「親がこんなに弱いの?」という驚きで、
「オレ、強いの?」って戸惑いでもあった。

家庭内暴力の子の心理を聴くと、皆、最初はそう思うらしい。
それでもう1回実験し、その時、親が「反省」してたり、または「手を抜いて」反撃しないと、
もう後はブレーキの壊れたダンプカー状態。暴君のようになる。
だから、親は子供が向ってきたら、「負けちゃいけない」と思う。
他人じゃないから、親だから、その関係性があるから、いくつになっても親と子だから、
腕力や格闘スキルを超越した精神性優位さがあるから、本気をみせたら子供は親をなぐれない。

僕の父はえらかったと思う。
僕が馬乗りになっても、下からものすごい形相でにらみつけ、その気迫に僕は思わず、手をゆるめ、体勢が逆転してしまった。

親が本気を出せないのは、うしろめたさがあるケースもある。それは人によって違う。
そんな場合もあるだろう。そんな人は家族相談に。心理部門も「親ガイダンス」をやっています。1回50分、保険適応外。

こないだ、ある進学校の先生が書いている勉強法の本を読んだら、生徒がメンタルな相談をしてきたら、という項目があって、
そこには「専門のメンタルクリニック」の受診をすすめる、とあった。
学校には相談室もあるが、そこは使わず、あえて有料の機関をすすめるらしい。
お金を払うことで、元をとろうとするから、らしい。なるほどね。

BGM. 高橋幸宏 「スイミングスクールの美人教師」


カワクリ心理インビテーション①~イエローサブマリンの旅

2017年夏、カワクリ心理インビテーションが始まります。
こんにちは。心理の原です。
最近の心理部門では、カウンセリングだけでなく、心理検査についてもお問合せをいただきます。
少し前のブログで、川原先生と大平さんによる「もうひとりの自分に会うための心理テストのすすめ」も反響が多かったようです。
自分のことって、わかっているようで、じつはよくわからない。
でも、自分だけで考えてみるのは難しいですよね。
例えば、 「自分について知りたい」
「自分の苦手なところや強みを知りたい」
「自分に向いていることってなんだろう」
「自分は何かみんなと違う気がする、でもどうしたらいいんだろう」 
「対人関係がうまくいかなくて、どう工夫したらいいんだろう」  などなど。
そこで、心理部門では、心理検査による「自己理解」のお手伝いを始めました。
心理検査には質問紙法と投影法があります。
質問紙法は、当てはまる回答を自分で選択する方法です。
自分の性格傾向を、数値で見える化できるのでわかりやすいという長所があります。
しかし、自分で答えるために「自分をよく見せたい」「悪く見せたい」というような回答のゆがみが生じる可能性があります
(ウソの回答もできます)。
投影法は、あいまいな刺激に自由に応えていく方法です。
あいまいで自由、ですから、例えば、「模様がチョウに見えたら正解、チンギスハーンの顔に見えたら不正解」ということを判定するテストではありません。
自分も意識していない心の内面を映し出すことができます。「自分らしさ」を知るためのテストともいえるでしょう。
このように、質問紙法と投影法では、明らかにしようとしている心理的水準が違っています。
その図を↓に示しています(大平さんのご協力に感謝! ©オーヒラ)

投影法は、目に見えない部分=無意識レベルに関係していて、より深層の世界を明らかにしていきます。
原初的な欲求や動機に近いもの、自分の内面の世界があぶりだされます。
SCT(文章完成法)やP-Fスタディは、海面により近い比較的意識レベルを反映します。
次いでTAT(主題統覚検査)、最も深いところがロールシャッハ・テストになります。
川原先生にうかがったところ、昔は医師が「診断の補助」として心理に丸投げしていた歴史があるそうです。
臨床心理士も困ったでしょうね。
そうした経緯もあり、患者さんに心理検査の結果が知らされることは少なかったようです。
カワクリでは、それを反面教師にしてきちんと数値化したものをグラフや用紙にして、先生からフィードバックをしてきました。
それぞれの心理検査には、把握できるものとその限界があります。
その限界を理解したうえで、補うために、いくつかの心理検査を組み合わせて実施することが一般的です。
心理検査だけで、自分の性格傾向を理解する、ことにも限界はあります。
前回のブログ「きっと浮かない」で、受付のうかいさんが抱いたような疑問が湧いてくるのは、ある意味で自然なことでしょう。
「心理検査の結果に、納得できない」
「検査結果が、現実の自分とかさならない」
「思っている自分と違う」
「思われている自分と違う」
今回、心理部門では、その疑問に答えるべく「心理検査フィードバックコース」を始めました。
このコースでは、心理検査を受けた後、フィードバック面接(5回程度)を受けることができます。
フィードバック面接は、検査結果を伝えるだけというものではありません。
検査結果を一緒にふりかえって、検査結果と自分の体験がピンとくるかどうか、検査中に迷ったことや困ったこと、
検査後に生じた疑問などをやりとりしながら進めていきます。
このような対話を通して、「自己理解」を深めていくお手伝いをしていきます。
これは「短期」「焦点付け」カウンセリングともいえます。
目的が明確です。さらに「自己理解」を深めたい人はそのまま、カウンセリングに移行していく方も多いでしょう。
もし、あなたが、「この心理検査の結果はまちがっている」と訴えたとしたら、それこそが「自己理解」の絶好の機会です。
※さて、ここで1つだけお伝えしておきたいのですが、
今回の心理の3人の記事へのコメントは臨床心理士という職業上の理由から、
コメントを個別にお返事することができないのでご理解ください。
ただし、感想や疑問は大歓迎で、願わくば大いにディスカッションしていただければ、
後々の心理部門の参考になりますので、よろしくお願い致します※”


カワクリ心理インビテーション②~invitation! To心理検査フィードバックコース~

 こんにちは。とくだです。
お久しぶりです。相談室だよりも更新できぬままでしたが、
invitation!という形で、またやってきました。
さて、川原先生と大平さんが心理検査について書いてくださっていた記事(3部作-③もう一人の自分に出会うための心理テストのすすめ)、さらに原さんからも検査についての紹介がありました。
いろんな種類の検査があることがお分かりいただけたと思います。
 原さんの記事にもありましたが、結果については自分の感覚と一致すること、だけじゃなくて、しっくりこない部分も大切だと思います。
また、鵜飼さんが言っていた「自分のことは自分でわからない/結果は自己評価になってしまう」こと、
この疑問への一つの答えとして、質問紙では確かに自己評価になりますが、その用途として、
川原先生は質問紙の結果を薬物療法の効果の判定や、診断書作成の一つの指標として臨床的に用いています。
統計的な処理で『誰かとの比較(標準化されたT得点)』で判定し、
用途としては、『継時的にみたかつての自分との比較』をして用いているのです。
 
 カワクリでは、以前から心理検査のフィードバックは、大切な時間としてきました。
結果についてあまり知らされなかった、精神科臨床の現場でそういう声が多くある中で、
川原先生は、きちんと伝えることの大切さを、それこそ開院当初から私たち心理士にもいつも伝えてくださっていました。
たとえば、血液検査でもそうですが、結果の数値などは、専門的でよくわからないものです。
心理検査も、専門用語や数値化したそのスコアだけ見てもよくわからない、そういうところが多々あります。
ただ、たとえそうだったとしても、それも含めて説明し、受けた人が自分で結果を知るということ、そのための時間を設ける、
ということをしてきました。
日本人は数値化(可視化)が好きなので、これはある程度好評でしたが、ある日、川原先生がショックを受ける事件がありました。
 それは、SCTやP-Fスタディなど、記述式のテストを、数値化したりして、統計的にフィードバックしたところ、
その患者さんは、「先生、私のSCTやP-Fスタディの中身、よく見てくれました?あの感想を聞かせてくださいよ」だったそうです。
つまり、人間の心とは、振り子のようなもので、「本人の言ったまま」をそのままにしておくと、不満足になるので「数値化」する。
しかし、「数値化」が進みすぎると「本人の言ったまま」に触れて欲しくなるという、ごくごく自然な二元論です。
ということになると、果たして、「数値化」してそれを伝える、それだけでいいのだろうか?ということが、今回この企画の発端でした。
そこで、先生と、私たち心理で、その両方を満たす方法を模索し始めたのです。
川原先生と、そういった心理検査の話、結果の返し方についての話をしていて、思い出したことがありました。
 私も、特に学生時代、いろいろな心理検査を体験しました。
心理の学生は自分でもやってみたり、実習もしたりするんですが、その頃に印象深かったことがありました。
確かあれは授業で、描画テストと、その他諸々やった時のこと。
描いてみた絵について、詳しく知りたい人は授業の後で個別に対応してくれるという話だったので、
興味があった私は、授業後に先生のところを訪ねてみました。
そこで言われたことは、なんとなく、私の想像とは違うものでした。その先生は、解釈を伝えてくれたんです。
でもその解釈は、私にとってはすっと入るものではなかった。
それは今思うと、そういう見方もできるな、その通りだなとは思うんですが、多分、そこではなかったんですね。
授業だし、遊び心もあって、描いてみたんです、ってところを、結構しっとり真面目に解釈されてしまった、その温度差、でしょう。
ただ、その『温度差』(不一致だった)というなんともいえない感覚だからこそ、今も覚えているんでしょう。
そういう意味では、温度差、不一致の部分は、必要かもしれない。考えるきっかけにはなりうるかも。
いや、不一致の部分ていうのは、多かれ少なかれ、必ずあるものなんじゃないかな、うーん、それにしても温度差は結構大きかったけど(苦笑)。
 その後、そのことはすっかり忘れて時間は経っていき、今、その例でいえば、私はその先生と似たような立場、解釈する側にいるんですよね。
当時の先生が、その立場で言った意味は当時よりもよく分かる、正しい、こともわかる。
心理検査を習得していく中では、まずそれを使えるようになるために、正しい部分を知る必要があるし、それを目指してきました。
 ただ、今思う『難しい』点は、正しい、ということだけでは相手の理解につながらないことも多いんじゃないかな…
心理検査の結果をただ伝えるだけでなくて、その結果についての対話って大事なんじゃないか。
それが、冒頭にも言っていた、果たして結果を伝えるだけでいいのな?という、川原先生の問題提起と一致した部分、私が共感した部分でした。
この『難しい』と感じていることを意識して、以前の自分の体験談が私の中で意味を持ったのも、先生との話で再認識したわけで。
ぼんやりと違和感があった部分を意識できると、問題として扱えますね。
やはり、私たちは、こういう言葉でのやりとりを通して、漠然とした体験に、少しずつ意味を持たせられることで、
新たな自分の理解につなげられるんじゃないだろうか、そう思うのです。
気づくことで、問題として焦点が当たり、それについて対応が考えられる、
私たちは、その気づきをお手伝いしたいと思っています。 
③へつづく


カワクリ心理インビテーション③~親ガイダンス

こんにちは、臨床心理士のやつだです。
原さん、徳田さんからは心理検査についての新しい取り組みでしたが、今回「親ガイダンス」についてお伝えします。
「親ガイダンス」とは、子どもとの関わりあいを振り返り、親としての自信を回復することを目指しています。
親も一人の人間なので、すべてをパーフェクトに行うことは難しく、エネルギーを溜めることが必要なことがあります。
川原クリニックでは、2つのパターンを考えています。
一つは、子どもが当院に通院しており、親として本人への対応等相談したい場合です。
もう一つは、子どもがクリニックには来られないが、親が本人のことで相談にのってほしい場合です。
具体的に言えば、人の目が気になり外にでることが難しく、不登校や家にひきこもっていることが当てはまります。
子ども本人が相談に来ないと診ることができないとよく聞きますが、親がまず相談してみることが問題解決の一歩となります。
多くの場合、子どもが受診を嫌がっても、親が子どものことで相談に行くことを拒否することは少なく、
「行きたければ行けばよい」といった態度が多く見られます。
そして、具体的に子どもへの対応や、どういった関わりをすればよいのかを話し合うことで、親の態度が変化してくると、
本人がクリニックや治療に興味を示すことが起こります。
一言でいえば、「なぜあの親が変ったんだろう?」といった不思議な感じが生まれるようです。
そこから、子どもが受診やカウンセリングにつながることがあります。
イメージとしては、家族の中にささやかではあるが、風が吹き、何らかの変化をもたらすといった感じでしょうか。
このことを、少し専門的に言えば、家族を一つのまとまりとして捉えて、どこを治療の「入り口(port)」とするのかということになります。
親ガイダンスを最初の「入り口」として、治療が家族全体に広がっていくことを考えています。
子育てが失敗だと自分を責めたり、苦しんでいるご家族が多くいらっしゃるのではないでしょうか。
それは何らか、親が子育ての責任をとろうとする現れだと思います。
川原クリニック心理部門の親ガイダンスが、親と子どもを支える「器」になれるよう、一緒に考えていければと思います。